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実数論 (12)条件収束


 級数$~\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$に対して、$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_n|~$は収束しないが$~\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$は収束するとき、$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$は条件収束するという。

補題25
実数列$~\{a_n\}~$に対して、 \begin{align} &X=\{n\in\mathbb{N}\mid a_n\ge0\}\\ &Y=\{n\in\mathbb{N}\mid a_n\lt0\} \end{align} とおき、$f:\mathbb{N}\to X,g:\mathbb{N}\to Y~$を順序を保つ全単射とする。
$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$が条件収束するとき、次が成り立つ。 \begin{align} &\sum_{n=0}^\infty|a_{f(n)}|=\infty\\ &\sum_{n=0}^\infty|a_{g(n)}|=\infty \end{align}

$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_n|~$の第$~n~$部分和を$~\tilde{S}_n~$とする。
$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$は条件収束するので、$\{\tilde{S}_n\}~$は収束しない。
また、$\{\tilde{S}_n\}~$は単調増加列なので$~\{\tilde{S}_n\}~$は$~\infty~$に発散する。
$N_n=\{0,\dots,n\}~$とすると $$ \tilde{S}_n=\sum_{k\in N_n\cap X}|a_k|+\sum_{k\in N_n\cap Y}|a_k| $$ とできる。 このとき、 \begin{align} &\lim_{n\to\infty}\sum_{k\in N_n\cap X}|a_k|=\sum_{n=0}^\infty|a_{f(n)}|\\ &\lim_{n\to\infty}\sum_{k\in N_n\cap Y}|a_k|=\sum_{n=0}^\infty|a_{g(n)}| \end{align} であることは明らか。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\tilde{S}_n=\infty~$なので、
\begin{split} \sum_{n=0}^\infty|a_{f(n)}|+\sum_{n=0}^\infty|a_{g(n)}|&=\lim_{n\to\infty}\sum_{k\in N_n\cap X}|a_k|+\lim_{n\to\infty}\sum_{k\in N_n\cap Y}|a_k|\\ &=\lim_{n\to\infty}\left(\sum_{k\in N_n\cap X}|a_k|+\sum_{k\in N_n\cap Y}|a_k|\right)\\ &=\lim_{n\to\infty}\tilde{S}_n\\ &=\infty \end{split}
となる。 なので、$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_{f(n)}|~$と$~\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_{g(n)}|~$の少なくとも一方は$~\infty~$に発散する。

$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$の第$~n~$部分和を$~S_n~$とする。
$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$は収束するので、$\{S_n\}~$は収束する。
\begin{split} S_n&=\sum_{k\in N_n\cap X}a_k+\sum_{k\in N_n\cap Y}a_k\\ &=\sum_{k\in N_n\cap X}|a_k|-\sum_{k\in N_n\cap Y}|a_k| \end{split} $\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_{f(n)}|~$と$~\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_{g(n)}|~$のどちらかが収束すると仮定すれば、もう一方は$~\infty~$に発散するので、 $$ \lim_{n\to\infty}\left(\sum_{k\in N_n\cap X}|a_k|-\sum_{k\in N_n\cap Y}|a_k|\right) $$ は収束しない。
これは$~\{S_n\}~$が収束することに矛盾する。
よって、$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_{f(n)}|~$と$~\displaystyle\sum_{n=0}^\infty|a_{g(n)}|~$はどちらも$~\infty~$に発散する。
$$\square$$


定理26(Riemannの級数定理)
$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$が条件収束するとき、
任意の実数$~\alpha~$に対して、次を満たす全単射$~\sigma:\mathbb{N}\to\mathbb{N}~$が存在する。 $$ \sum_{n=0}^\infty a_{\sigma(n)}=\alpha $$

