環上の加群 (14)代数
$k~$を可換環、$A~$を環とする。
写像$~\varphi:k\times A\to A~$が定まっていて、$A~$の加法による可換群構造に対して$~k$加群となり \[ {}^{\forall}a\in k,{}^{\forall}x,y\in A,\varphi(a,xy)=\varphi(a,x)y \] となっているとき、$A~$は$~k$上の多元環、または$~k$代数という。
このような$~\varphi~$を$~k~$から$~A~$への作用といい、加群のときと同様$~\varphi(a,x)~$を単に$~ax~$と書く。
補題35
$k~$を可換環、$A~$を環とする。このとき、「$k~$から$~A~$への作用全体」と「$k~$から$~A~$への環準同型全体」は一対一に対応する。
「$k~$から$~A~$への作用全体」を$~\mathcal{X}$、「$k~$から$~A~$への環準同型全体」を$~\mathcal{Y}~$とおく。
任意の$~\varphi\in\mathcal{X}~$に対して \[ F_\varphi : k\longrightarrow A ~;~ a\longmapsto \varphi(a,1) \] 任意の$~f\in\mathcal{Y}~$に対して \[ \Phi_f : k\times A\longrightarrow A ~;~ (a,x)\longmapsto f(a)x \] と定める。
任意に$~\varphi\in\mathcal{X}~$をとる。
このとき、 \[ F_\varphi(1) = \varphi(1,1) = 1 \] となる。
また、任意の$~a,b\in k~$に対して \begin{align} F_\varphi(a+b) &= \varphi(a+b,1)\\ &= \varphi(a,1)+\varphi(b,1)\\ &= F_\varphi(a)+F_\varphi(b) \end{align} \begin{align} F_\varphi(ab) &= \varphi(ab,1)\\ &= \varphi(a,\varphi(b,1))\\ &= \varphi(a,F_\varphi(b))\\ &= \varphi(a,1F_\varphi(b))\\ &= \varphi(a,1)F_\varphi(b)\\ &= F_\varphi(a)F_\varphi(b) \end{align} となるので、$F_\varphi\in\mathcal{Y}~$である。
任意に$~f\in\mathcal{Y}~$をとる。
このとき、任意の$~a,b\in k,x,y\in A~$に対して \[ \Phi_f(1,x) = f(1)x = 1x = x \] \[ \Phi_f(ab,x) = f(ab)x = f(a)f(b)x = f(a)\Phi_f(b,x) = \Phi_f(a,\Phi_f(b,x)) \] \[ \Phi_f(a+b,x) = f(a+b)x = (f(a)+f(b))x = f(a)x+f(b)x = \Phi_f(a,x)+\Phi_f(b,x) \] \[ \Phi_f(a,x+y) = f(a)(x+y) = f(a)x+f(a)y = \Phi_f(a,x)+\Phi_f(a,y) \] \[ \Phi_f(a,xy) = f(a)xy = \Phi_f(a,x)y \] となるので、$\Phi_f\in\mathcal{X}~$である。
よって、$\varphi\mapsto F_\varphi,f\mapsto\Phi_f~$とする写像はそれぞれ$~\mathcal{X}\to\mathcal{Y},\mathcal{Y}\to\mathcal{X}~$である。
任意に$~\varphi\in\mathcal{X}~$をとる。
このとき、任意の$~a\in k,x\in A~$に対して \[ \Phi_{F_\varphi}(a,x) = F_\varphi(a)x = \varphi(a,1)x = \varphi(a,1x) = \varphi(a,x) \] となるので、$\Phi_{F_\varphi}=\varphi~$である。
任意に$~f\in\mathcal{Y}~$をとる。
このとき、任意の$~a\in k~$に対して \[ F_{\Phi_f}(a) = \Phi_f(a,1) = f(a)1 = f(a) \] となるので、$F_{\Phi_f}=f~$である。
したがって、これらは互いに逆写像となっている。
よって、$\mathcal{X}~$と$~\mathcal{Y}~$はこの写像によって一対一に対応している。
$$\square$$
任意の$~\varphi\in\mathcal{X}~$に対して \[ F_\varphi : k\longrightarrow A ~;~ a\longmapsto \varphi(a,1) \] 任意の$~f\in\mathcal{Y}~$に対して \[ \Phi_f : k\times A\longrightarrow A ~;~ (a,x)\longmapsto f(a)x \] と定める。
任意に$~\varphi\in\mathcal{X}~$をとる。
このとき、 \[ F_\varphi(1) = \varphi(1,1) = 1 \] となる。
