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集合と写像 (4)補集合


 数学の理論では1つの集合$~U~$の部分集合について議論することが多い。 その集合$~U~$をその議論における全体集合という。 以下、$U~$は全体集合を表す。 部分集合$~A\subset U~$に対し、$U\setminus A~$を$~U~$における$~A~$の補集合(complement)といい \[ A^c \] と表す。

命題5
$A\subset U~$に対して、次が成り立つ。 \begin{split} (1)&~(A^c)^c=A\\ (2)&~A\cup A^c=U\\ (3)&~A\cap A^c=\emptyset\\ (4)&~U^c=\emptyset~,~\emptyset^c=U\\ (5)&~A\cup U=U~,~A\cup\emptyset=A\\ (6)&~A\cap U=A~,~A\cap\emptyset=\emptyset \end{split}

$(1)~$ $x\in(A^c)^c~$とする。
このとき、$x\in U~$かつ$~x\notin A^c~$である。
$x\notin A^c~$より、$x\in A~$なので、$(A^c)^c\subset A~$となる。

$x\in A~$とする。
$x\in A~$と$~A\subset U~$より$~x\in U~$である。
また、$x\notin A^c~$である。
$x\in U~$と$~x\notin A^c~$より$~x\in(A^c)^c~$となる。
したがって、$A\subset(A^c)^c~$である。

$(A^c)^c\subset A~$と$~A\subset(A^c)^c~$が示せたので$~(A^c)^c=A~$となる。

$(2)~$ 仮定と定義から明らかに$~A\subset U~$かつ$~A^c\subset U~$なので、$A\cup A^c\subset U~$である。

$x\in U~$とする。

<$x\in A~$のとき>
$x\in A~$より$~x\in A\cup A^c~$となる。

<$x\notin A~$のとき>
$x\in U~$かつ$~x\notin A~$なので、$x\in A^c~$である。
よって、$x\in A\cup A^c~$となる。

いずれの場合も$~x\in A\cup A^c~$となったので、$U\subset A\cup A^c~$である。

$(3)~$ $A\cap A^c\neq\emptyset~$と仮定して矛盾を導く。
このとき、$x\in A\cap A^c~$がある。
$x\in A\cap A^c~$より、$x\in A~$かつ$~x\in A^c~$となる。
$x\in A^c~$より$~x\notin A~$であるが、これは$~x\in A~$に矛盾する。
よって、$A\cap A^c=\emptyset~$となる。

$(4)~$ $x\in U~$かつ$~x\notin U~$を満たす元$~x~$は存在しない。
つまり、$U^c=\emptyset~$である。
また、任意の元$~x~$は$~x\notin\emptyset~$なので、$\emptyset^c= U~$である。

$(5)~$ $U\subset A\cup U~$なので、$A\cup U~$を示す。
$x\in A\cup U~$とすると、$x\in A~$または$~x\in U~$である。  

<$x\in A~$のとき>
$x\in A~$と$~A\subset U~$より、$~x\in U~$となる。

<$x\in U~$のとき>
$x\in U~$である。

よって、$x\in U~$なので、$A\cup U\subset U~$である。

$A\subset A\cup\emptyset~$なので、$A\cup\emptyset\subset A~$を示す。
$x\in A\cup\emptyset~$とする。
$x\in A~$または$~x\in\emptyset~$だが、$x\in\emptyset~$は成り立たないため、$x\in A~$である。
よって、$A\cup\emptyset\subset A~$である。

$(6)~$ $A\cap U\subset A~$なので、$A\subset A\cap U~$を示す。
$x\in A~$とすると、$A\subset U~$より、$x\in U~$である。
よって、$x\in A\cap U~$である。

空集合$~\emptyset~$は任意の集合の部分集合なので、$\emptyset\subset A\cap\emptyset~$である。
また、$A\cap\emptyset\subset\emptyset~$なので、$A\cap\emptyset=\emptyset~$である。

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命題6(De Morganの公式)
$A,B\subset U~$に対して、次が成り立つ。 \begin{split} (1)&~(A\cup B)^c=A^c\cap B^c\\ (2)&~(A\cap B)^c=A^c\cup B^c \end{split}

$(1)~$ $x\in(A\cup B)^c~$とする。
このとき、$x\in U~$かつ$~x\notin A\cup B~$である。
$x\notin A\cup B~$より、$x\notin A~$かつ$~x\notin B~$となる。
これと$~x\in U~$より、$x\in A^c~$かつ$~x\in B^c~$である。
よって、$x\in A^c\cap B^c~$となるので、$(A\cup B)^c\subset A^c\cap B^c~$である。

$x\in A^c\cap B^c~$とする。
このとき、$x\in A^c~$かつ$~x\in B^c~$である。
よって、$x\in U~$かつ$~x\notin A~$かつ$~x\notin B~$となる。
したがって、$x\in U~$かつ$~x\notin A\cup B~$である。 つまり、$x\in(A\cup B)^c~$となる。
よって、$A^c\cap B^c\subset(A\cup B)^c~$である。

$(2)~$ $x\in(A\cap B)^c~$とする。
このとき、$x\in U~$かつ$~x\notin A\cap B~$である。
$x\notin A\cap B~$より、$x\notin A~$または$~x\notin B~$である。

<$x\notin A~$のとき>
$x\in U~$かつ$~x\notin A~$より、$x\in A^c~$である。
よって、$x\in A^c\cup B^c~$となる。

<$x\notin B~$のとき>
$x\in U~$かつ$~x\notin B~$より、$x\in B^c~$である。
よって、$x\in A^c\cup B^c~$となる。

よって、$x\in A^c\cup B^c~$なので、$(A\cap B)^c\subset A^c\cup B^c~$である。

$x\in A^c\cup B^c~$とすると、$x\in A^c~$または$~x\in B^c~$である。

<$x\in A^c~$のとき>
$x\in U~$かつ$~x\notin A~$である。
$x\notin A~$より$~x\notin A\cap B~$であるので、$x\in(A\cap B)^c~$となる。

<$x\in B^c~$のとき>
$x\in U~$かつ$~x\notin B~$である。
$x\notin B~$より$~x\notin A\cap B~$であるので、$x\in(A\cap B)^c~$となる。

よって、$x\in(A\cap B)^c~$なので、$A^c\cup B^c\subset(A\cap B)^c~$である。

$$\square$$