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実数論 (5)単調列と部分列


 実数列$~\{a_n\}~$について、 $$ {}^{\forall}n\in\mathbb{N},a_n\le a_{n+1} $$ が成り立つとき、$\{a_n\}~$は単調増加であるという。 $$ {}^{\forall}n\in\mathbb{N},a_n\ge a_{n+1} $$ が成り立つとき、$\{a_n\}~$は単調減少であるという。

定理11
上に有界な単調増加列、下に有界な単調減少列は収束する。

$\{a_n\}~$を上に有界な単調増加列とし、$A=\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}~$とおく。
$A~$は上に有界なので、実数の連続性より$~\sup{A}\in\mathbb{R}~$が存在する。
$\alpha=\sup{A}~$とおく。
$\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$を任意にとる。
$\sup{A}~$の条件より、ある$~a_{n_0}\in A~$があり$~\alpha-\varepsilon\lt a_{n_0}~$を満たす。
また、$\{a_n\}~$は単調増加列なので $$ n\le n_0\Longrightarrow a_{n_0}\le a_n $$ となる。 よって、 $$ n\le n_0\Longrightarrow \alpha-\varepsilon\lt a_n\le\alpha(\lt\alpha+\varepsilon) $$ となるので、$\{a_n\}~$は$~\alpha~$に収束する。
下に有界な単調減少列についても同様に示される。
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 $n:\mathbb{N}\to\mathbb{N}~$を順序を保つ写像とする。 つまり、 $$ {}^{\forall}k\in\mathbb{N},n(k)\lt n(k+1) $$ が成り立つ。
このとき、$\{a_{n(k)}\}_{k\in\mathbb{N}}~$を$~\{a_n\}~$の部分列という。

定理12(Bolzano-Weierstrass)
有界な実数列は収束する部分列をもつ。

$\{a_n\}~$を有界な実数列とする。
$\{a_n\}~$は有界なので、ある$~c_0,d_0\in\mathbb{R}~$があり、 $$ {}^{\forall}n\in\mathbb{N},c_0\le a_n\le d_0 $$ が成り立つ。 ここで、$I_0=[c_0,d_0]~$とおく。
すべての$~k\in\mathbb{N}~$において$~I_k~$が無限個の$~\{a_n\}~$の点を含むように、閉区間$~I_k~$を再帰的に定義する。

$I_k~(k\in\mathbb{N})~$が無限個の$\{a_n\}~$の点を含んでいるとする。
このとき、$\left[c_k,\cfrac{c_k+d_k}{2}\right]~$と$~\left[\cfrac{c_k+d_k}{2},d_k\right]~$の少なくとも一方は無限個の$~\{a_n\}~$の点を含んでいる。
その区間の1つを$~I_{k+1}~$とする。

この操作により閉区間$~I_k=[c_k,d_k]~$を再帰的に定める。 この閉区間$~I_k~$は定め方から明らかに次の性質をもつ。
\begin{align} (1)&~すべての~k\in\mathbb{N}~において~I_k~が無限個の~\{a_n\}~の点を含む\\ (2)&~{}^{\forall}k\in\mathbb{N},I_k\supset I_{k+1}\\ (3)&~{}^{\forall}k\in\mathbb{N},d_{k+1}-c_{k+1}=\frac{d_k-c_k}{2} \end{align}
$(2),(3)$を言い換えると次のようにできる。 \begin{align} (2)'&~{}^{\forall}k\in\mathbb{N},c_k\le c_{k+1}\le d_{k+1}\le d_k\\ (3)'&~d_k-c_k=\frac{d_0-c_0}{2^k}\longrightarrow0~(k\longrightarrow\infty) \end{align} これらと区間縮小法の原理より、ある$~\alpha\in\mathbb{R}~$があり、 \begin{align} &c_k,d_k\longrightarrow\alpha~(k\longrightarrow\infty)\\ &{}^{\forall}k\in\mathbb{N},c_k\le\alpha\le d_k \end{align} を満たす。

ここで、任意の$~k\in\mathbb{N}~$に対して$~I_k~$は無限個の$~\{a_n\}~$の点を含むので、ある$~n(k)\in\mathbb{N}~$があり$~a_{n(k)}\in I_k~$とできる。
さらに、$I_{k+1}~$は$~\{a_n\mid n\gt n(k)\}~$の点も無限に含んでいるので、ある$~n(k+1)\in\mathbb{N}~$があり$~a_{n(k+1)}\in I_{k+1}\cap\{a_n\mid n\gt n(k)\}~$とできる。
このようにして、すべての$~k\in\mathbb{N}~$について$~a_{n(k)}\in I_k~$となる部分列$~\{a_{n(k)}\}_{k\in\mathbb{N}}~$をとる。
$a_{n(k)}\in I_k~$なので$~c_k\le a_{n(k)}\le d_k~$であり、はさみうちの原理より$~\displaystyle\lim_{k\to\infty}a_{n(k)}=\alpha~$となる。
よって、収束する部分列がとれた。
$$\square$$