title

環上の加群 (7)同型定理


定理12(第一同型定理)
$A~$を環、$M,N~$を左$A$加群、$f:M\to N~$を$~A$準同型とする。
このとき、$M/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f\simeq\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits f~$である。

群の第一同型定理より、$M/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f~$と$~\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits f~$は群として同型である。
また、この間の群同型写像は \[ g(x+\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f) = f(x) \] によって得られる。
これが$~A$準同型でもあることは準同型定理の証明と同様に確認できる。
$$\square$$


定理13(第二同型定理)
$A~$を環、$M~$を左$A$加群、$N, L\subset M~$を部分$A$加群とする。
このとき、次が成り立つ。

$(1)~$ $N+L~$は$~M~$の部分$A$加群である。

$(2)~$ $N\cap L~$は$~N~$の部分$A$加群である。

$(3)~$ $(N+L)/L \simeq N/(N\cap L)$

命題3より、$N+L,N\cap L~$は$~M~$の部分$A$加群である。
また、明らかに$~N\cap L\subset N~$なので$~N\cap L~$は$~N~$の部分$A$加群である。
さらに、群の第二同型定理より群として$~(N+L)/L \simeq N/(N\cap L)~$である。
そして、この群同型写像は$~A$同型でもあるので、この同型は加群としても成り立つ。
$$\square$$


定理14(第三同型定理)
$A~$を環、$M~$を左$A$加群、$N,L\subset M~$を部分$A$加群、$N\subset L~$とする。
このとき、次が成り立つ。

$(1)~$ $A$準同型$~\varphi:M/N\to M/L~$で$~\varphi(x+N)=x+L~$となるものがある

$(2)~$ $(M/N)/(L/N)\simeq M/L$

$(1)~$ $x\in M,y\in N~$なら、$N\subset L~$なので、$x+y+L=x+L~$である。
よって、$\varphi(x+N)=x+L~$とおくと、$\varphi~$は$~M/N~$から$~L/N~$への準同型になる。

$(2)~$ $\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi=L/N~$なので、第一同型定理より$(2)$を得る。

$$\square$$


命題15
$A~$を環、$M,N~$を左$A$加群、$L\subset M~$を部分$A$加群とし、$f:M\to N~$を$~A$準同型とする。
このとき、$f=g\circ\pi~$となる$~A$準同型$~g:A/I\to B~$が存在するなら、$L\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f~$である。

条件を満たす$~g~$が存在したとする。
$f=g\circ\pi~$なので、$L=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\pi\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f~$である。
$$\square$$

この命題と準同型定理より、$f=g\circ\pi~$となる$~A$準同型$~g:M/L\to N~$が存在することと、$L\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f~$であることは同値であることがわかる。