title

指数関数 (3)有理数乗と数列


補題9
$r\in\mathbb{R}_{\gt}~$に対して、$p\lt q~$となる$~p,q\in\mathbb{Q}~$に対して次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~r\lt1\Longrightarrow r^p\gt r^q\\ (2)&~r\gt1\Longrightarrow r^p\lt r^q \end{align}

$m,m'\in\mathbb{Z},n,n'\in\mathbb{Z}^*~$を用いて$~p=\cfrac{m}{n},q=\cfrac{m'}{n'}~$とおく。
特に$~n,n'\gt0~$としても問題はない。
このとき、$p\lt q~$より$~mn'\lt m'n~$であり、$mn'+k=m'n~$となる$~k\in\mathbb{Z}_{\gt}~$がある。

$(1)~$ $r\lt1~$より$~1\gt r^k~$である。
よって、 $$ r^{mn'}\gt r^{mn'}\cdot r^k=r^{mn'+k}=r^{m'n} $$ となる。 $$ (r^p)^{nn'}=r^{mn'}\gt r^{m'n}=(r^q)^{nn'} $$ なので、補題5より$~r^p\gt r^q~$となる。

$(2)~$ $r\gt1~$より$~1\lt r^k~$である。
よって、 $$ r^{mn'}\lt r^{mn'}\cdot r^k=r^{mn'+k}=r^{m'n} $$ となる。 $$ (r^p)^{nn'}=r^{mn'}\lt r^{m'n}=(r^q)^{nn'} $$ なので、補題5より$~r^p\lt r^q~$となる。

$$\square$$


補題10
$r\gt1~$となる任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt}~$について次が成り立つ。
$$ {}^{\forall}\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt},{}^{\exists}\delta\in\mathbb{R}_{\gt}~\mathrm{s.t.}~{}^{\forall}q\in\mathbb{Q},|q|\lt\delta\Longrightarrow|r^q-1|\lt\varepsilon $$

任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
特に$~\varepsilon\lt1~$のときさえ示せれば十分である。
このとき、$|(1+\varepsilon)^{-1}|\lt1~$であり$~r^{-1}\gt0~$なので、定理4$(1)$より $$ (1+\varepsilon)^{-n}\lt r^{-1} $$ となる$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$が存在する。
よって、$\displaystyle r^{\frac{1}{n}}\lt1+\varepsilon~$となる$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$がとれる。
また、$|1-\varepsilon|\lt1~$であり$~r^{-1}\gt0~$なので、定理4$(1)$より $$ (1-\varepsilon)^{n'}\lt r^{-1} $$ となる$~n'\in\mathbb{Z}_{\gt}~$が存在する。
よって、$\displaystyle1-\varepsilon\lt r^{-\frac{1}{n'}}~$となる$~n'\in\mathbb{Z}_{\gt}~$がとれる。
$-\cfrac{1}{n'}\lt q\lt\cfrac{1}{n}~$なら、$r\gt1~$なので補題9より $$ 1-\varepsilon\lt r^{-\frac{1}{n'}}\lt r^q\lt r^{\frac{1}{n}}\lt1+\varepsilon $$ となる。
よって、$\displaystyle\delta=\frac{1}{\max{\{n,n'\}}}\gt0~$とすれば、 \begin{split} |q|\lt\delta&\Longrightarrow-\frac{1}{n'}\le-\delta\lt q\lt\delta\le\frac{1}{n}\\ &\Longrightarrow1-\varepsilon\lt r^q\lt1+\varepsilon\\ &\Longrightarrow|r^q-1|\lt\varepsilon \end{split} が成り立つ。
$$\square$$


補題11
$0~$に収束する有理数列$~\{a_n\}~$を任意にとる。
このとき、$r\gt1~$となる任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt}~$について次が成り立つ。 $$ \lim_{n\to\infty}r^{a_n}=1 $$

任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
補題10より、ある$~\delta\in\mathbb{R}_{\gt}~$があり、任意の$~q\in\mathbb{Q}~$について、 $$ |q|\lt\delta\Longrightarrow|r^q-1|\lt\varepsilon $$ となる。
今、$\{a_n\}~$は$~0~$に収束するので、ある$~N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ n\gt N\Longrightarrow|a_n|\lt\delta $$ を満たす。よって、 \begin{split} n\gt N&\Longrightarrow|a_n|\lt\delta\\ &\Longrightarrow|r^{a_n}-1|\lt\varepsilon \end{split} が成り立つ。したがって、 $$ \lim_{n\to\infty}r^{a_n}=1 $$ となる。
$$\square$$


命題12
任意の$~x\in\mathbb{R}~$に対して、$x~$に収束する有理数列$~\{a_n\},\{b_n\}~$を任意にとる。
このとき、任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt}~$について次が成り立つ。 $$ \lim_{n\to\infty}r^{a_n}=\lim_{n\to\infty}r^{b_n} $$

まず、$r\gt1~$と場合を示す。
$\{a_n\},\{b_n\}~$はどちらも$~x~$に収束するので、 $$ \lim_{n\to\infty}(a_n-b_n)=x-x=0 $$ となる。
$r\gt1~$なので、補題11より$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n-b_n}=1~$である。

$\{b_n\}~$は収束するので有界である。
つまり、ある$~M\in\mathbb{Q}~$があり、${}^{\forall}n\in\mathbb{N},b_n\lt M~$となる。
$r\gt1~$なので、$r^{b_n}\lt r^M~({}^{\forall}n\in\mathbb{N})~$となる。

任意に$~\varepsilon\in\mathbb{R}_{\gt}~$をとる。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n-b_n}=1~$より、$N\in\mathbb{N}~$があり、 $$ n\gt N\Longrightarrow\left|r^{a_n-b_n}-1\right|\lt\frac{\varepsilon}{r^M} $$ となる。よってこのとき、 \begin{split} n\gt N\Longrightarrow\left|r^{a_n}-r^{b_n}\right|&=r^{b_n}\left|r^{a_n-b_n}-1\right|\\ &\lt r^M\cdot\frac{\varepsilon}{r^M}=\varepsilon \end{split} が成り立つ。
したがって、$\{r^{a_n}-r^{b_n}\}~$は$~0~$に収束するので、 $$ \lim_{n\to\infty}r^{a_n}=\lim_{n\to\infty}r^{b_n} $$ である。

$r=1~$のときは、明らかに$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n}=\lim_{n\to\infty}r^{b_n}=1~$となる。
$r\lt1~$のときは、$r^{-1}\gt1~$であり$~-(a_n-b_n)\to0~(n\to\infty)~$なので、同様にして \begin{align} \lim_{n\to\infty}\left(r^{a_n}-r^{b_n}\right)&=\lim_{n\to\infty}\left((r^{-1})^{-a_n}-(r^{-1})^{-b_n}\right)\\ &=0 \end{align} が示せるので、$~\displaystyle\lim_{n\to\infty}r^{a_n}=\lim_{n\to\infty}r^{b_n}~$となる。
$$\square$$

(1)整数乗
(2)有理数乗
(3)有理数乗と数列