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実数論 (7)上極限と下極限


 実数列$~\{a_n\}~$に対して、 \begin{align} &\limsup_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}(\sup{\{a_k\mid k\ge n\}})\\ &\liminf_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}(\inf{\{a_k\mid k\ge n\}}) \end{align} と定め、それぞれ$~\{a_n\}~$の上極限下極限という。

命題15
実数列$~\{a_n\}~$が有界なら$~\displaystyle\limsup_{n\to\infty}a_n,\liminf_{n\to\infty}a_n~$が存在する。

任意の$~n\in\mathbb{N}~$について、 $$ \{a_k\mid k\ge n\}\supset\{a_k\mid k\ge n+1\} $$ となるので、すべての$~n\in\mathbb{N}~$について、 $$ \sup{\{a_k\mid k\ge n\}}\ge\sup{\{a_k\mid k\ge n+1\}} $$ が成り立つ。
つまり、$\sup{\{a_k\mid k\ge n\}}~$は$~n~$について単調減少である。
さらに、仮定より有界でもある。
有界な単調減少列は収束するので、$\displaystyle\limsup_{n\to\infty}a_n~$は存在する。
$\displaystyle\liminf_{n\to\infty}a_n~$の存在も同様に示せる。
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定理16
任意の実数列$~\{a_n\}~$と実数$~\alpha~$に対して、次は同値である。 \begin{align} (1)&~\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\\ (2)&~\limsup_{n\to\infty}a_n=\liminf_{n\to\infty}a_n=\alpha \end{align}

$(1)\Rightarrow(2)$
$s_n=\sup{\{a_k\mid k\ge n\}}~$とする。
$\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$を任意にとる。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha~$より、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ n\ge N\Longrightarrow|a_n-\alpha|\lt\varepsilon $$ となる。 定め方から明らかに $$ n\ge N\Longrightarrow|s_n-\alpha|\lt\varepsilon $$ が成り立つ。
よって、$\displaystyle\limsup_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}s_n=\alpha~$となる。
同様にして、$\displaystyle\liminf_{n\to\infty}a_n=\alpha~$も示される。

$(2)\Rightarrow(1)$
$s_n=\sup{\{a_k\mid k\ge n\}},i_n=\inf{\{a_k\mid k\ge n\}}~$とする。
明らかにすべての$~n\in\mathbb{N}~$で$~i_n\le a_n\le s_n~$となっている。
また、仮定から$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}s_n=\lim_{n\to\infty}i_n=\alpha~$である。
よって、はさみうちの原理より$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha~$となる。

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