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集合と写像 (9)逆写像


$f:X\to Y~$を全単射とする。 このとき、$f~$は全射なので、任意の$~y\in Y~$に対し、$f(x_y)=y~$となる$~x_y\in X~$がある。 また、$f~$が単射なので、そのような$~x_y\in X~$はただ1つである。
ここで、各$~y\in Y~$に対して$~f(x_y)=y~$となる(ただ1つの)$x_y\in X~$を対応させる$~Y~$から$~X~$への写像が考えられる。 この写像を$~f~$の逆写像といい \[ f^{-1}:Y\to X \] と表す。
$f~$が全単射でなければ、$f~$の逆写像は存在しないことに注意するべきである。

定理14
$f:X\to Y,g:Y\to X~$に対して、$g\circ f=\mathrm{id}_X~$かつ$~f\circ g=\mathrm{id}_Y~$ならば、$f~$は全単射で$~f^{-1}=g~$である。

$f:X\to Y,g:Y\to X~$とし、$g\circ f=\mathrm{id}_X~$かつ$~f\circ g=\mathrm{id}_Y~$とする。
$f\circ g=\mathrm{id}_Y~$より$~f\circ g~$は全射なので、$f~$は全射である。
$g\circ f=\mathrm{id}_X~$より$~g\circ f~$は単射なので、$f~$は単射である。
よって、$f~$は全単射である。
したがって、逆写像$~f^{-1}:Y\to X~$がある。

$f^{-1}~$と$~g~$の定義域、終域は等しい。
${}^{\forall}y\in Y~$をとり、$x=f~{-1}(y)~$とおく。
このとき、$f^{-1}~$の定め方より$~f(x)=y~$である。
よって、 \begin{split} g(y)&=g(f(x))\\ &=(g\circ f)(x)\\ &=\mathrm{id}_X(x)\\ &=x\\ &=f^{-1}(y) \end{split} となるので、$f^{-1}(y)=g(y)~$であり、$f^{-1}=g~$である。
$$\square$$


命題15
$f:X\to Y~$を全単射とする。(逆写像$~f^{-1}~$がある)
このとき、$f^{-1}\circ f=\mathrm{id}_X~$かつ$~f\circ f^{-1}=\mathrm{id}_Y~$である。

$f^{-1}\circ f~$と$~\mathrm{id}_X~$の定義域、終域は等しい。
${}^{\forall}x\in X~$をとり、$y=f(x)~$とする。
$x=f^{-1}(x)~$であるので、 \begin{equation*} \begin{split} (f^{-1}\circ f)(x)&=f^{-1}(f(x))\\ &=f^{-1}(y)\\ &=x\\ &=\mathrm{id}_X(x) \end{split} \end{equation*} となるので、$f^{-1}\circ f=\mathrm{id}_X~$である。
同様にして、$f\circ f^{-1}=\mathrm{id}_Y~$である。
$$\square$$

これと上の定理から、$f~$が全単射なら、
その逆写像$~f^{-1}~$も全単射であり、$(f^{-1})^{-1}=f~$となる。