実数論 (2)数列の有界性
実数列$~\{a_n\}~$について、 $$ {}^{\exists}M\in\mathbb{R}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},a_n\le M $$ を満たすとき、$\{a_n\}~$は上に有界であるという。
$$ {}^{\exists}L\in\mathbb{R}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},a_n\ge L $$ を満たすとき、$\{a_n\}~$は下に有界であるという。
また、$\{a_n\}~$が上に有界かつ下に有界であるとき、$\{a_n\}~$は有界であるという。
このとき、$\{a_n\}~$が有界であることと $$ {}^{\exists}M\in\mathbb{R}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},|a_n|\le M $$ が成り立つことが同値であることがわかる。
よって、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ n\ge N\Longrightarrow\alpha-1\lt a_n\lt\alpha+1 $$ が成り立つ。 ここで、 \begin{align} &M=\max{\{a_1,\dots,a_{N-1},\alpha+1\}}\\ &L=\min{\{a_1,\dots,a_{N-1},\alpha-1\}} \end{align} とすると、すべての$~n\in\mathbb{N}~$について$~L\le a_n\le M~$となる。
よって、$\cfrac{|\alpha|}{2}\gt0~$に対して、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 \begin{split} n\ge N&\Longrightarrow||a_n|-|\alpha||\lt\frac{|\alpha|}{2}\\ &\Longleftrightarrow|\alpha|-\frac{|\alpha|}{2}\lt|a_n|\lt|\alpha|+\frac{|\alpha|}{2} \end{split} を満たす。
よって、 $$ n\ge N\Longrightarrow|a_n|\gt\frac{|\alpha|}{2} $$ となる。
このとき、以下が成り立つ。 \begin{align} (1)&~\lim_{n\to\infty}(a_nb_n)=\alpha\beta\\ (2)&~\alpha\neq0~なら~\lim_{n\to\infty}\frac{b_n}{a_n}=\frac{\beta}{\alpha} \end{align}
$(1)~$
$\{a_n\}~$は収束するので、定理4より$~\{a_n\}~$は有界である。
つまり、すべての$~n\in\mathbb{N}~$で$~|a_n|\le M~$となる$~M\in\mathbb{R}~$がある。
任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
仮定より、ある$~N_1,N_2\in\mathbb{N}~$があり、
\begin{align}
&n\ge N_1\Longrightarrow|a_n-\alpha|\lt\frac{\varepsilon}{M+|\beta|}\\
&n\ge N_2\Longrightarrow|b_n-\beta|\lt\frac{\varepsilon}{M+|\beta|}
\end{align}
を満たす。
ここで、$N=\max{\{N_1,N_2\}}~$とすると、
$(2)~$
まず、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=\frac{1}{\alpha}~$を示す。
補題5より、ある$~N_1\in\mathbb{N}~$があり、
$$
n\ge N_1\Longrightarrow|a_n|\gt\frac{|\alpha|}{2}
$$
を満たす。
$\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$を任意にとる。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha~$より、ある$~N_2\in\mathbb{N}~$があり、
$$
n\gt N_2\Longrightarrow|a_n-\alpha|\lt\frac{|\alpha|^2\varepsilon}{2}
$$
が成り立つ。
ここで、$N=\max{\{N_1,N_2\}}~$とすると、
\begin{split}
n\ge
N\Longrightarrow\left|\frac{1}{a_n}-\frac{1}{\alpha}\right|&=\left|\frac{a_n-\alpha}{a_n\alpha}\right|\\
&=\frac{1}{|a_n|}\cdot\frac{1}{|\alpha|}\cdot|a_n-\alpha|\\
&\lt\frac{2}{|\alpha|}\cdot\frac{1}{|\alpha|}\cdot\frac{|\alpha|^2\varepsilon}{2}=\varepsilon
\end{split}
となるので、$\left\{\cfrac{1}{a_n}\right\}~$は$~\cfrac{1}{\alpha}~$に収束する。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\cfrac{1}{a_n}=\cfrac{1}{\alpha},\lim_{n\to\infty}b_n=\beta~$と$(1)$より、
$$
\lim_{n\to\infty}\frac{b_n}{a_n}=\frac{\beta}{\alpha}
$$
となる。