環上の加群 (12)環準同型と加群
命題26
$A,B~$を環、$M~$を左$B$加群、$f:A\to B~$を環準同型とする。このとき、$A~$から$~M~$への作用を \[ ax = f(a)x ~~~~~(a\in A,x\in M) \] と定めると、$M~$は左$A$加群となる。
$a,b\in A,x,y\in M~$を任意にとる。
\[ 1_Ax = f(1_A)x = 1_Bx = x \] \[ (ab)x = f(ab)x = (f(a)f(b))x = f(a)(f(b)x) = a(bx) \] \[ (a+b)x = f(a+b)x = (f(a)+f(b))x = f(a)x+f(b)x = ax+bx \] \[ a(x+y) = f(a)(x+y) = f(a)x+f(a)y = ax+ay \] となるので、$M~$は左$A$加群である。
$$\square$$
\[ 1_Ax = f(1_A)x = 1_Bx = x \] \[ (ab)x = f(ab)x = (f(a)f(b))x = f(a)(f(b)x) = a(bx) \] \[ (a+b)x = f(a+b)x = (f(a)+f(b))x = f(a)x+f(b)x = ax+bx \] \[ a(x+y) = f(a)(x+y) = f(a)x+f(a)y = ax+ay \] となるので、$M~$は左$A$加群である。
系27
$A,B~$を環、$f:A\to B~$を環準同型とする。このとき、$B~$は左$A$加群となる。
$B~$自身も左$B$加群なので、命題26より
\[
ax = f(a)x ~~~~~(a\in A,x\in B)
\]
という作用によって$~B~$は左$A$加群となる。
$$\square$$
(右辺は$~B~$上の積。)
環準同型$~f:A\to B~$によって$~B~$を左$A$加群とみなすとき、特に断らなければこの作用を考える。
系28
$A,B~$を環とし、$A\subset B~$とする。このとき、$B~$は左$A$加群となる。
包含写像$~\iota:A\to B~$は環準同型なので、系29より$~B~$は左$A$加群である。
$$\square$$
系29
$A,B~$を環、$f:A\to B~$を環準同型、$I\subset B~$を両側イデアルとする。このとき、$B/I~$は左$A$加群である。
$f:A\to B~$と自然な環準同型$~B\to B/I~$の合成$~g:A\to B/I~$は環準同型である。
このとき、命題26より \[ ax = g(a)x ~~~~~(a\in A,x\in B/I) \] という作用によって$~B/I~$は左$A$加群となる。
$$\square$$
このとき、命題26より \[ ax = g(a)x ~~~~~(a\in A,x\in B/I) \] という作用によって$~B/I~$は左$A$加群となる。
特に断らない限り$~B/I~$を左$A$加群とするときはこの作用を考える。
また、環$~A~$と両側イデアル$~I\subset A~$に対して、恒等写像$~A\to A~$を用いて \[ ax = \pi(a)x ~~~~~(a\in A,x\in A/I) \] という作用を与えることで、$A/I~$を左$A$加群とみなす。