まず、$\alpha\ge0~$の場合を示す。
実数列$~\{a_n\}~$に対して、 \begin{align} &X=\{n\in\mathbb{N}\mid a_n\ge0\}\\ &Y=\{n\in\mathbb{N}\mid a_n\lt0\} \end{align} とおき、$f:\mathbb{N}\to X,g:\mathbb{N}\to Y~$を順序を保つ全単射とする。
補題25より、 \begin{align} &\sum_{n=0}^\infty a_{f(n)}=\infty\\ &\sum_{n=0}^\infty a_{g(n)}=-\infty \end{align} となる。 よって、ある$~n_0\in\mathbb{N}~$があり、 \[ n\ge n_0\Longrightarrow\sum_{k=0}^{n}a_{f(k)}\gt\alpha \] を満たす。 特に \[ \alpha\lt\sum_{k=0}^{n_0}a_{f(k)} \] を満たす。
また、ある$~n_0'\in\mathbb{N}~$があり \[ \sum_{k=0}^{n_0'-1}a_{g(k)}\ge\alpha-\sum_{k=0}^{n_0}a_{f(k)}\gt\sum_{k=0}^{n_0'}a_{g(k)} \] となる。
便宜上$~i\gt j~$となっているとき、総和$~\displaystyle\sum_{k=i}^j~$は何も足さず$~0~$を表すものとする。
さらに、$n_1,n_1'\in\mathbb{N}~$があり
\begin{align} &\sum_{k=n_0+1}^{n_1-1}a_{f(k)}\le\alpha-\sum_{k=0}^{n_0}a_{f(k)}-\sum_{k=0}^{n_0'}a_{g(k)}\lt\sum_{k=n_0+1}^{n_1}a_{f(k)}\\ &\sum_{k=n_0'+1}^{n_1'-1}a_{g(k)}\ge\alpha-\sum_{k=0}^{n_1}a_{f(k)}-\sum_{k=0}^{n_0'}a_{g(k)}\gt\sum_{k=n_0'+1}^{n_1'}a_{g(k)} \end{align}
を満たす。
このようにして$~n_m,n_m'~$までとれたとき、
\begin{align} &\sum_{k=n_m+1}^{n_{m+1}-1}a_{f(k)}\le\alpha-\sum_{k=0}^{n_m}a_{f(k)}-\sum_{k=0}^{n_m'}a_{g(k)}\lt\sum_{k=n_m+1}^{n_{m+1}}a_{f(k)}\\ &\sum_{k=n_m'+1}^{n_{m+1}'-1}a_{g(k)}\ge\alpha-\sum_{k=0}^{n_{m+1}}a_{f(k)}-\sum_{k=0}^{n_m'}a_{g(k)}\gt\sum_{k=n_m'+1}^{n_{m+1}'}a_{g(k)} \end{align}
となるように、$n_{m+1},n_{m+1}'~$がとれる。
これによって$~n_m,n_m'~(m\in\mathbb{N})~$を再帰的に定める。
このとき、任意の$~m\in\mathbb{N}~$に対して、
\begin{align} &\left|\sum_{k=0}^{n_m}a_{f(k)}+\sum_{k=0}^{n_m'}a_{g(k)}+\sum_{k=n_m+1}^{n_{m+1}}a_{f(k)}-\alpha\right|\le|a_{f(n_{m+1})}|\\ &\left|\sum_{k=0}^{n_{m+1}}a_{f(k)}+\sum_{k=0}^{n_m'}a_{g(k)}+\sum_{k=n_m'+1}^{n_{m+1}'}a_{g(k)}-\alpha\right|\le|a_{g(n_{m+1}')}| \end{align}
が成り立っている。 \begin{array}{c} \displaystyle S_0=\sum_{k=0}^{n_0}a_{f(k)}\\ \displaystyle S_1=\sum_{k=0}^{n_0'}a_{g(k)}\\ \vdots\\ \displaystyle S_{2m}=\sum_{k=n_{m-1}+1}^{n_m}a_{f(k)}\\ \displaystyle S_{2m+1}=\sum_{k=n_{m-1}'+1}^{n_m'}a_{g(k)}\\ \vdots \end{array} とすると、上の不等式は \begin{align} &\left|\sum_{k=0}^{2m}S_k-\alpha\right|\le|a_{f(n_m)}|\\ &\left|\sum_{k=0}^{2m+1}S_k-\alpha\right|\le|a_{g(n_m')}| \end{align} と書きかえられる。
$\displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_n~$は収束するので、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0~$である。
よって、$m\to\infty~$とするとき、$a_{f(n_m)},a_{g(n_m')}~$はともに$0$に収束する。
したがって、 $$ \left|\sum_{k=0}^\infty S_k-\alpha\right|=0 $$ となり、$\displaystyle\sum_{k=0}^\infty S_k~$は$~\alpha~$に収束する。

\begin{split} S_0+&S_1+\cdots+S_{2m}+S_{2m+1}+\cdots\\ =&~a_{f(0)}+\cdots+a_{f(n_0)}\\ &~~~+a_{g(0)}+\cdots+a_{g(n_0')}+\cdots\\ &~\cdots+a_{f(n_{m-1}+1)}+\cdots+a_{f(n_m)}\\ &~~~~~~~~~~+a_{g(n_{m-1}'+1)}+\cdots+a_{g(n_m')}+\cdots \end{split} このような入れ替えを$~\sigma:\mathbb{N}\to\mathbb{N}~$とする。 つまり、 \begin{array}{rl} \sigma(0)&=~~f(0)\\ &~\vdots\\ \sigma(n_0)&=~~f(n_0)\\ \sigma(n_0+1)&=~~g(0)\\ &~\vdots\\ \sigma(n_0+n_0'+1)&=~~g(n_0')\\ &~\vdots\\ &~\vdots\\ \sigma(n_m+n_m'+2)&=~~f(n_m+1)\\ &~\vdots\\ \sigma(n_{m+1}+n_m'+1)&=~~f(n_{m+1})\\ \sigma(n_{m+1}+n_m'+2)&=~~g(n_m+1)\\ &~\vdots\\ \sigma(n_{m+1}+n_{m+1}'+1)&=~~g(n_{m+1})\\ &~\vdots\\ \end{array} となるように$~\sigma~$を定める。
このとき、 $$ \sum_{n=0}^\infty a_{\sigma(n)}=\sum_{n=0}^\infty S_n=\alpha $$ となる。
$$\square$$

この定理より、条件収束する級数は絶対収束するときと違い、和の順序を入れ替えることで収束する値が変化してしまうことがわかる。