可換環論 (4)倍元・約元
$A~$を可換環、$a,b\in A~$とする。
$b=ac~$となるような$~c\in A~$が存在するとき、$b~$は$~a~$の倍元(または倍数)といい、$a~$は$~b~$の約元(約数)または因数という。
また、このとき$~a\mid b~$と書く。
命題13
可換環$~A~$と任意の$~a,b,c\in A~$に対して次が成り立つ。
\begin{align*}
(1)&~ a\mid a \\
(2)&~ a\mid bかつb\mid c \Longrightarrow a\mid c
\end{align*}
$(1)~$ $a=a\cdot1~$より明らか。
$(2)~$
$a\mid b~$かつ$~b\mid c~$より$~b=ax,c=by~$となる$~x,y\in A~$がとれる。
このとき、$c=by=(ax)y=a(xy)~$となるので$~a\mid c~$である。
命題14
可換環$~A~$に対して次が成り立つ。
\begin{align*}
(1)&~ {}^{\forall}a\in A,{}^{\forall}x\in A^{\times},x\mid a \\
(2)&~ {}^{\forall}a\in A,a\mid 0
\end{align*}
$(1)~$
$x\in A^{\times}~$より$~xy=1~$となる$~y\in A~$が存在する。
このとき、$a=1\cdot a=(xy)a=x(ya)~$となるので$~x\mid a~$である。
$(2)~$ $0=a\cdot0~$より明らか。
命題15
可換環$~A~$と任意の$~a,b\in A~$に対して次が成り立つ。
\[
a\mid b \Longleftrightarrow (b)\subset(a)
\]
$a\mid b~$なら$~b=ac~$となる$~c\in A~$が存在する。
よって、$b\in(a)~$である。
つまり、$(b)\subset(a)~$となる。
逆に、$(b)\subset(a)~$であるとすると、$b=ac~$となる$~c\in A~$がとれる。
よって、$a\mid b~$である。
$$\square$$
よって、$b\in(a)~$である。
つまり、$(b)\subset(a)~$となる。
逆に、$(b)\subset(a)~$であるとすると、$b=ac~$となる$~c\in A~$がとれる。
よって、$a\mid b~$である。