可換環論 (3)極大イデアル
$A~$を可換環とする。
$\mathfrak{m}\subsetneq A~$がイデアルで、「$I~$が$~\mathfrak{m}~$を含む$~A~$の真のイデアルなら$~I=\mathfrak{m}~$である」という条件を満たすとき、$\mathfrak{m}~$を$~A~$の極大イデアルという。
$(1)\Rightarrow(2)$
$\mathfrak{m}~$を極大イデアル、$\pi:A\to A/\mathfrak{m}~$を自然な準同型とする。
環論.定理17より、$\mathfrak{m}~$を含むイデアルと$~A/\mathfrak{m}~$のイデアルは1対1に対応する。
もし$~J\subset A/\mathfrak{m}~$が零イデアルでなければ、$x\in J\setminus\{\mathfrak{m}\}~$とすると$~(x)\subset J~$である。
$\pi~$は全射なので、$y\in\pi^{-1}(x)~$となる元$~y\in A~$がとれる。
このとき、$y\in\pi^{-1}(J)\setminus\mathfrak{m}~$である。
よって、$\pi^{-1}(J)~$は$~\mathfrak{m}~$を真に含む$~A~$のイデアルである。
したがって、$\pi^{-1}(J)=A~$となり、環論.定理17より$~J=\pi(A)=A/\mathfrak{m}~$となる。
$A/\mathfrak{m}~$は自明でないイデアルをもたないことがわかったので、$A/\mathfrak{m}~$は体である。
$(1)\Leftarrow(2)$
$A/\mathfrak{m}~$を体とする。
$\mathfrak{m}~$が極大イデアルでないとすれば、$\mathfrak{m}~$を真に含む$~A~$の真のイデアル$~I~$がとれる。
$\pi(I)=J~$とすれば、環論.定理17より$~J~$は$~A/\mathfrak{m}~$の自明でないイデアルである。
$A/\mathfrak{m}~$は体なので、これは矛盾である。
このとき、$I~$を含む$~A~$の極大イデアルが存在する。
特に、$a\in A~$が単元でないなら、$a~$を含む極大イデアルがある。
包含関係$\subset$による順序集合$~(X,\subset)~$を考える。
$Y\subset X~$を$~X~$の任意の鎖とし、$\displaystyle J_0=\bigcup Y~$とおく。
$x,y\in J_0~$なら、$x\in J_1,y\in J_2~$となる$~J_1,J_2\in Y~$が存在する。
$Y~$は鎖なので、$J_1\subset J_2~$または$~J_1\supset J_2~$のどちらかが必ず成り立つ。
よって、包含関係においてより大きい方$~J=\max{\{J_1,J_2\}}\in Y~$がとれる。
$x,y\in J~$であり、$J~$は$~A~$のイデアルなので、$xy\in J~$である。
$J\in Y~$なので、$xy\in J_0~$となる。
同様にして、$a\in A,x\in J_0~$なら$~ax\in J_0~$もわかるので、$J_0~$は$~A~$のイデアルである。
もし$~J_0=A~$なら、$1\in J'~$となる$~J'\in Y~$が存在する。
しかし、$J'=A~$となるので、これは矛盾である。
よって、$J_0~$は$~A~$の真のイデアルである。
$I\in X~$なので$~I\subset J_0~$となり、$J_0\in X~$が成り立つ。
明らかに$~{}^{\forall}J\in Y,J\subset J_0~$となるので、$J_0~$は$~Y~$の上界である。
$(X,\subset)~$の任意の鎖が上界をもつことがわかったので、Zornの補題より$~(X,\subset)~$には極大元$~I_0~$が存在する。
極大性の定義から、この$~I_0~$は$~I~$を含む極大イデアルである。
また、$a\in A~$が単元でないなら、$(a)~$は$~A~$の真のイデアルである。
よって、$(a)~$を含む極大イデアル$~\mathfrak{m}~$が存在する。
このとき、$a\in\mathfrak{m}~$となる。