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環上の加群 (6)準同型定理


定理10(準同型定理)
$A~$を環、$M,N~$を左$A$加群とする。
$A$準同型$~f:M\to N~$と部分$A$加群$~L\subset M~$に対して、$L\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits f~$なら$~f=g\circ\pi~$となる$~A$準同型$~g:M/L\to N~$がただ1つ存在する。

群の準同型定理(群論.定理29)によって、群論において$~f=g\circ\pi~$を満たす群準同型$~g:M/L\to N~$がただ1つ存在する。
このとき、$a\in A,X\in M/L~$に対して \begin{align} g(aX) &= g(a(x+L))\\ &= g(ax+L)\\ &= g(\pi(ax))\\ &= f(ax)\\ &= af(x)\\ &= ag(\pi(x))\\ &= ag(x+L)\\ &= ag(X) \end{align} となるので、$g~$は$~A$準同型である。
$$\square$$


定理11
$A~$を環、$M~$を左$A$加群、$N\subset M~$を部分$A$加群とする。
$M~$の$~N~$を含む部分$A$加群全体を$~\mathcal{X}~$、$M/N~$の部分$A$加群全体を$~\mathcal{Y}~$とする。
このとき、集合$~\mathcal{X},\mathcal{Y}~$は \[ \mathcal{X}\longrightarrow\mathcal{Y}~;~L \longmapsto L/N \] という写像によって1対1に対応する。

群論.定理30より、$\mathcal{X}'~$を$~M~$の$~N~$を含む部分群全体、$\mathcal{Y}'~$を$~M/N~$の部分群全体として見れば、2つの写像 \begin{align} &f':\mathcal{X}'\longrightarrow\mathcal{Y}'~;~L\longmapsto\pi(L)~(=L/N)\\ &g':\mathcal{Y}'\longrightarrow\mathcal{X}'~;~K\longmapsto\pi^{-1}(K) \end{align} は互いに逆写像である。
あとはこれらを$~\mathcal{X},\mathcal{Y}~$に制限すればよい。

$H\in\mathcal{X}~$を任意にとる。
$\pi(L)~$は$~M/N~$の部分群である。
$a\in A,x\in\pi(L)~$なら、$x=\pi(x')~$となる$~x'\in L~$がある。
このとき、$ax=a\pi(x')=\pi(ax')\in\pi(L)~$となる。
したがって、写像$~f':\mathcal{X}'\longrightarrow\mathcal{Y}'~$を$~\mathcal{X}~$に制限した写像$~f~$は$~\mathcal{X}~$から$~\mathcal{Y}~$への写像である。

$K\in\mathcal{Y}~$を任意にとる。
$\pi^{-1}(K)~$は$~N~$を含む$~M~$の部分群である。
$a\in A,x\in\pi^{-1}(K)~$とすれば、$\pi(ax)=a\pi(x)\in K~$となる。
よって、$ax\in\pi^{-1}(K)~$である。
したがって、写像$~g':\mathcal{Y}'\longrightarrow\mathcal{X}'~$を$~\mathcal{Y}~$に制限した写像$~g~$は$~\mathcal{Y}~$から$~\mathcal{X}~$への写像である。
$$\square$$