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環論 (10)環の同型定理


定理18(第一同型定理)
$A,B~$を環、$\varphi:A\to B~$を環準同型、$\pi:A\to A/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$を自然な準同型とする。
このとき、$\varphi=\psi\circ\pi~$となるような準同型$~\psi:A/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi\to B~$がただ1つ存在する。
また、$\psi:A/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi\to\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$は同型写像であり、$A/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi\simeq\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$である。

準同型写像$~\psi:A/\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi\to B~$の存在と一意性は準同型定理(定理16)で$~I=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$とすれば明らかである。

$K=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$とおく。
$\psi:A/K\to B~;~x+K\mapsto \varphi(x)~$を$~\psi:A/K\to\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$とみなす。
いま、$\psi(x+K)=0_B~$なら、$\varphi(x)=0_B~$なので$~x\in K~$となり、$x+K=K~$は$~A/K~$の単位元である。
よって、$\psi~$は単射となる。
$g\in G~$なら、$\varphi(x)=\psi(x+K)~$なので、 $\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi\subset\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\psi~$である。
また、$A/K~$の任意の元は$~x+K~$という形をしているので$~\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\psi\subset\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$となる。
よって、$\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\psi=\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$であり、 $A/K~$と$~\mathop{\mathrm{Im}}\nolimits\varphi~$は$~\psi~$により同型である。
$$\square$$


定理19(第二同型定理)
$A~$を環、$B~$を$~A~$の部分環、$I\subsetneq A~$を真の両側イデアルとする。
このとき、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~B+I=\{b+x\mid b\in B,x\in I\}はAの部分環\\ (2)&~B\cap IはBの両側イデアルであり(B+I)/I\simeq B/(B\cap I) \end{align}

$A~$を加法による群として見るとこで、 \begin{align} (1)'&~B+IはAの部分群\\ (2)'&~B\cap IはBの正規部分群であり(B+I)/I\simeq B/(B\cap I) \end{align} が成り立っている(群の第二同型定理(群論.定理32)より)。

$(1)~$ あとは$~B+I~$が$~A~$の部分環であることを示せばよい。
$x,y\in B+I~$を任意にとる。
このとき、$x=x_1+x_2~,~y=y_1+y_2~$となる$~x_1,y_1\in B,x_2,y_2\in I~$がとれる。 \begin{align} xy&=(x_1+x_2)(y_1+y_2)\\ &=x_1y_1+x_1y_2+x_2y_1+x_2y_2 \end{align} であり$~x_1y_1\in B,x_1y_2+x_2y_1+x_2y_2\in I~$なので、$xy\in B+I~$である。
また、$1\in B,0\in I~$なので$~1=1+0\in B+I~$となる。
よって、$B+I~$は$~A~$の部分環である。

$(2)~$ あとは$~B\cap I~$が$~B~$の両側イデアルであることを示せばよい。
$b\in B,x\in B\cap I~$を任意にとる。
このとき、$b,x\in B~$で$~B~$は部分環なので、$bx\in B~$である。
また、$b\in A,x\in I~$で$~I~$はイデアルなので、$bx\in I~$である。
よって、$bx\in B\cap I~$となるので、$B\cap I~$は$~I~$の左イデアルである。
同様にして、$B\cap I~$が右イデアルであることもわかる。

$$\square$$


定理20(第三同型定理)
$A~$を環、$I,J\subsetneq A~$を真の両側イデアル、$I\subset J~$とする。
このとき、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~準同型\varphi:A/I\to A/Jで\varphi(x+I)=x+Jとなるものがある\\ (2)&~(A/I)/(J/I)\simeq A/J \end{align}

$(1)~$ $a\in A,x\in I~$なら、$I\subset J~$なので、$a+x+J=a+J~$である。
よって、$\varphi(x+I)=x+J~$とおくと、$\varphi~$は$~A/I~$から$~A/J~$への準同型になる。

$(2)~$ $\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi=J/I~$なので、第一同型定理より$(2)$を得る。

$$\square$$


命題24
$A,B~$を環、$\varphi:A\to B~$を準同型写像とする。
また、$I\subsetneq A~$を真の両側イデアルとし、$\pi:A\to A/I~$を自然な準同型とする。
このとき、$\varphi=\psi\circ\pi~$となる準同型写像$~\psi:A/I\to B~$が存在するなら、$I\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$である。

条件を満たす$~\psi~$が存在したとする。
$\varphi=\psi\circ\pi~$なので、$I=\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\pi\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$である。
$$\square$$

この命題と準同型定理より、$\varphi=\psi\circ\pi~$となる準同型写像$~\psi:A/I\to B~$が存在することと、$I\subset\mathop{\mathrm{Ker}}\nolimits\varphi~$であることは同値であることがわかる。