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整数 (5)整数


 写像$~\varphi:\mathbb{N}\to Z~$を \[ \varphi(n):=[n,0] \] となるように定める。

定理18
$\varphi~$は$~\mathbb{N}~$から$~Z~$への単射であり、加法、乗法、順序関係を保つ。
つまり、すべての$~m,n\in\mathbb{N}~$について次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~\varphi(m+n)=\varphi(m)~\dot{+}~\varphi(n)\\ (2)&~\varphi(m\cdot n)=\varphi(m)~\dot{\times}~\varphi(n)\\ (3)&~m\le n\Longleftrightarrow\varphi(m)~\dot{\le}~\varphi(n) \end{align}

$m,n\in\mathbb{N}~$を任意にとる。
\begin{align} \varphi(m)=\varphi(n)&\Longrightarrow[m,0]=[n,0]\\ &\Longrightarrow m+0=n+0\\ &\Longrightarrow m=n \end{align} となるので、$\varphi~$は単射である。

$(1)~$ \begin{align} \varphi(m)\dot{+}\varphi(n)&=[m,0]\dot{+}[n,0]\\ &=[m+n,0+0]\\ &=[m+n,0]\\ &=\varphi(m+n) \end{align} となるので、$\varphi~$は加法を保つ。

$(2)~$ \begin{align} \varphi(m)\dot{\times}\varphi(n)&=[m,0]\dot{\times}[n,0]\\ &=[(m\cdot n)+(0\cdot0),(m\cdot0)+(0\cdot n)]\\ &=[m\cdot n,0]\\ &=\varphi(m\cdot n) \end{align} となるので、$\varphi~$は乗法を保つ。

$(3)~$ \begin{align} m\le n&\Longleftrightarrow m+0\le n+0\\ &\Longleftrightarrow [m,0]~\dot{\le}~[n,0]\\ &\Longleftrightarrow \varphi(m)~\dot{\le}~\varphi(n) \end{align} となるので、$\varphi~$は順序関係を保つ。

$$\square$$


定理19
任意の$~a\in Z~$に対して、次の3つのどれか1つのみが成り立つ。 \begin{align} (1)&~{}^{\exists}k\in\mathbb{N}\setminus\{0\}~\mathrm{s.t.}~a=-\varphi(k)\\ (2)&~a=\dot{0}\\ (3)&~{}^{\exists}l\in\mathbb{N}\setminus\{0\}~\mathrm{s.t.}~a=\varphi(l) \end{align}

$(1)$と$(2)$、$(2)$と$(3)$が同時に成り立たないことは明らかである。
$(1)$と$(3)$が同時に成り立ったとすると、$a=-\varphi(k)=\varphi(l)~$となるので、$[0,k]=[l,0]~$となる。
よって、$0+0=k+l~$であるので、$k=l=0~$となる。
つまり、$a=\dot{0}$、$(2)$も成り立つことになり、先の考察に矛盾する。
したがって、$(1)$から$(3)$のうち1つのみが成り立つ。

$m,n\in\mathbb{N}~$を用いて、$a=[m,n]~$とする。
任意の2つの自然数$~m,n~$について、$m\gt n,m=n,m\lt n~$のいずれか1つのみが成り立つことを用いる。
$m\gt n~$のとき、${}^{\exists}k\in\mathbb{N}\setminus\{0\}~\mathrm{s.t.}~m=n+k~$より $$ a=[m,n]=[m,m+k]=[0,k]=-\varphi(k) $$ $m=n~$のとき $$ a=[m,n]=[m,m]=[0,0]=0 $$ $m\lt n~$のとき,${}^{\exists}l\in\mathbb{N}\setminus\{0\}~\mathrm{s.t.}~n=m+l~$より $$ a=[m,n]=[n+l,n]=[l,0]=\varphi(l) $$ よって、$(1)$から$(3)$のいずれかが成り立つ。
$$\square$$

この定理より \begin{align} &\varphi(\mathbb{N})\cup-\varphi(\mathbb{N})=Z\\ &\varphi(\mathbb{N})\cap-\varphi(\mathbb{N})=\{\dot{0}\} \end{align} となることがわかる。
ただし、$-\varphi(\mathbb{N})=\{-\varphi(n)\mid n\in\mathbb{N}\}~$である。
特に、1つ目の式から \[ Z=\{\pm\varphi(n)\mid n\in\mathbb{N}\} \] と表せる。
これらのことから$~Z~$の元は $$ \dots,-\varphi(3),-\varphi(2),-\dot{1},\dot{0},\dot{1},\varphi(2),\varphi(3),\dots $$ というものであることがわかる。

 ここで$~\mathbb{N}~$を包含する集合$~\mathbb{Z}~$を全単射$~\psi:Z\to\mathbb{Z}~$により作る。
ただし、$\psi~$は次のように定める。 $$ \psi(a):=\left\{ \begin{array}{l} -k & ({}^{\exists}k\in\mathbb{N}\setminus\{0\}~\mathrm{s.t.}~a=-\varphi(k))\\ 0 & (a=\dot{0})\\ l & ({}^{\exists}l\in\mathbb{N}\setminus\{0\}a~\mathrm{s.t.}~a=\varphi(l)) \end{array} \right. $$ このとき、明らかに$~\psi(\varphi(\mathbb{N}))=\mathbb{N}~$である。
つまり$~\mathbb{Z}~$は、$\mathbb{N}~$に$-k~(k\in\mathbb{N}\setminus\{0\})~$という形をした新たな元を加えたものになっている。 $$ \mathbb{Z}=\{\dots,-4,-3,-2,-1,0,1,2,3,4,\dots\} $$ この集合$~\mathbb{Z}~$の元を整数という。