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群論 (12)剰余群


 $N~$を群$~G~$の正規部分群とする。
剰余類の集合$~G/N~$の2つの元を、それぞれの代表元$~g,h\in G~$により、$gN,hN~$と表す。
このとき、$gN~$と$~hN~$の演算を次のように定義する。 $$ (gN)(hN)=(gh)N $$ これによって、$G/N~$上の演算が定義される。
$g,g',h,h'\in G~$をとり、$gN=g'N,hN=h'N~$とする。
$g'\in gN~$であるので、ある元$~n\in N~$を用いて、$g'=gn~$とできる。
同様に、ある元$~m\in N~$があり、$h'=hm~$とできる。
このとき、$gnhm=ghh^{-1}nhm~$だが、$N~$は正規部分群なので、$h^{-1}nh\in N~$であり、$h^{-1}nhm\in N~$となる。
よって、$(g'h')N=(gnhm)N=(ghh^{-1}nhm)N=(gh)N~$となる。
したがって、この$~G/N~$上の演算はwell-definedである。

定理25
$G/N~$は上の演算によって群となる。

$e_GN=N~$が単位元となることは明らかである。
$g,h,k\in G~$をとると、$(gh)k=g(hk)~$なので、 \begin{equation*} \begin{split} ((gN)(hN))(kN)&=((gh)N)(kN)\\ &=((gh)k)N\\ &=(g(hk))N\\ &=(gN)((hk)N)\\ &=(gN)((hN)(kN)) \end{split} \end{equation*} となり、結合律を満たす。
同様に$~gN~$の逆元が$~g^{-1}N~$であることがわかる。
$$\square$$

このように$~G/N~$上の演算を考えて群にしたものを剰余群という。

命題26
$\pi:G\to G/N;g\mapsto gN~$は全射準同型である。 また、$\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\pi=N~$である。

$\pi~$が全射であることは$~G/N~$の定義から明らかである。
準同型であることもまた、$G/N~$上の演算の定義より明らかである。
$G/N~$の単位元は$~N~$なので、$g\in G~$で$~\pi(g)=gN=N~$であることと$~g\in N~$であることは同値である。
よって、$\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\pi=N~$である。
$$\square$$

この全射準同型$~G\to G/N~$を自然な準同型という。