また、任意の$~a,b\in k~$に対して \begin{align} F_\varphi(a+b) &= \varphi(a+b,1)\\ &= \varphi(a,1)+\varphi(b,1)\\ &= F_\varphi(a)+F_\varphi(b) \end{align} \begin{align} F_\varphi(ab) &= \varphi(ab,1)\\ &= \varphi(a,\varphi(b,1))\\ &= \varphi(a,F_\varphi(b))\\ &= \varphi(a,1F_\varphi(b))\\ &= \varphi(a,1)F_\varphi(b)\\ &= F_\varphi(a)F_\varphi(b) \end{align} となるので、$F_\varphi\in\mathcal{Y}~$である。
任意に$~f\in\mathcal{Y}~$をとる。
このとき、任意の$~a,b\in k,x,y\in A~$に対して \[ \Phi_f(1,x) = f(1)x = 1x = x \] \[ \Phi_f(ab,x) = f(ab)x = f(a)f(b)x = f(a)\Phi_f(b,x) = \Phi_f(a,\Phi_f(b,x)) \] \[ \Phi_f(a+b,x) = f(a+b)x = (f(a)+f(b))x = f(a)x+f(b)x = \Phi_f(a,x)+\Phi_f(b,x) \] \[ \Phi_f(a,x+y) = f(a)(x+y) = f(a)x+f(a)y = \Phi_f(a,x)+\Phi_f(a,y) \] \[ \Phi_f(a,xy) = f(a)xy = \Phi_f(a,x)y \] となるので、$\Phi_f\in\mathcal{X}~$である。
よって、$\varphi\mapsto F_\varphi,f\mapsto\Phi_f~$とする写像はそれぞれ$~\mathcal{X}\to\mathcal{Y},\mathcal{Y}\to\mathcal{X}~$である。
任意に$~\varphi\in\mathcal{X}~$をとる。
このとき、任意の$~a\in k,x\in A~$に対して \[ \Phi_{F_\varphi}(a,x) = F_\varphi(a)x = \varphi(a,1)x = \varphi(a,1x) = \varphi(a,x) \] となるので、$\Phi_{F_\varphi}=\varphi~$である。
任意に$~f\in\mathcal{Y}~$をとる。
このとき、任意の$~a\in k~$に対して \[ F_{\Phi_f}(a) = \Phi_f(a,1) = f(a)1 = f(a) \] となるので、$F_{\Phi_f}=f~$である。
したがって、これらは互いに逆写像となっている。
よって、$\mathcal{X}~$と$~\mathcal{Y}~$はこの写像によって一対一に対応している。
また、証明にある通り$~A~$が$~k$代数なら \[ f(a) = a1 ~~~~~(a\in k) \] となる環準同型$~f~$が対応し、環準同型$~f:k\to A~$があるなら \[ ax = f(a)x ~~~~~(a\in k,x\in A) \] なる作用による$~k$代数構造が対応している。
特に断らない限り、$k$代数と$~k~$からの環準同型のある環にはこの対応を考える。
補題36
$k~$を可換環、$A,B~$を$~k$代数とする。また、それぞれに対応する環準同型を$~f:k\to A,g:k\to B~$とする。
このとき、任意の環準同型写像$~\varphi:A\to B~$に対して、$\varphi~$が$~k$加群の準同型であることと、$g=\varphi\circ f~$となることは同値である。
$\varphi~$は$~k$加群の準同型であるとする。
このとき、任意の$~a\in k~$に対して \[ \varphi(f(a)) = \varphi(a1) = a\varphi(1) = a1 = g(a) \] となるので、$g=\varphi\circ f~$となる。
$g=\varphi\circ f~$となっているとする。
このとき、任意の$~a\in k,x\in A~$に対して \[ \varphi(ax) = \varphi(f(a)x) = \varphi(f(a))\varphi(x) = g(a)\varphi(x) = a\varphi(x) \] となるので、$\varphi~$は$~k$加群の準同型である。
$$\square$$
このとき、任意の$~a\in k~$に対して \[ \varphi(f(a)) = \varphi(a1) = a\varphi(1) = a1 = g(a) \] となるので、$g=\varphi\circ f~$となる。
$g=\varphi\circ f~$となっているとする。
このとき、任意の$~a\in k,x\in A~$に対して \[ \varphi(ax) = \varphi(f(a)x) = \varphi(f(a))\varphi(x) = g(a)\varphi(x) = a\varphi(x) \] となるので、$\varphi~$は$~k$加群の準同型である。
$k~$を可換環、$A,B~$を$~k$代数とする。
環準同型写像$~\varphi:A\to B~$が$~k$加群の準同型となるとき、$\varphi~$は$k$代数の準同型写像または$~k$準同型という。
また、これが全単射であるとき$~k$代数の同型写像または$~k$同型という。
自身への$~k$同型$~A\to A~$全体を$~\mathop{\mathrm{Aut}^{\mathrm{al}}_{k}}\nolimits A~$と書き、$A~$の$~k$自己同型群という。
$\mathop{\mathrm{Aut}^{\mathrm{al}}_{k}}\nolimits A~$は写像の合成によって群になる。