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実数 (6)実数の性質


 $\mathbb{R}~$上の加法$+$、乗法$~\cdot~,\times$、順序関係$\le$を \begin{align} &x+y=\psi(\psi^{-1}(x)~\dot{+}~\psi^{-1}(y))\\ &x\cdot y=\psi(\psi^{-1}(x)~\dot{\times}~\psi^{-1}(y))\\ &x\le y\Longleftrightarrow\psi^{-1}(x)~\dot{\le}~\psi^{-1}(y) \end{align} となるように定める。
これらは$~x,y\in\mathbb{Q}~$のときは$~\mathbb{Q}~$上の$+,\cdot~(\times),\le$と一致する。
また、$p+(-q)~$を$~p-q~$を省略して書くことで、$\mathbb{R}~$上の減法$-$を定める。
$\mathbb{R}~$上で乗法逆元をかけるという操作を実数の除法という。
自然数のときと同様に、加法・減法より乗法の演算を優先するようにして、乗法演算子は(わかりにくい場合を除いて)省略する。
また、実数であって有理数でないもの、つまり$~\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}~$の元を無理数という。

 定義より、これまでに示してきた$~R~$上の性質は$~\mathbb{R}~$上でも成り立つことがわかる。
わかっている実数の性質の一部を以下に列挙する。
定理12(実数の性質)

$(1)~$ $\mathbb{R}~$は$+,\cdot~$によって体になる。

$(2)~$ 任意の$~x,y\in\mathbb{R}~$について、次が成り立つ。 \begin{align} (\mathrm{a})&~-(-x)=x\\ (\mathrm{b})&~x=-y\Longleftrightarrow x=-y\\ (\mathrm{c})&~-0=0 \end{align}

$(3)~$ 任意の$~x,y,z\in\mathbb{R}~$について、次が成り立つ。 \begin{align} (\mathrm{a})&~(-x)\cdot y=x\cdot(-y)=-(x\cdot y)\\ (\mathrm{b})&~(-x)\cdot(-y)=xy\\ (\mathrm{c})&~x(y-z)=xy-xz\\ (\mathrm{d})&~(x-y)z=xz-yz\\ (\mathrm{e})&~z\neq0~のとき~xz=yz\Longrightarrow x=y \end{align}

$(4)~$ $\le$は$~\mathbb{R}~$上の全順序関係である。

$(5)~$ 任意の$~x,y,z\in\mathbb{R}~$について、次が成り立つ。 \begin{align} (\mathrm{a})&~x\lt y~かつ~y\lt z\Longrightarrow x\lt z\\ (\mathrm{b})&~x\lt y\Longleftrightarrow x+z\lt y+z\\ (\mathrm{c})&~z\gt0~なら~x\lt y\Longleftrightarrow xz\lt yz\\ (\mathrm{d})&~x\lt y\Longleftrightarrow-x\gt-y\\ (\mathrm{e})&~x,y\neq0~のとき~x\lt y\Longleftrightarrow\frac{1}{x}\gt\frac{1}{y} \end{align}

$(6)~$ 任意の$~x,y\in\mathbb{R}~$について、$x\lt y~$とするとき$~x\lt z\lt y~$となる$~z\in\mathbb{R}~$が存在する。


定理13(Archimedesの原理)
任意の$~x\in\mathbb{R}~$に対して、$x\lt n~$となる$~n\in\mathbb{N}~$が存在する。

$[a_n]\in R~$を用いて、$x=\psi([a_n])~$とおく。
補題2より、すべての$~n\in\mathbb{N}~$について$~|a_n|\lt M~$となる$~M\in\mathbb{Q}~$が存在する。
特に$~a_n\lt M~({}^{\forall}n\in\mathbb{N})~$となる。
$M~$は有理数なので$~M=\dfrac{m}{m'}~$となる$~m\in\mathbb{Z},m'\in\mathbb{Z}^*~$がとれる。
また、$0\le|a_n|~$なので$~M\gt0~$であり、$m,m'\gt0~$とできる。
このとき、$Mm'=m\in\mathbb{N}~$であり、$a_n\lt M\le Mm'=m~({}^{\forall}n\in\mathbb{N})~$となっている。
よって、$[a_n]~\dot{\lt}~[m]~$である。
$m\in\mathbb{Q}~$なので$~\psi(m)=m\in\mathbb{N}~$であり、$x=\psi([a_n])\lt\psi(m)=m~$である。
$$\square$$


定理14
任意の$~x,y\in\mathbb{R}~$について、$x\lt y~$とすると、$x\lt q\lt y~$となる$~q\in\mathbb{Q}~$が存在する。

$x\lt y~$とすると$~x\neq y~$なので、$y-x\neq0~$である。
Archimedesの原理より$~n\gt\dfrac{1}{y-x}~$となる$~n\in\mathbb{N}~$がとれる。
$y-x\gt0~$なので、$n(y-x)\gt1$、つまり$~nx+1\lt ny~$を満たす。
$m=\min{\{k\in\mathbb{N}\mid k\gt nx\}}~$とおく。
$m~$の最小性より$~m-1\le nx\lt m~$となる。
よって、$nx\lt m\le nx+1\lt ny~$を満たす。
以上より、$\dfrac{m}{n}\in\mathbb{Q}~$は$~x\lt\dfrac{m}{n}\lt y~$を満たす。
$$\square$$

この性質を$~\mathbb{Q}~$の$~\mathbb{R}~$における稠密性という。