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群論 (15)同型定理


定理31(第一同型定理)
$G,H~$を群、$\varphi:G\to H~$を準同型写像とする。
$K=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$として、$\pi:G\to G/K~$を自然な準同型とする。
このとき、$\varphi=\psi\circ\pi~$となるような準同型写像$~\psi:G/K\to H~$がただ1つ存在する。
また、$\psi:G/K\to\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$は同型写像であり、$G/K\simeq\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$である。

準同型写像$~\psi:G/K\to H~$の存在と一意性は準同型定理(定理29)で$~N=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$とすれば明らかである。

$\psi:G/K\to H~;~gK\mapsto \varphi(g)~$を$~\psi:G/K\to\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$とみなす。
いま、$\psi(gK)=e_H~$なら、$\varphi(g)=e_H~$なので、$g\in K~$となり、 $gK=K~$は$~G/K~$の単位元である。
よって、$\psi~$は単射となる。
$g\in G~$なら、$\varphi(g)=\psi(gK)~$なので、 $\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi\subset\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\psi~$である。
$G/K~$の任意の元は$~gK~$という形をしているので$~\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\psi\subset\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$となる。
よって、$\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\psi=\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$であり、 $G/K~$と$~\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$は$~\psi~$により同型である。
$$\square$$


定理32(第二同型定理)
$G~$と群、$H~$を$~G~$の部分群、$N\vartriangleleft G~$とする。
このとき、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~HNはGの部分群でありHN=NH\\ (2)&~H\cap N\vartriangleleft HでありHN/N\simeq H/(H\cap N) \end{align}

$(1)~$ $e_G\in H,N~$なので、$e_G=e_Ge_G\in HN~$である。
$h_1,h_2\in H,n_1,n_2\in N~$なら \begin{align} (h_1n_1)(h_2n_2)\in(h_1N)(h_2N)&=h_1(Nh_2)N\\ &=h_1(h_2N)N\subset HN \end{align} となるので、$HN~$は演算について閉じている。
$h\in H,n\in N~$なら、$(hn)^{-1}=n^{-1}h^{-1}\in Nh^{-1}=h^{-1}N\subset HN~$となる。
よって、$HN~$は群$~G~$の部分群である。
また、任意の$~h\in H~$に対して、$hN=Nh~$なので$~HN=NH~$である。

$(2)~$ $\varphi:H\to HN/N~;~h\mapsto hN~$は全射準同型写像である。

$x\in\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$をとると、$\varphi(x)=xN=N~$なので、$x^{-1}1_N\in N~$である。
よって、$x\in N~$となり、$x\in H\cap N~$である。
逆に、$x\in H\cap N~$とすると、$x^{-1}1_N\in N~$より、$xN=N~$となる。
つまり、$\varphi(x)=N~$である。
したがって、$\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi=H\cap N~$である。

よって、$H\cap N=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi\vartriangleleft H~$であり、 第一同型定理より$~HN/N\simeq H/(H\cap N)~$となる。

$$\square$$


定理33(第三同型定理)
$G~$を群、$N,N'\vartriangleleft G,N\subset N'~$とする。
このとき、次が成り立つ。
\begin{align} (1)&~準同型~\varphi:G/N\to G/N'~で~\varphi(xN)=xN'~となるものがある\\ (2)&~(G/N)/(N'/N)\simeq G/N' \end{align}

$(1)~$ $x\in G,y\in N~$なら、$N\subset N'~$なので、$xyN'=xN'~$である。
よって、$\varphi(xN)=xN'~$とおくと、$\varphi~$は$~G/N~$から$~G/N'~$への準同型写像になる。

$(2)~$ $\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi=N'/N~$なので、第一同型定理より$(2)$を得る。

$$\square$$


命題34
$G,H~$を群、$\varphi:G\to H~$を準同型写像とする。
また、$N\vartriangleleft G~$とし、$\pi:G\to G/N~;~g\mapsto gN~$とする。
このとき、$\varphi=\psi\circ\pi~$となる準同型写像$~\psi:G/N\to H~$が存在するなら、 $N\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$である。

条件を満たす$~\psi~$が存在したとする。
$\varphi=\psi\circ\pi~$なので、$N=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\pi\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$である。
$$\square$$

この命題と準同型定理より、 $\varphi=\psi\circ\pi~$となる準同型写像$~\psi:G/N\to H~$が存在することと、
$N\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$であることは同値であることがわかる。