可換環論 (8)単項イデアル環
可換環$~A~$において、任意のイデアルが単項イデアルであるとき$~A~$は単項イデアル環であるという。
また、単項イデアル環であるような整域を単項イデアル整域(principal ideal domain;PID)という。
命題24
単項イデアル環$~A~$において、$(0)~$でない素イデアルはすべて極大イデアルである。
$\mathfrak{p}\subsetneq A~$を$~(0)~$でない素イデアルとする。
$A~$は単項イデアル環なので$~\mathfrak{p}=(p)~$となる元$~p\in A~$がある。
$(p)=\mathfrak{p}~$は素イデアルなので、$p~$は素元であり、命題21より$~p~$は既約元である。
$\mathfrak{p}\subset I\subsetneq A~$となるイデアル$~I~$を任意にとる。
$A~$は単項イデアル環なので、$I=(a)~$となる元$~a\in A~$がとれる。
$p\in(p)=\mathfrak{p}\subset I=(a)~$となるので、$p=ab~$となる$~b\in A~$がある。
$(a)=I\subsetneq A~$なので$~a~$は単元でない。
$p~$は既約元なので、$b~$は単元でなければならない。
したがって、$p\sim a~$となるので$~\mathfrak{p}=(p)=(a)=I~$となる。
$$\square$$
$A~$は単項イデアル環なので$~\mathfrak{p}=(p)~$となる元$~p\in A~$がある。
$(p)=\mathfrak{p}~$は素イデアルなので、$p~$は素元であり、命題21より$~p~$は既約元である。
$\mathfrak{p}\subset I\subsetneq A~$となるイデアル$~I~$を任意にとる。
$A~$は単項イデアル環なので、$I=(a)~$となる元$~a\in A~$がとれる。
$p\in(p)=\mathfrak{p}\subset I=(a)~$となるので、$p=ab~$となる$~b\in A~$がある。
$(a)=I\subsetneq A~$なので$~a~$は単元でない。
$p~$は既約元なので、$b~$は単元でなければならない。
したがって、$p\sim a~$となるので$~\mathfrak{p}=(p)=(a)=I~$となる。
定理25
単項イデアル環は一意分解環である。
$A~$を単項イデアル整域とし、$a\in A~$を零因子でも単元でもない元とする。
$a~$が有限個の素元の積で書けない(素元分解できない)と仮定して矛盾を導く。
$a~$は単元ではないので、命題12より$~(a)~$を含む極大イデアル$~I_1~$が存在する。
$A~$は単項イデアル環なので、$I_1=(p_1)~$となる$~p_1\in A~$が存在する。
$(a)\subset(p_1)~$なので$~p_1\mid a~$が成り立ち、$a=a_1p_1~$となる$~a_1\in A~$がとれる。
$a_1\in A^{\times}~$なら$~a\sim p_1~$となり、$(a)=(p_1)~$が成り立つ。
$(p_1)~$は極大イデアルなので素イデアルであり、$~(a)~$も素イデアルとなり、$a~$は素元となる。
しかし、$a~$は有限個の素元の積で書けないのでこれは矛盾である。
したがって、$a_1~$は単元ではない。
また、$(a)\subsetneq(a_1)~$となる。
また、$a_1~$は単元でないので、同様にして$~(a_1)\subsetneq(a_2)~$となる非単元$~a_2~$がとれる。
これを繰り返すことで、非単元の無限列$~a=a_0,a_1,\dots,a_r,\dots~$がとれ \[ (a_0) \subsetneq (a_1) \subsetneq \cdots \subsetneq (a_r) \subsetneq \cdots \] が成り立つ。
ここで、$\displaystyle I=\bigcup_{i\in\mathbb{N}}(a_i)~$とする。
任意のイデアルは$~0~$を含んでいるので$~0\in I~$であることは明らかである。
$~x,y\in I~$を任意にとれば、$x\in(a_i),y\in(a_j)~$となる$~i,j\in\mathbb{N}~$がとれる。
このとき、$k=\max\{i,j\}~$とすれば$~(a_i),(a_j)\subset(a_k)~$となる。
$x,y\in(a_k)~$となるので、$x+y\in(a_k)~$となり、$x+y\in I~$が成り立つ。
また、$a\in A,x\in I~$を任意にとれば、$x\in(a_i)~$となる$~i\in\mathbb{N}~$がとれる。
このとき、$ax\in(a_i)~$となるので、$ax\in I~$となる。
したがって、$I~$はイデアルである。
$A~$は単項イデアル環なので$~I=(b)~$となる$~b\in A~$が存在する。
このとき、$b\in I~$なので$~b\in(a_i)~$となる$~i\in\mathbb{N}~$がとれる。
よって、 \[ (b) \subset (a_i) \subsetneq (a_{i+1}) \subsetneq \cdots \subset I = (b) \] となるが、これは矛盾である。
$$\square$$
$a~$が有限個の素元の積で書けない(素元分解できない)と仮定して矛盾を導く。
$a~$は単元ではないので、命題12より$~(a)~$を含む極大イデアル$~I_1~$が存在する。
$A~$は単項イデアル環なので、$I_1=(p_1)~$となる$~p_1\in A~$が存在する。
$(a)\subset(p_1)~$なので$~p_1\mid a~$が成り立ち、$a=a_1p_1~$となる$~a_1\in A~$がとれる。
$a_1\in A^{\times}~$なら$~a\sim p_1~$となり、$(a)=(p_1)~$が成り立つ。
$(p_1)~$は極大イデアルなので素イデアルであり、$~(a)~$も素イデアルとなり、$a~$は素元となる。
しかし、$a~$は有限個の素元の積で書けないのでこれは矛盾である。
したがって、$a_1~$は単元ではない。
また、$(a)\subsetneq(a_1)~$となる。
また、$a_1~$は単元でないので、同様にして$~(a_1)\subsetneq(a_2)~$となる非単元$~a_2~$がとれる。
これを繰り返すことで、非単元の無限列$~a=a_0,a_1,\dots,a_r,\dots~$がとれ \[ (a_0) \subsetneq (a_1) \subsetneq \cdots \subsetneq (a_r) \subsetneq \cdots \] が成り立つ。
ここで、$\displaystyle I=\bigcup_{i\in\mathbb{N}}(a_i)~$とする。
任意のイデアルは$~0~$を含んでいるので$~0\in I~$であることは明らかである。
$~x,y\in I~$を任意にとれば、$x\in(a_i),y\in(a_j)~$となる$~i,j\in\mathbb{N}~$がとれる。
このとき、$k=\max\{i,j\}~$とすれば$~(a_i),(a_j)\subset(a_k)~$となる。
$x,y\in(a_k)~$となるので、$x+y\in(a_k)~$となり、$x+y\in I~$が成り立つ。
また、$a\in A,x\in I~$を任意にとれば、$x\in(a_i)~$となる$~i\in\mathbb{N}~$がとれる。
このとき、$ax\in(a_i)~$となるので、$ax\in I~$となる。
したがって、$I~$はイデアルである。
$A~$は単項イデアル環なので$~I=(b)~$となる$~b\in A~$が存在する。
このとき、$b\in I~$なので$~b\in(a_i)~$となる$~i\in\mathbb{N}~$がとれる。
よって、 \[ (b) \subset (a_i) \subsetneq (a_{i+1}) \subsetneq \cdots \subset I = (b) \] となるが、これは矛盾である。