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群論 (14)準同型定理


定理29(準同型定理)
$G,H~$を群、$\varphi:G\to H~$を準同型写像とする。
$N~$を$~G~$の正規部分群として、$\pi:G\to G/N~$を自然な準同型とする。
このとき、$N\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$なら、 $\varphi=\psi\circ\pi~$となるような準同型写像$~\psi:G/N\to H~$がただ1つ存在する。

任意の$~g,h\in G~$に対して、$gN=hN~$とすると$~g=hn~$となる$~n\in N~$が存在する。
$N\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$なので$~\varphi(g)=\varphi(h)~$となる。
よって、$g,h\in G~$に対して \[ gN=hN\Longrightarrow\varphi(g)=\varphi(h) \] が成り立つ。
したがって、集合と関係.定理4が適用できる。
つまり、$\varphi=\psi\circ\pi~$を満たす写像$~\psi:G/N\to H~$がただ1つ存在する。
そしてこれは$~\psi(gN)=\varphi(g)~$という写像である。

また、$g,h\in G~$なら、 \begin{align} \psi((gN)(hN))&=\psi(ghN)\\ &=\varphi(gh)\\ &=\varphi(g)\varphi(h)\\ &=\psi(gN)\psi(hN)\\ \end{align} となるので、$\psi~$は準同型である。
$$\square$$


定理30
$G~$を群、$N~$を$~G~$の正規部分群とする。
$G~$の$~N~$を含む部分群の集合を$~\mathcal{X}$、$G/N~$の部分群全体の集合を$~\mathcal{Y}~$とする。
このとき、集合$~\mathcal{X},\mathcal{Y}~$は \[ \mathcal{X}\longrightarrow\mathcal{Y} ~;~ H\longmapsto H/N \] という写像によって1対1に対応する。

$\pi:G\to G/N~$を自然な準同型とする。

$f:\mathcal{X}\to\mathcal{Y}~;~H\mapsto \pi(H)~(=H/N)~$とする。
$H\in\mathcal{X}~$を任意にとる。
$N\vartriangleleft G~$より、任意の$~g\in G~$に対して$~gNg^{-1}\subset N~$となるので、任意の$g\in H~$についても$~gNg^{-1}\subset N~$は当然満たされる。
つまり、$N\vartriangleleft H~$である。
$H/N~$は$~H~$の元$~g~$によって$~gN~$という形をした剰余類の集合なので$~H/N\subset G/N~$である。
$H~$は$~G~$の部分群なので、$H/N~$が$~G/N~$の部分群であることもわかる。
つまり$~f(H)\in\mathcal{Y}~$となる。
したがって、$f~$はwell-definedである。

$g:\mathcal{Y}\to\mathcal{X}~;~K\mapsto\pi^{-1}(K)~$とする。
$K\in\mathcal{Y}~$なら$~e_{G/N}\in K~$なので、$N=\pi^{-1}(\{e_{G/N}\})\subset\pi^{-1}(K)~$となる。
$x,y\in\pi^{-1}(K)~$なら、$\pi(xy)=\pi(x)\pi(y)\in K~$なので$~xy\in\pi^{-1}(K)~$となる。
同様に、$x\in\pi^{-1}(K)~$なら$~x^{-1}\in\pi^{-1}(K)~$となるので、$~\pi^{-1}(K)~$は$~N~$を含む$~G~$の部分群である。
よって、$g(K)=\pi^{-1}(K)\in\mathcal{X}~$なので$~g~$はwell-definedである。

$H\in\mathcal{X}~$を任意にとる。
集合と写像.命題9(1)より$~H\subset\pi^{-1}(\pi(H))~$である。
$K=\pi(H)~$とおく。
$g\in\pi^{-1}(K)~$なら、$\pi(g)\in K=\pi(H)~$なので、ある$~h\in H~$があり、$\pi(g)=\pi(h)~$となる。
これは$~gN=hN~$、つまり、${}^{\exists}n\in N~\text{s.t.}~g=hn~$となることを意味する。
$N\subset H~$なので、$g\in H~$である。
したがって、$H=\pi^{-1}(K)~$となり、$g\circ f(H)=H~$である。

$K\in\mathcal{Y}~$を任意にとる。
$\pi~$の全射性と集合と写像.命題12(2)から$~\pi(\pi^{-1}(K))=K~$となる。
よって、$f\circ g(K)=\pi(\pi^{-1})(K)=K~$となる。
$$\square$$