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実数 (4)実数の順序関係


 $R~$上の関係$\dot{\le}$を、
\[ [a_n]~\dot{\le}~[b_n]\Longleftrightarrow{}^{\exists}q\in\{0\}\cap\mathbb{Q}_{\gt},{}^{\exists}N\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},n\ge N\Longrightarrow b_n-a_n\ge q \]
となるように定義する。
$x~\dot{\le}~y~$は$~y~\dot{\ge}~x~$とも書く。

定理8
$R~$上の関係$\dot{\le}$は、任意の$~x,y,z\in R~$について次を満たす。 \begin{align} (1)&~x~\dot{\le}~x\\ (2)&~x~\dot{\le}~y~かつ~y~\dot{\le}~x\Longrightarrow x=y\\ (3)&~x~\dot{\le}~y~かつ~y~\dot{\le}~z\Longrightarrow x~\dot{\le}~z \end{align}

$\{a_n\},\{b_n\},\{c_n\}\in\mathcal{C}~$を用いて、$x=[a_n],y=[b_n],z=[c_n]~$とおく。

$(1)~$ $a_n-a_n=0~$なので明らかに$~x~\dot{\le}~x~$である。

$(2)~$ $[a_n]~\dot{\le}~[b_n],[b_n]~\dot{\le}~[a_n]~$より、ある$~q,q'\in\{0\}\cap\mathbb{Q}_{\gt}~$と$~N_1,N_2\in\mathbb{N}~$があり、 \begin{align} &n\ge N_1\Longrightarrow b_n-a_n\ge q\\ &n\ge N_2\Longrightarrow a_n-b_n\ge q'\Longrightarrow b_n-a_n\le -q' \end{align} を満たす。 $N=\max{\{N_1,N_2\}}~$とする。
$q\ge0,-q'\le0~$であり、$q\le b_n-a_n\le -q'~(n\gt N)~$となっているので、 \[ n\ge N\Longrightarrow0\le b_n-a_n\le0 \] となり$\le$の反対称性より、$b_n-a_n=0~(n\gt N)~$である。
よって、$[a_n]=[b_n]~$である。

$(3)~$ $[a_n]~\dot{\le}~[b_n],[b_n]~\dot{\le}~[c_n]~$より、ある$~q,q'\in\{0\}\cap\mathbb{Q}_{\gt}~$と$~N_1,N_2\in\mathbb{N}~$があり、 \begin{align} &n\ge N_1\Longrightarrow b_n-a_n\ge q\\ &n\ge N_2\Longrightarrow c_n-b_n\ge q' \end{align} を満たす。 $N=\max{\{N_1,N_2\}}~$とすると、 \begin{align} n\ge N\Longrightarrow c_n-a_n&=(c_n-b_n)+(b_n-a_n)\\ &\ge q+q' \end{align}

$$\square$$

これによって、$R~$上の関係$\dot{\le}$は順序関係であることがわかる。
$x~\dot{\le}~y~$かつ$~x\neq y~$のとき$~x~\dot{\lt }~y~$(または$~y~\dot{\gt}~x~$)と書く。

定理9
任意の$~x,y\in R~$について次が成り立つ。 \[ x~\dot{\lt}~y~または~y~\dot{\lt}~x~または~x=y \]

$\{a_n\},\{b_n\}\in\mathcal{C}~$を用いて、$x=[a_n],y=[b_n]~$とおく。
補題4より、次のうちどれかが成り立つ。
\begin{align} (1)&~{}^{\forall}\varepsilon\in\mathbb{Q}_{\gt},{}^{\exists}N\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},n\ge N\Longrightarrow|b_n-a_n|\lt\varepsilon\\ (2)&~{}^{\exists}q\in\mathbb{Q}_{\gt}~\mathrm{s.t}~{}^{\exists}N\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},n\ge N\Longrightarrow b_n-a_n\ge q\\ (3)&~{}^{\exists}q\in\mathbb{Q}_{\gt}~\mathrm{s.t}~{}^{\exists}N\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},n\ge N\Longrightarrow b_n-a_n\le-q\\ \end{align}
$(1)$が成り立つなら$~[a_n]=[b_n]~$である。
$(2)$が成り立つなら$~[a_n]~\dot{\lt}~[b_n]~$である。
$(3)$が成り立つなら$~[a_n]~\dot{\gt}~[b_n]~$である。
$$\square$$

これによって、関係$\dot{\le}$は$~R~$上の全順序関係であることがわかる。

補題10
$[a_n],[b_n]\in R~$に対して、ある$~N\in\mathbb{N}~$が存在して、 \[ n\ge N\Longrightarrow a_n\le b_n \] が成り立つなら、$[a_n]~\dot{\le}~[b_n]~$である。

$a_n\le b_n~(n\ge N)~$と仮定すると、$b_n-a_n\ge0~(n\ge N)~$なので$~[a_n]~\dot{\gt}~[b_n]~$とはならない。
つまり、定理9より$~[a_n]~\dot{\le}~[b_n]~$となる。
$$\square$$

(1)有理数列
(2)疑似実数
(3)疑似実数の四則演算
(4)疑似実数の順序関係