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群論 (11)正規部分群


 $N~$を群$~G~$の部分群とする。
すべての$~g\in G,h\in N~$に対し$~ghg^{-1}\in N~$となるとき、$N~$を$~G~$の正規部分群といい、$N\vartriangleleft G~$と書く。

命題22
$G_1,G_2~$が群で$~\varphi:G_1\to G_2~$が準同型写像なら、 $\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$は$~G_1~$の正規部分群である。

$g\in G,h\in\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$なら \begin{align} \varphi(ghg^{-1})&=\varphi(g)\varphi(h)\varphi(g^{-1})\\ &=\varphi(g)\varphi(g)^{-1}\\ &=e_{G_2} \end{align} となるので、$ghg^{-1}\in\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$となる。
よって、$\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi\vartriangleleft G_1~$である。
$$\square$$


命題23
$N~$は群$~G~$の部分群で、$G=\langle S\rangle,N=\langle T\rangle~$とする。
このとき、すべての$~x\in S,y\in T~$について$~xyx^{-1},x^{-1}yx\in N~$なら、$N~$は正規部分群である。

任意の元$~x\in S~$をとる。
$N~$の任意の元は$~T~$の元による語なので、$y_1,\dots,y_n\in T~$により$~{y_1}^{s_1}\cdots{y_n}^{s_n}~$という形をしている(ただし各$~s_i~$は$~1~$または$~-1~$である)。
このとき \begin{align} x({y_1}^{s_1}&{y_2}^{s_2}\cdots{y_n}^{s_n})x^{-1}\\ &=(x{y_1}^{s_1}x^{-1})(x{y_2}^{s_2}x^{-1})\cdots(x{y_n}^{s_n}x^{-1}) \end{align} となっている。
$xy_ix^{-1}\in N~$なので、$(xy_ix^{-1})^{-1}=x{y_i}^{-1}x^{-1}\in N~$である。
よって、$x({y_1}^{s_1}\cdots{y_n}^{s_n})x^{-1}\in N~$となる。 つまり、$xNx^{-1}\subset N~$である。
同様にして$~x^{-1}Nx\subset N~$である。

$G~$の任意の元$~g~$は$~S~$の元による語なので、$x_1,\dots,x_m\in S~$があり、$g={x_1}^{s'_1}\cdots{x_m}^{s'_m}~$となっている(ただし各$~s'_i~$は$~1~$または$~-1~$である)。
このとき
\begin{equation*} \begin{split} gNg^{-1}&=({x_1}^{s'_1}\cdots{x_m}^{s'_m})N({x_1}^{s'_1}\cdots{x_m}^{s'_m})^{-1}\\ &=({x_1}^{s'_1}\cdots{x_{m-1}}^{s'_{m-1}}){x_m}^{s'_m}N{x_m}^{-s'_m}({x_1}^{s'_1}\cdots{x_{m-1}}^{s'_{m-1}})^{-1}\\ &\subset({x_1}^{s'_1}\cdots{x_{m-1}}^{s'_{m-1}})N({x_1}^{s'_1}\cdots{x_{m-1}}^{s'_{m-1}})^{-1}\\ &~~\vdots\\ &\subset {x_1}^{s'_1}N{x_1}^{-s'_1}\\ &\subset N \end{split} \end{equation*}
となるので、$N~$は$~G~$の正規部分群である。
$$\square$$


補題24
$N~$が群$~G~$の正規部分群で$~g\in G~$なら、$gN=Ng~$である。

$n\in N~$を任意にとり、$n'=gng^{-1}~$とおく。
このとき、$n'\in N~$なので、$gn=n'g\in Ng~$である。
よって、$gN\subset Ng~$である。
同様に$~Ng\subset gN~$なので、$gN=Ng~$となる。
$$\square$$