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群論 (10)剰余類


 $S_1,S_2~$が群$~(G,\cdot)~$の部分集合のとき $$ S_1\cdot S_2=\{x\cdot y\mid x\in S_1,y\in S_2\} $$ と定義する。
$S_1=\{x\}~$のときには、$\{x\}\cdot S_2~$の代わりに$~x\cdot S_2~$と書く。 $S_2=\{x\}~$の場合も同様である。
また、元のときと同様、誤解の恐れがない場合は$~S_1\cdot S_2~$を単に$~S_1S_2~$と省略して書くことがある。
$S_1,S_2,S_3~$などの3つ以上の部分集合についても同様に定義する。

命題18
$H~$を群$~G~$の部分群とする。
$G~$上の関係$\sim$を \[ x\sim y\Longleftrightarrow x^{-1}y\in H \] で定めるとき、これは同値関係である。
また、任意の$~x\in G~$に対して$~x~$の$\sim$による同値類は$~xH~$と一致する。

任意に$~x,y,z\in G~$をとる。
$x^{-1}x=e_G~$であり、$H~$は$~G~$の部分群なので$~x^{-1}x\in H~$となる。
よって、$x\sim x~$が成り立つ。
$x\sim y~$とすると$~x^{-1}y\in H~$であり、$y^{-1}x=(x^{-1}y)^{-1}~$と$~H~$が$~G~$の部分群であることから$~y\sim x~$が成り立つ。
また、$x\sim y,y\sim z~$とすると$~x^{-1}y,y^{-1}z\in H~$であり、$x^{-1}z=x^{-1}yy^{-1}z~$と$~H~$が$~G~$の部分群であることから$~x\sim z~$が成り立つ。
したがって、$\sim$は$~G~$上の同値関係である。

任意に$~x\in G~$をとり、$x~$の$\sim$による同値類を$~[x]~$とする。
$a\in[x]~$なら、$x\sim a~$であり$~x^{-1}a=h~$となる$~h\in H~$がある。
よって、$a=xh~$となるので$~a\in xH~$である。
また、$a\in xH~$とすると、$a=xh~$となる$~h\in H~$があり$~x^{-1}a=h\in H~$となる。
したがって、$[x]=xH~$である。
$$\square$$

この同値関係による$~x\in G~$の同値類$~xH~$を$~x~$の$~H~$による左剰余類という。
この左剰余類の集合を$~G/H~$と書く。

 同様にして、$G~$上の関係$\sim$を \[ x\sim y\Longleftrightarrow yx^{-1}\in H \] で定めると、これは同値関係であり、任意の$~x\in G~$に対して$~x~$の$\sim$による同値類は$~Hx~$と一致することがわかる。
この同値関係による$~x\in G~$の同値類$~Hx~$を$~x~$の$~H~$による右剰余類という。
この右剰余類の集合を$~H\setminus G~$と書く。

 $G~$が可換群なら、左剰余類と右剰余類は同じであるため、単に剰余類ということもある。

命題19
$H~$が群$~G~$の部分群なら、次の$(1),(2)$が成り立つ。 \begin{align*} (1)&~|G/H|=|H\setminus G|\\ (2)&~{}^{\forall}g\in G,|gH|=|Hg|=|H|\\ \end{align*}

$(1)~$ 写像$~\alpha:G/H\rightarrow H\setminus G,\beta:H\setminus G\rightarrow G/H~$を \begin{align} &\alpha(gH)=Hg^{-1}\\ &\beta(Hg)=g^{-1}H \end{align} で定義する。
$g_1,g_2\in G~$について$~g_1H=g_2H~$とすると、$g_1h_1=g_2h_2~$となる$~h_1,h_2\in H~$がある。
よって、${h_1}^{-1}{g_1}^{-1}={h_2}^{-1}{g_2}^{-1}~$となるので、$H{g_1}^{-1}=H{g_2}^{-1}~$である。
したがって、写像$~\alpha~$はwell-definedである。
同様にして、$Hg_1=Hg_2~$とすると$~{g_1}^{-1}H={g_2}^{-1}H~$となるので、$\beta~$もwell-definedである。
$\alpha~$と$~\beta~$が互いに逆写像になることは明らかなので、両方とも全単射である。
したがって、$|G/H|=|H\setminus G|~$となる。

$(2)~$ 写像$~\varphi:H\rightarrow gH~;~h\mapsto gh~$を定義する。
$h_1,h_2\in H,gh_1=gh_2~$なら、$g^{-1}~$を左からかけ$~h_1=h_2~$である。
よって、$\varphi~$は単射である。
$\varphi~$は明らかに全射なので、$\varphi~$は全単射である。
したがって、$|gH|=|H|~$である。
$|Hg|=|H|~$も同様である。

$$\square$$


 $G/H,H\setminus G~$の元の個数を$~(G:H)~$と書き、$H~$の$~G~$における指数という。

定理20(Lagrange)
$H~$を群$~G~$の部分群とするとき、$|G|=(G:H)|H|~$である。

$G/H~$の完全代表系$~\{x_i\}~$をとると、$\displaystyle G=\bigsqcup_{i}x_iH~$である。
すべての$~i~$に対し$~|x_iH|=|H|~$なので、$|G|=(G:H)|H|~$である。
$$\square$$


系21
$G~$が有限群であるとき、次の$(1),(2)$が成り立つ。 \begin{equation*} \begin{split} &(1)~H~は~G~の部分群なら~|H|~は~|G|~の約数\\ &(2)~g\in G~の位数は~|G|~の約数 \end{split} \end{equation*}

$(1)~$ $(G:H)\in\mathbb{Z}~$なので、Lagrangeの定理(定理20)より$~|H|~$は$~|G|~$の約数である。

$(2)~$ $H=\langle g\rangle~$とすると、$|H|~$は$~g~$の位数である。
よって、$(1)$より$~g~$の位数は$~|G|~$の約数である。

$$\square$$