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整数 (2)疑似整数の加法


 $Z~$上の演算$~\dot{+}~$を次のように定める。 \[ [m,n]~\dot{+}~[m',n']=[m+m',n+n'] \] $m,n,m',n',k,l,k',l'\in\mathbb{N}~$に対して、 \begin{align} [m,&n]=[m',n']~,~[k,l]=[k',l']\\ &\Longrightarrow m+n'=m'+n~,~k+l'=k'+l\\ &\Longrightarrow(m+n')+(k+l')=(m'+n)+(k+l')\\ &\Longrightarrow(m+k)+(n'+k')=(m'+k')+(n+l)\\ &\Longrightarrow[m+k,n+l]=[m'+k',n'+l'] \end{align} とできるので、この定義はwell-definedである。

定理3
$Z~$は$~\dot{+}~$によって可換群になる。

任意の元$~s\in\mathbb{N}~$に対し、補題2(2)より \begin{align} &[m,n]~\dot{+}~[s,s]=[m+s,n+s]=[m,n]\\ &[s,s]~\dot{+}~[m,n]=[s+m,s+n]=[m,n] \end{align} となるので$~[s,s]~$は$~\dot{+}~$における単位元である。

自然数の加法の可換性から \begin{align} [m,n]~\dot{+}~[m',n']&=[m+m',n+n']\\ &=[m'+m,n'+n]\\ &=[m',n']~\dot{+}~[m,n] \end{align} となるので、$\dot{+}~$は可換性をもつ。

自然数の加法の結合性から \begin{align} ([m,n]&~\dot{+}~[m',n'])~\dot{+}~[m'',n'']\\ &=[m+m',n+n']~\dot{+}~[m'',n'']\\ &=[(m+m')+m'',(n+n')+n'']\\ &=[m+(m'+m''),n+(n'+n'')]\\ &=[m,n]~\dot{+}~[m'+m'',n'+n'']\\ &=[m,n]~\dot{+}~([m',n']~\dot{+}~[m'',n'']) \end{align} となるので、$\dot{+}~$は結合性をもつ。

任意の元$~(m,n)\in\mathbb{N}\times\mathbb{N}~$について、 \begin{align} [m,n]~\dot{+}~[n,m]&=[m+n,n+m]\\ &=[m+n,m+n] \end{align} となり、これは単位元である。
よって、$[n,m]~$は$~\dot{+}~$における$~[m,n]~$の逆元である。
$$\square$$

よって、任意の$~Z~$の元には$~\dot{+}~$における逆元がある。 $a\in Z~$の逆元を$-a~$とする。
$a~\dot{+}(-b)~$を$~a-b~$と省略して書く。 また、$Z~$の$~\dot{+}~$における単位元を$~\dot{0}~$とする。

命題4
任意の$~a,b\in Z~$に対して、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~-(-a)=a\\ (2)&~a=-b\Longleftrightarrow b=-a\\ (3)&~-\dot{0}=\dot{0} \end{align}

$(1)~$ $a+(-a)=(-a)+a=0~$なので、$a=-(-a)~$となる。

$(2)~$ $a=-b~$とすれば、$(1)$より$~b=-(-b)=-a~$となる。
逆に、$b=-a~$とすれば、$(1)$より$~a=-(-a)=-b~$となる。

$(3)~$ $\dot{0}~\dot{+}~\dot{0}=\dot{0}~$なので、$\dot{0}~$の$~\dot{+}~$における逆元は$~\dot{0}~$自身である。

$$\square$$


定理5
任意の$~a\in Z~$についての命題$~P(a)~$があり、次が成り立つとする。
\begin{align} (1)&~P(a_0)~が正しい~a_0\in Z~が存在する\\ (2)&~P([m,n])~が正しいなら~P([m+1,n]),P([m,n+1])~も正しい \end{align}
このとき、すべての$~a\in Z~$について$~P(a)~$は正しい。

$m_0,n_0\in\mathbb{N}~$を用いて$~a_0=[m_0,n_0]~$とおく。
$[m_0+0,n_0]=[m_0,n_0]~$なので$~P([m_0+0,n_0])~$は正しい。
$~P([m_0+k,n_0])~$が正しいとすると、$(2)$より$~P([(m_0+k)+1,n_0])~$も正しい。
つまり、$P([m_0+(k+1),n_0])~$は正しい。
よって、すべての自然数$~k~$について$~P([m_0+k,n_0])~$は正しい。
同様にして、すべての自然数$~l~$について$~P([m_0,n_0+l])~$は正しい。

任意の$~a\in Z~$ととると、ある$~m,n\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n]~$と表される。

<$[m,n]~\dot{\le}~[m_0,n_0]~$のとき>
$m+n_0\le m_0+n~$なので$~(m+n_0)+l=m_0+n~$となる$~l\in\mathbb{N}~$がとれる。
よって、$m+(n_0+l)=m_0+n~$となり$~[m,n]=[m_0,n_0+l]~$とできる。
したがって、$P(a)~$は正しい。

<$[m,n]~\dot{\ge}~[m_0,n_0]~$のとき>
$m+n_0\ge m_0+n~$なので$~m+n_0=(m_0+n)+k~$となる$~k\in\mathbb{N}~$がとれる。
よって、$m+n_0=(m_0+k)+n~$となり$~[m,n]=[m_0+k,n_0]~$とできる。
したがって、$P(a)~$は正しい。

したがって、任意の$~a\in Z~$について$~P(a)~$は正しい。
$$\square$$

(1)疑似整数
(2)疑似整数の加法