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群論 (13)群の直積


 $G_1,\dots,G_t~$を群、$G=G_1\times\dots\times G_t~$を集合としての直積とする。
$g_1,g_1'\in G_1,\dots,g_t,g_t'\in G_t~$として、この$~G~$上の演算を次のように定義する。 \[ (g_1,\dots,g_t)(g_1',\dots,g_t')=(g_1g_1',\dots,g_tg_t') \] ただし、$g_1g_1',\dots,g_tg_t'~$はそれぞれ$~G_1,\dots,G_t~$上での演算である。
証明は省くが、この演算によって$~G~$は群になる。
この群$~G=G_1\times\dots\times G_t~$を群$~G_1,\dots,G_t~$の直積といい、$G_1,\dots,G_t~$を$~G~$の直積因子という。
 このとき、$j\in\{1,\dots,t\}~$に対し、写像
\[ i_j:G_j\longrightarrow G_1\times\dots\times G_t~;~g_j\longmapsto(\underbrace{e_{G_1},\dots,e_{G_{j-1}}}_{j-1},g_j,\underbrace{e_{G_{j+1}},\dots,e_{G_t}}_{t-j}) \]
を考えると、これは明らかに単射である。
この写像により、$G_j~$を$~G_1\times\dots\times G_t~$の部分集合とみなすことができる。
さらに、$~G_1\times\dots\times G_t~$を群の直積と見ると、$G_j~$を$~G_1\times\dots\times G_t~$の部分群とみなすこともできる。

命題27

$(1)~$ $G_1\times G_2~$の中で$~G_1~$の元と$~G_2~$の元は可換である。

$(2)~$ $G_1,G_2~$は$~G_1\times G_2~$の正規部分群である。

$(1)~$ $(g_1,e_{G_2})(e_{G_1},g_2)=(e_{G_1},g_2)(g_1,e_{G_2})=(g_1,g_2)~$となるので、$G_1~$の元と$~G_2~$の元は可換である。

$(2)~$ $g_1\in G_1,(g_1',g_2')\in G_1\times G_2~$なら、 \[ (g_1',g_2')(g_1,e_{G_2})(g_1',g_2')^{-1}=(g_1'g_1{g_1}^{-1},e_{G_2}) \] なので、$G_1\vartriangleleft G_1\times G_2~$である。
同様に、$G_2\vartriangleleft G_1\times G_2~$である。

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命題28
$G~$が群、$H,K\subset G~$が正規部分群で$~H\cap K=\{e_G\},HK=G~$とする。
このとき、$G~$は直積$~H\times K~$と同型である。

$H\times K~$から$~G~$への写像$~\varphi~$を$~\varphi(h,k)=hk~$と定義する。
仮定よりこれは全射である。
$h\in H,k\in K~$とする
$hkh^{-1}k^{-1}=(hkh^{-1})k^{-1}~$だが、$K\vartriangleleft G~$なので、$hkh^{-1}\in K~$である。
よって、$hkh^{-1}k^{-1}\in K~$となる。
また、$hkh^{-1}k^{-1}=h(kh^{-1}k^{-1})~$なので、同様の理由により$~hkh^{-1}k^{-1}\in H~$となる。
したがって、$hkh^{-1}k^{-1}\in H\cap K=\{e_G\}~$なので、$hkh^{-1}k^{-1}=e_G~$となる。
よって、$hk=kh~$である。
$\varphi(h,k)\varphi(h',k')=hkh'k'=hh'kk'=\varphi(hh',kk')~$となるので、$\varphi~$は準同型写像である。
$(h,k)\in\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$なら、$hk=e_G~$なので、$h=k^{-1}\in H\cap K=\{e_G\}~$となる。
よって、$h=k=e_G~$である。
したがって、$\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi=\{e_{H\times K}\}~$となるので、$\varphi~$は単射である。
$\varphi~$は全単射準同型なので、$G\simeq H\times K~$となる。
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