整数 (4)疑似整数の順序関係
$Z~$上の関係$\dot{\le}$を次で定義する。 \[ [m,n]~\dot{\le}~[m',n']\Longleftrightarrow m+n'\le m'+n \] $a~\dot{\le}~b~$は$~b~\dot{\ge}~a~$とも書く。
$(1)~$ $\le$は反射律を満たすので$~m+n\le m+n~$となる。
$(2)~$
$a~\dot{\le}~b,b~\dot{\le}~a~$より、$m+n'\le m'+n,m'+n\le n'+m~$が成り立つ。
$\le$は対称律を満たすので$~m+n'=m'+n~$となる。
$(3)~$
$a~\dot{\le}~b,b~\dot{\le}~c~$より、
\begin{align}
&m+n'\le m'+n\\
&m'+n''\le m''+n'
\end{align}
が成り立つ。
\begin{align}
(m+n')+(m'+n'')&\le(m'+n)+(m'+n'')\\
&\le(m'+n)+(m''+n')
\end{align}
となるので、$(m+n'')+(m'+n')\le(m''+n)+(m'+n')~$が成り立つ。
よって、$m+n''\le m''+n~$となる。
$a~\dot{\le}~b~$かつ$~a\neq b~$のとき$~a~\dot{\lt }~b~$(または$~b~\dot{\gt}~a~$)と書く。
また、$a~\dot{\lt}~b~$のとき、$a~$は$~b~$より小さい、$b~$は$~a~$より大きいという。
$(1)~$ 定義から、以下のようになる。 \begin{equation*} \begin{align} [m&,n]~\dot{\lt}~[m',n']\\ &\Longleftrightarrow[m,n]~\dot{\le}~[m',n']~かつ~[m,n]\neq[m',n']\\ &\Longleftrightarrow m+n'\le m'+n~かつ~m+n'\neq m'+n\\ &\Longleftrightarrow m+n'\lt m'+n \end{align} \end{equation*}
$(2)~$
$c=[m'',n'']~$とおく、$(1)$と$~a~\dot{\lt}~b,b~\dot{\lt}~c~$より、
\begin{align}
&m+n'\lt m'+n\\
&m'+n''\lt m''+n'
\end{align}
が成り立つ。
\begin{align}
(m+n')+(m'+n'')&\lt(m'+n)+(m'+n'')\\
&\lt(m'+n)+(m''+n')
\end{align}
となるので、$(m+n'')+(m'+n')\lt(n''+m)+(m'+n')~$が成り立つ。
よって、$m+n''\lt n''+m~$となる。
$(3)~$ $c=[m'',n'']~$とおく、$(1)$より次のようになる。
自然数.定理11より、
\begin{align} [m,n]~\dot{\lt}~[m',n']&\Longleftrightarrow m+n'\lt m'+n\\ &\Longleftrightarrow n'+m\lt n+m'\\ &\Longleftrightarrow[n',m']~\dot{\lt}~[n,m] \end{align} となり、$-a=[n,m],-b=[n',m']~$なので、 \[ a~\dot{\lt}~b\Longleftrightarrow -a~\dot{\gt}-b \] である。
$(1)~$
$c~\dot{\gt}~\dot{0}~$とすると、$m''\gt n''~$であるので、$n''+l=m''~$となる$~l\in\mathbb{N}\setminus\{0\}~$がある。
命題12$(1)$より
\[
[m,n]~\dot{\lt}~[m',n']\Longleftrightarrow m+n'\lt m'+n
\]
となり、これは
\[
(m+n')+k=m'+n
\]
となる$~k\in\mathbb{N}~$が存在することと同値である。
このとき、
よって、これは
$(2)~$ $c~\dot{\lt}~\dot{0}~$とすると$~-c~\dot{\gt}~\dot{0}~$なので、$(1)$より \begin{align} a~\dot{\lt}~b&\Longleftrightarrow a~\dot{\times}~(-c)~\dot{\lt}~b~\dot{\times}~(-c)\\ &\Longleftrightarrow -(a~\dot{\times}~c)~\dot{\lt}~-(b~\dot{\times}~c)\\ &\Longleftrightarrow a~\dot{\times}~c~\dot{\gt}~b~\dot{\times}~c \end{align}
