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可換環論 (9)Euclid環


 $A~$を可換環とする。
写像$~d:A\setminus\{0\}\to\mathbb{N}~$があり、 \[ {}^{\forall}a,b\in A, [b\neq0 \Longrightarrow {}^{\exists}q,r\in A~\mathrm{s.t.}~ a=qb+r ~かつ~ (r=0 ~または~ d(r)\lt d(b))] \] を満たしているとき、$A~$はEuclid環であるという。
Euclid環における上の条件を満たす写像$~d:A\setminus\{0\}\to\mathbb{N}~$を$~A~$のノルムという。
また、Euclid環であるような整域をEuclid整域(Euclidean domain;ED)という。

定理26
Euclid環は単項イデアル環である。

$A~$をEuclid環とし、$d:A\setminus\{0\}\to\mathbb{N}~$を$~A~$のノルムとする。
$I\subset A~$を任意のイデアルとする。
$I~$が零イデアルであるときは$~I=(0)~$なので$~I~$は単項イデアルである。
以降、$I\neq(0)~$であるとする。
$I\setminus\{0\}\neq\emptyset~$なので$~\mathbb{N}~$の整列性から$~k=\min\{d(x)\mid x\in I\setminus\{0\}\}~$がとれる。
$k\in\{d(x)\mid x\in I\setminus\{0\}\}~$なので$~d(a)=k~$となる$~a\in I\setminus\{0\}~$が存在する。

このとき、任意の$~x\in I~$に対して、$q,r\in A~$がとれ \[ x=qa+r ~かつ~ (r=0 ~または~ d(r)\lt d(a)) \] が成り立つ。
$a\in I~$で$~I~$はイデアルなので、$qa\in I~$である。
よって、$r=x-qa\in I~$となる。
もし、$d(r)\lt d(a)~$なら$~a~$の取り方に矛盾する。
したがって、$r=0~$である。
つまり、$x=qa~$となり$~x\in(a)~$がわかる。
よって、$I=(a)~$となり$~I~$は単項イデアルとなる。
$$\square$$


系27
Euclid環は一意分解環である。