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指数関数 (4)実数乗


命題13
$\{a_n\}~$を収束する有理数列とする。
このとき、任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt}~$に対して$~\{r^{a_n}\}~$はCauchy列である。
つまり、$\{r^{a_n}\}~$はある実数に収束する。

まず、$r\gt1~$のときを考える。
$\{a_n\}~$は収束するので有界である。
よって、$M\in\mathbb{Q}_{\gt}~$があり、$|a_n|\lt M~({}^{\forall}n\in\mathbb{N})~$となる。
したがって、$r^{a_n}\lt r^M~({}^{\forall}n\in\mathbb{N})~$となる。

任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
補題10より、ある$~\delta\in\mathbb{R}_{\gt}~$があり、任意の$~q\in\mathbb{Q}~$について、 $$ |q|\lt\delta\Longrightarrow|r^q-1|\lt\frac{\varepsilon}{r^M} $$ となる。
今、$\{a_n\}~$は収束するのでCauchy列である。
よって、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ m,n\gt N\Longrightarrow|a_m-a_n|\lt\delta $$ を満たす。よって、 \begin{split} m,n\gt N&\Longrightarrow|a_m-a_n|\lt\delta\\ &\Longrightarrow|r^{a_m-a_n}-1|\lt\frac{\varepsilon}{r^M} \end{split} が成り立つ。
このとき、 \begin{split} m,n\gt N\Longrightarrow|r^{a_m}-r^{a_n}|&=r^{a_n}|r^{a_m-a_n}-1|\\ &\lt r^M\cdot\frac{\varepsilon}{r^M}=\varepsilon \end{split} となるので、$\{r^{a_n}\}~$はCauchy列である。

$\{a_n\}~$が収束するので、$\{-a_n\}~$も収束する。
$r\lt1$なら、$r^{-1}\gt1~$なので、上の議論より、$\{r^{a_n}\}=\{(r^{-1})^{-a_n}\}~$はCauchy列である。
$r=1~$なら、明らかに$~r^{a_n}\to1~(n\to\infty)~$なので、$\{r^{a_n}\}~$はCauchy列である。
よって、任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt}~$に対して$~\{r^{a_n}\}~$はCauchy列である。
$$\square$$


 $r\in\mathbb{R}_{\gt},x\in\mathbb{R}~$に対して、$x~$に収束する有理数列$~\{a_n\}~$を用いて、 $$ r^x=\lim_{n\to\infty}r^{a_n} $$ と定義する。(これは命題13より正当化される。)
また、$\{a_n\},\{b_n\}~$を$~x~$に収束する有理数列としたとき、命題12より $$ \lim_{n\to\infty}r^{a_n}=\lim_{n\to\infty}r^{b_n} $$ が成り立つ。
つまり、この定義は$~x\in\mathbb{R}~$に対する有理数列の取り方によらず一意的である。
これで、正当に$~x\in\mathbb{R}~$に対する$~r^x~$が定義される。

補題14
$r\in\mathbb{R}_{\gt}~$に対して、$x\lt y~$となる$~x,y\in\mathbb{R}~$に対して次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~r\lt1\Longrightarrow r^x\gt r^y\\ (2)&~r\gt1\Longrightarrow r^x\lt r^y \end{align}

$x\lt y~$より$~x\lt q\lt y~$となる$~q\in\mathbb{Q}~$がある。
$x\lt q~$なので、$x\lt a_0\lt q~$となる$~a_0\in\mathbb{Q}~$がとれる。
すべての$~n\in\mathbb{N}~$に対して、 \begin{align} &x\lt a_{n+1}\lt a_n\\ &a_{n+1}\lt x+\frac{1}{n+1} \end{align} となるように有理数列$~\{a_n\}~$を定める。
この有理数列$~\{a_n\}~$は明らかに$~x~$に収束する。
同様にして、 $$ q\lt b_0\lt\cdots\lt b_n\lt b_{n+1}\lt\cdots\lt y $$ となるような$~y~$に収束する有理数列$~\{b_n\}~$をとる。

$(1)~$ $r\lt1~$なので補題9より、 $$ r^{a_0}\gt r^{q}\gt r^{b_0} $$ となる。
また、すべての$~n\in\mathbb{N}~$について、$a_n\le a_0,b_n\ge b_0~$なので、 \begin{align} &r^{a_n}\ge r^{a_0}\\ &r^{b_n}\le r^{b_0} \end{align} がすべての$~n\in\mathbb{N}~$について成り立つ。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n}=r^x,\lim_{n\to\infty}r^{b_n}=r^y~$なので、 \begin{align} &r^x\ge r^{a_0}\\ &r^y\le r^{b_0} \end{align} となる。 $$ r^x\ge r^{a_0}\gt r^{q}\gt r^{b_0}\ge r^y $$ なので、$r^x\gt r^y~$である。