$(3)~$ $b~\dot{\gt}~\dot{0}~$とすると、$(1)$より \begin{align} &a~\dot{\gt}~\dot{0}\Longleftrightarrow a~\dot{\times}~b~\dot{\gt}~\dot{0}~\dot{\times}~b=\dot{0}\\ &a~\dot{\lt}~\dot{0}\Longleftrightarrow a~\dot{\times}~b~\dot{\lt}~\dot{0}~\dot{\times}~b=\dot{0} \end{align}
$(4)~$ $b~\dot{\lt}~\dot{0}~$とすると、$(2)$より \begin{align} &a~\dot{\gt}~\dot{0}\Longleftrightarrow a~\dot{\times}~b~\dot{\lt}~\dot{0}~\dot{\times}~b=\dot{0}\\ &a~\dot{\lt}~\dot{0}\Longleftrightarrow a~\dot{\times}~b~\dot{\gt}~\dot{0}~\dot{\times}~b=\dot{0} \end{align}
特に、$s=0~$とすると$~\dot{1}=[1,0]~$である。
$(1)~$
$m,n,m',n'\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n],b=[m',n']~$とおく。
$a~\dot{\le}~b~$とすると、$m+n'\le m'+n~$なので$~m+n'\lt (m'+n)+1~$である。
よって、$[m,n]~\dot{\lt}~[m'+1,n']~$となるので$~a~\dot{\lt}~b~\dot{+}~\dot{1}~$である。
$(2)~$
$m,n,m',n'\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n],b=[m',n']~$とおく。
$a~\dot{\le}~b~$とすると、$m+n'\le m'+n~$なので$~m+n'\lt(m'+n)+1~$である。
よって、$[m,n+1]~\dot{\lt}~[m',n']~$となるので$~a-\dot{1}~\dot{\lt}~b~$である。
$(3)~$
$m,n,m',n'\in\mathbb{N}~$を用いて$~a=[m,n],b=[m',n']~$とおく。
$a~\dot{\lt}~b~$とすると、$m+n'\lt m'+n~$なので$~(m+n')+1\le m'+n~$である。
よって、$[m+1,n]~\dot{\le}~[m',n']~$となるので$~a~\dot{+}~\dot{1}~\dot{\le}~b~$である。
$(1)~$
$S\subset Z~$を任意の空でない部分集合とする。
$T:=\{a\in Z\mid{}^{\forall}s\in S,a~\dot{\le}~s\}~$とする。
明らかに$~x\in T~$なので$~T\neq\emptyset~$である。
$S~$は空ではないので$~s\in S~$がとれ、
$s~\dot{\lt}~s~\dot{+}~\dot{1}~$となるので$~s~\dot{+}~\dot{1}\notin T~$である。
よって、$T\neq Z~$となる。
$a\in T~$なら$~a-\dot{1}~\dot{\lt}~a~$なので、$a-\dot{1}\in T~$となる。
したがって、定理5より、ある$~t\in Z~$があり$~t\in T~$かつ$~t~\dot{+}~\dot{1}\notin T~$となる。
$t\notin S~$と仮定すると、
\begin{align}
{}^{\forall}s\in S,t~\dot{\lt}~s&\Longrightarrow{}^{\forall}s\in S,t~\dot{+}~\dot{1}~\dot{\le}~s\\
&\Longrightarrow t~\dot{+}~\dot{1}\in T
\end{align}
となり、$t~\dot{+}~\dot{1}\notin T~$に矛盾する。
よって、$t\in S~$となり、この$~t~$が$~S~$の最小元である。
$(2)~$
$S':=\{-s\mid s\in S\}~$とする。
このとき定理14より、${}^{\forall}s\in S',-x~\dot{\lt}~s~$となる。
$-x\in Z~$なので$(1)$より$~S'~$には最小元$~s_0~$がある。
つまり、${}^{\forall}s\in S',s_0~\dot{\le}~s~$を満たす。
よって、$-s_0\in S~$であり$~{}^{\forall}s\in S,s~\dot{\le}-s_0~$となるので、$-s_0~$は$~S~$の最小元である。