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可換環論 (6)素元・既約元


 $A~$を可換環とする。
零因子でも単元でもない元$~p~$に対して、$(p)~$が素イデアルとなるとき、$p~$は素元であるという。
また、零因子でも単元でもない元$~q\in A~$で \[ {}^{\forall}a\in A,a\mid q \Longrightarrow a\sim1~または~a\sim q \] を満たすものを既約元という。

補題19
可換環$~A~$において、零因子でも単元でもない元$~p\in A~$が素元であることは次が成り立つことと同値である。 \[ {}^{\forall}a,b\in A,p\mid ab \Longrightarrow p\mid a~または~p\mid b \]

$(p)~$が素イデアルであるとは \[ {}^{\forall}a,b\in A,ab\in(p)\Longrightarrow a\in(p)またはb\in(p) \] が成り立つことであり、これは命題15より \[ {}^{\forall}a,b\in A,p\mid ab\Longrightarrow p\mid a~または~p\mid b \] と書きかえられる。
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補題20
可換環$~A~$において、零因子でも単元でもない元$~q\in A~$が既約元であることは次が成り立つことと同値である。 \[ {}^{\forall}a,b\in A,q=ab \Longrightarrow a\in A^{\times} ~または~ b\in A^{\times} \]

(十分性)
$a\in A~$を任意にとり、$a\mid q~$とする。
このとき、$q=ab~$となる$~b\in A~$がとれる。
よって、$a\in A^{\times}~$または$~b\in A^{\times}~$が成り立つ。
$a\in A^{\times}~$なら命題18より$~a\sim1~$となる。
$b\in A^{\times}~$なら$~q=ba~$より$~q\sim a~$となる。

(必要性)
$q~$を既約元とし、$a,b\in A~$を任意にとり$~q=ab~$となっているとする。
$a\notin A^{\times}~$と仮定して$~b\in A^{\times}~$を示す。
$a\mid q~$なので$~a\sim1~$または$~a\sim q~$が成り立つ。
$a\notin A^{\times}~$なので命題18より$~a\sim1~$とはならない。
よって、$a\sim q~$である。
また、$b\mid q~$でもあるので$~b\sim1~$または$~b\sim q~$が成り立つ。
$b\sim q~$と仮定して矛盾を導く。
$a\sim q,b\sim q~$より$~a=uq,b=u'q~$となる単元$~u,u'~$が存在する。
このとき、$q=ab=uu'qq~$となる。
$q~$は零因子でないので、$uu'q=1~$となる。
$uu'~$は単元なので$~q\sim1~$となるが、これは矛盾である。
したがって、$b\sim1~$となる。

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命題21
素元はすべて既約元である。

素元$~p\in A~$を任意にとり、$p=ab~(a,b\in A)~$とする。
$ab=p\in(p)~$であり、$(p)~$は素イデアルなので$~a\in(p)~$または$~b\in(p)~$が成り立つ。
$a\in(p)~$とすれば、$a=px~$となる$~x\in A~$がとれる。
このとき、$p=ab=pxb~$となる。
$p~$は零因子でないので、$xb=1~$となる。
よって、$b~$が$~1~$と同伴であり、$b\in A^{\times}~$が成り立つ。
したがって、$p~$は既約元である。
$b\in(p)~$の場合も同様である。
$$\square$$