$(2)~$ $r\gt1~$なので補題9より、 $$ r^{a_0}\lt r^{q}\lt r^{b_0} $$ となる。
また、すべての$~n\in\mathbb{N}~$について、$a_n\le a_0,b_n\ge b_0~$なので、 \begin{align} &r^{a_n}\le r^{a_0}\\ &r^{b_n}\ge r^{b_0} \end{align} がすべての$~n\in\mathbb{N}~$について成り立つ。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n}=r^x,\lim_{n\to\infty}r^{b_n}=r^y~$なので、 \begin{align} &r^x\le r^{a_0}\\ &r^y\ge r^{b_0} \end{align} となる。 $$ r^x\le r^{a_0}\lt r^{q}\lt r^{b_0}\le r^y $$ なので、$r^x\lt r^y~$である。

$$\square$$


定理15
任意の$~r\in\mathbb{R}_\gt,a\in\mathbb{R}~$に対して次が成り立つ。 \[ {}^{\forall}\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt},{}^{\exists}\delta\in\mathbb{R}_{\gt}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}x\in\mathbb{R},|x-a|\lt\delta\Longrightarrow|r^x-r^a|\lt\varepsilon \]

$r\in\mathbb{R}_{\gt}~$を任意にとる。
まず、$a=0~$の場合を示す。
$r=1~$のときは明らかなので、$r\neq1~$とする。
$\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$を任意にとったとき、補題10より、 $$ {}^{\forall}q\in\mathbb{Q},|q|\lt\delta\Longrightarrow|r^q-1|\lt\varepsilon $$ を満たす$~\delta\in\mathbb{R}_{\gt}~$が存在する。
このとき、任意に$~x\in\mathbb{R}~$をとり、$|x|\lt\delta~$とする。
$-\delta\lt x\lt\delta~$なので、$-\delta\lt p\lt x\lt q\lt\delta~$となる$~p,q\in\mathbb{Q}~$がとれる。
$|p|,|q|\lt\delta~$なので、 \begin{align} &1-\varepsilon\lt r^p\lt1+\varepsilon\\ &1-\varepsilon\lt r^q\lt1+\varepsilon \end{align} が成り立っている。
$r\lt1~$なら、$p\lt x\lt q~$なので$~r^p\gt r^x\gt r^q~$である。
$r\gt1~$なら、$p\lt x\lt q~$なので$~r^p\lt r^x\lt r^q~$である。
よって、$1-\varepsilon\lt r^x\lt1+\varepsilon~$となる。

$a\in\mathbb{R},\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$を任意にとる。
$|r^a|\gt0~$なので、$\delta\in\mathbb{R}_{\gt}~$があり、 $$ |x-a|\lt\delta\Longrightarrow|r^{x-a}-1|\lt\frac{\varepsilon}{|r^a|} $$ となる。
このとき、 \begin{align} |x-a|\lt\delta\Longrightarrow|r^x-r^a|&=|r^a||r^{x-a}-1|\\ &\lt|r^a|\cdot\frac{\varepsilon}{|r^a|}=\varepsilon \end{align} が成り立つ。
$$\square$$


補題16
$r\in\mathbb{R}_\gt,a\in\mathbb{R}~$とし、$\{x_n\}_{n\in\mathbb{N}}~$を$~a~$に収束する任意の実数列とする。
このとき、数列$~\{r^{x_n}\}_{n\in\mathbb{N}}~$は$~r^a~$に収束する。

$\varepsilon\in\mathbb{R}_\gt~$を任意にとる。
このとき、定理15より \[ {}^{\forall}x\in\mathbb{R},|x-a|\lt\delta\Longrightarrow|r^x-r^a|\lt\varepsilon \] となる$~\delta\in\mathbb{R}_\gt~$がとれる。
$\{x_n\}~$は$~a~$に収束するので \[ n\ge N\Longrightarrow|x_n-a|\lt\delta \] を満たす$~N\in\mathbb{N}~$が存在する。
よって、このとき \[ n\ge N\Longrightarrow|x_n-a|\lt\delta \Longrightarrow|r^{x_n}-r^a|\lt\varepsilon \] が成り立つ。
$$\square$$


補題17
$\{a_n\}~$を$~x\in\mathbb{R}~$に収束する有理数列とする。
このとき、任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt},q\in\mathbb{Q}~$に対して、次が成り立つ。 $$ \lim_{n\to\infty}(r^{a_n})^q=(r^x)^q $$

