title

実数論 (6)Cauchy列


 実数列$~\{a_n\}~$が
$$ {}^{\forall}\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt},{}^{\exists}N\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}m,n\in\mathbb{N},m,n\ge N\Longrightarrow|a_m-a_n|\lt\varepsilon $$
を満たすとき、$\{a_n\}~$はCauchy列であるという。

補題13
任意のCauchy列は有界である。

$\{a_n\}~$を任意のCauchy列とする。 よって、ある$~N\in\mathbb{N}~$あり、 $$ m,n\ge N\Longrightarrow|a_m-a_n|\lt1 $$ となる。 特に、 $$ n\ge N\Longrightarrow|a_n-a_N|\lt1 $$ とできる。 よって $$ n\ge N\Longrightarrow|a_n|\lt1+|a_N| $$ となるので、 $$ M=\max{\{|a_0|,|a_1|,\dots,|a_{N-1}|,1+|a_N|\}} $$ とすると、任意の$~n\in\mathbb{N}~$ついて$~|a_n|\le M~$となっている。
$$\square$$


定理14
実数列$~\{a_n\}~$が収束することと$~\{a_n\}~$がCauchy列であることは同値である。

$\{a_n\}~$を収束する実数列とする。
つまり、ある$~\alpha\in\mathbb{R}~$があり$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha~$となる。
任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha~$より、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ n\ge N\Longrightarrow|a_n-\alpha|\lt\frac{\varepsilon}{2} $$ となる。 よって、
\begin{split} m,n\ge N\Longrightarrow|a_m-a_n|&=|a_m-\alpha+\alpha-a_n|\\ &=|(a_m-\alpha)-(a_n-\alpha)|\\ &\le|a_m-\alpha|+|a_n-\alpha|\\ &\lt\frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{2}=\varepsilon \end{split}
となるので、$\{a_n\}~$はCauchy列である。

$\{a_n\}~$を任意のCauchy列とすると、補題13より$~\{a_n\}~$は有界である。
よって、Bolzano-Weierstrassの定理(定理12)より、収束する部分列$~\{a_{n(k)}\}~$がとれる。
つまり、ある$~\alpha\in\mathbb{R}~$があり$~\displaystyle\lim_{k\to\infty}a_{n(k)}=\alpha~$となる。
任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
$\{a_n\}~$はCauchy列であるので、ある$~N_1\in\mathbb{N}~$があり、 $$ m,n\ge N_1\Longrightarrow|a_m-a_n|\lt\frac{\varepsilon}{2} $$ となる。 また$~\displaystyle\lim_{k\to\infty}a_{n(k)}=\alpha~$より、ある$~N_2\in\mathbb{N}~$があり、 $$ k\ge N_2\Longrightarrow|a_{n(k)}-\alpha|\lt\frac{\varepsilon}{2} $$ が成り立つ。
ここで、$N=\max{\{N_1,N_2\}}~$とすると、
\begin{split} n\ge N\Longrightarrow|a_n-\alpha|&=|a_n-a_{n(N)}+a_{n(N)}-\alpha|\\ &\le|a_n-a_{n(N)}|+|a_{n(N)}-\alpha|\\ &\lt\frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{2}=\varepsilon \end{split}
となるので、$\{a_n\}~$は$~\alpha~$に収束する。
$$\square$$