整数 (3)疑似整数の乗法
$Z~$上の演算$~\dot{\times}~$を次のように定める。 \[ [m,n]~\dot{\times}~[m',n']=[mm'+nn',mn'+nm'] \] $m,n,m',n',k,l,k',l'\in\mathbb{N}~$に対して、
自然数の加法と乗法の可換性から \begin{align} [m,n]~\dot{\times}~[m',n']&=[mm'+nn',mn'+nm']\\ &=[m'm+n'n,m'n+n'm]\\ &=[m',n']~\dot{\times}~[m,n] \end{align} となるので、$\dot{\times}~$は可換性をもつ。
自然数の加法と乗法の性質から
$m,n\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n]~$とおくと、 \begin{align} &[m,n]~\dot{\times}~[s,s]=[ms+ns,ms+ns]=\dot{0}\\ &[s,s]~\dot{\times}~[m,n]=[sm+sn,sn+sm]=\dot{0} \end{align} となる。
$(1)~$ $m,n,m',n',m'',n''\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n],b=[m',n'],c=[m'',n'']~$とおく。
$(2)~$ $(1)$より$~c~\dot{\times}~(a~\dot{+}~b)=(c~\dot{\times}~a)~\dot{+}~(c~\dot{\times}~b)~$が得られ、乗法の可換性より \[ (a~\dot{+}~b)~\dot{\times}~c=(a~\dot{\times}~c)~\dot{+}~(b~\dot{\times}~c) \] となる。
$(1)~$
$m,n,m',n'\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n],b=[m',n']~$とおく。
\begin{align}
(-a)~\dot{\times}~b&=[n,m]~\dot{\times}~[m',n']\\
&=[nm'+mn',nn'+mm']\\
&=-[mm'+nn',mn'+nm']\\
&=-(a~\dot{\times}~b)
\end{align}
\begin{align}
a~\dot{\times}~(-b)&=[m,n]~\dot{\times}~[n',m']\\
&=[mn'+nm',mm'+nn']\\
&=-[mm'+nn',mn'+nm']\\
&=-(a~\dot{\times}~b)
\end{align}
$(2)~$ $(1)$より \begin{align} (-a)~\dot{\times}~(-b)&=-(a~\dot{\times}~(-b))\\ &=-(-(a~\dot{\times}~b))\\ &=a~\dot{\times}~b \end{align} となる。
$(3)~$ $b-c=b~\dot{+}~(-c)~$なので、$(1)$より \begin{align} a~\dot{\times}~(b-c)&=(a~\dot{\times}~b)~\dot{+}~(a~\dot{\times}~(-c))\\ &=(a~\dot{\times}~b)~\dot{+}~(-(a~\dot{\times}~c))\\ &=(a~\dot{\times}~b)-(a~\dot{\times}~c) \end{align} となる。
$(4)~$ $(3)$より$~c~\dot{\times}~(a-b)=(c~\dot{\times}~a)-(c~\dot{\times}~b)~$が得られ、 \[ (a-b)~\dot{\times}~c=(a~\dot{\times}~c)-(b~\dot{\times}~c) \] となる。
$(1)~$
$m,n,m',n'\in\mathbb{N}~$を用いて、$a=[m,n],b=[m',n']~$とおくと、$[m,n]=\dot{0}~$は$~m=n~$と同値なので、
\begin{align}
mm'+nn'=m&n'+nm'\\
&\Longrightarrow m=n~または~m'=n'
\end{align}
を示せばよい。
よって、任意の$~m,n,m',n'\in\mathbb{N}~$について、
\begin{align}
mm'+nn'=m&n'+nm'\\
&\Longrightarrow m=n~または~m'=n'
\end{align}
となることを示す。
$n'=0~$のとき、$mm'=nm'~$となる。
$m'=0~$なら$~m'=n'=0~$である。
$m'\neq0~$なら$~m=n~$である。
$k\in\mathbb{N}~$について$~mm'+nk=mk+nm'~$なら$~m=n~$または$~m'=k~$となると仮定する。
$mm'+n(k+1)=m(k+1)+nm'~$とすると、
\[
(mm'+nk)+n=(mk+nm')+m
\]
となるので、$m=n~$である。
よって、$m=n~$または$~m'=k+1~$が成り立つ。
したがって、帰納法より任意の$~n'\in\mathbb{N}~$について
\begin{align}
mm'+nn'=m&n'+nm'\\
&\Longrightarrow m=n~または~m'=n'
\end{align}
が成り立つ。
$(2)~$
$c\neq\dot{0},a~\dot{\times}~c=b~\dot{\times}~c~$とする。
$a~\dot{\times}~c=b~\dot{\times}~c~$の両辺に$-(b~\dot{\times}~c)~$を足して
\[
(a~\dot{\times}~c)-(b~\dot{\times}~c)=\dot{0}
\]
左辺は分配法則より、$(a-b)~\dot{\times}~c~$となる。
$(1)$の対偶と$~c\neq\dot{0}~$より$~a-b=\dot{0}~$である。
両辺に$~b~$を足すと$~a=b~$となる。
よって、$Z~$は整域である。