まず、$q\gt0~$の場合を考える。
任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
$\varepsilon\lt(r^x)^q~$のときを示せば十分である。
$\delta_1=((r^x)^q+\varepsilon)^{q^{-1}},\delta_2=((r^x)^q-\varepsilon)^{q^{-1}}~$とおく。
$\varepsilon\gt0~$なので、 $$ (r^x)^q-\varepsilon\lt (r^x)^q\lt(r^x)^q+\varepsilon $$ となり、$\delta_2\lt r^x\lt\delta_1~$である。
よって、$\delta_1-r^x,r^x-\delta_2\gt0~$となる。
$\eta=\min{\{\delta_1-r^x,r^x-\delta_2\}}~$とすると、$\eta\gt0~$である。
$r^{a_n}\to r^x~(n\to\infty)~$なので、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ n\gt N\Longrightarrow|r^{a_n}-r^x|\lt\eta $$ とできる。このとき、 \begin{split} n\gt N&\Longrightarrow|r^{a_n}-r^x|\lt\eta\\ &\Longrightarrow r^x-\eta\lt r^{a_n}\lt r^x+\eta\\ &\Longrightarrow\delta_2\lt r^{a_n}\lt \delta_1\\ &\Longrightarrow(r^x)^q-\varepsilon\lt (r^{a_n})^q\lt(r^x)^q+\varepsilon\\ &\Longrightarrow|(r^{a_n})^q-(r^x)^q|\lt\varepsilon \end{split} が成り立つ。

$\{a_n\}~$が$~x~$に収束するので、$~\{-a_n\}~$は$-x~$に収束する。
また、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n}=r^x~$なので、 $$ \lim_{n\to\infty}r^{-a_n}=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{r^{a_n}}=\frac{1}{r^x}\\ \lim_{n\to\infty}r^{-a_n}=r^{-x} $$ となるので、$\cfrac{1}{r^x}=r^{-x}~$である。
$q\lt0~$なら$-q\gt0~$なので、上の議論と同様にして、 \begin{split} \lim_{n\to\infty}(r^{a_n})^q&=\lim_{n\to\infty}(r^{-a_n})^{-q}\\ &=(r^{-x})^{-q}\\ &=\left(\frac{1}{r^x}\right)^{(-1)\cdot q}\\ &=(r^x)^q \end{split} となる。
また、$q=0~$なら$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}(r^{a_n})^0=1=(r^x)^0~$である。
したがって、すべての$~q\in\mathbb{Q}~$について、$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}(r^{a_n})^q=(r^x)^q~$となる。
$$\square$$


定理18
任意の$~r,s\in\mathbb{R}_{\gt},x,y\in\mathbb{R}~$に対して、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~r^x\cdot r^y=r^{x+y}\\ (2)&~(r^x)^y=r^{x\cdot y}\\ (3)&~(r\cdot s)^x=r^x\cdot s^x \end{align}

$\{a_n\},\{b_n\}~$をそれぞれ$~x,y~$に収束する有理数列とする。

$(1)~$ 定義と定理8より、 \begin{split} r^x\cdot r^y&=\lim_{n\to\infty}r^{a_n}\cdot\lim_{n\to\infty}r^{b_n}\\ &=\lim_{n\to\infty}(r^{a_n}\cdot r^{b_n})\\ &=\lim_{n\to\infty}r^{a_n+b_n}\\ &=r^{x+y} \end{split} となる。

$(2)~$ 各$~n\in\mathbb{N}~$に対する$~\{(r^{a_m})^{b_n}\}_{m\in\mathbb{N}}~$という数列を考える。
補題17より \begin{align} \lim_{n\to\infty}\left(\lim_{m\to\infty}(r^{a_m})^{b_n}\right)&=\lim_{n\to\infty}(r^x)^{b_n}\\ &=(r^x)^y \end{align} とできる。 また、補題16によって \begin{align} \lim_{n\to\infty}\left(\lim_{m\to\infty}(r^{a_m})^{b_n}\right)&=\lim_{n\to\infty}\left(\lim_{m\to\infty}r^{a_m\cdot b_n}\right)\\ &=\lim_{n\to\infty}r^{x\cdot b_n}\\ &=r^{x\cdot y} \end{align} とできるので、$(r^x)^y=r^{x\cdot y}~$である。

$(3)~$ 定義と定理8より、 \begin{split} (r\cdot s)^x&=\lim_{n\to\infty}(r\cdot s)^{a_n}\\ &=\lim_{n\to\infty}(r^{a_n}\cdot s^{a_n})\\ &=\lim_{n\to\infty}r^{a_n}\cdot\lim_{n\to\infty}s^{a_n}\\ &=r^x\cdot s^x \end{split} となる。

$$\square$$