指数関数 (2)有理数乗
$r^1=r\lt s=s^1~$より、$n=1~$のとき成り立つ。
$n=k~$のとき$~r^k\lt s^k~$が成り立つと仮定する。
このとき、 $$ r^{k+1}=r\cdot r^k\lt s\cdot r^k\lt s\cdot s^k=s^{k+1} $$ より、$r^{k+1}\lt s^{k+1}~$が成り立つ。
よって、$n=k+1~$のときも成り立つので、$r^n\lt s^n~({}^{\forall}n\in\mathbb{Z}_{\gt})~$となる。
$r\lt s\Rightarrow r^n\lt s^n~$が示せたので、対偶より$~r^n\ge s^n\Rightarrow r\ge s~$が成り立つ。
また、$r^n\neq s^n\Rightarrow r\neq s~$なので$~r^n\gt s^n\Rightarrow r\gt s~$となる。
これより、$r^n=x~$となる$~r\in\mathbb{R}_{\gt}~$の一意性がわかる。
$A=\{r\in\mathbb{R}_{\gt}\mid r^n\lt x\}~$と定める。
明らかに$~0\in A~$なので、$A~$は空ではない。
$x\lt x+1\lt(x+1)^n~$なので、${}^{\forall}r\in A,r\lt x+1~$が成り立ち$~A~$は上に有界である。
よって、実数の連続性より、$A~$には上界$~\alpha=\sup{A}~$が存在する。
このとき、実数論.命題9より$~\alpha~$に収束する$~A~$の元の列$~\{a_k\}_{k\in\mathbb{N}}~$がとれる。
${a_k}^n\lt x~({}^{\forall}k\in\mathbb{N})~$かつ$~\displaystyle\lim_{k\to\infty}{a_k}^n=\alpha^n~$が成り立つので、$\alpha^n\le x~$となる。
また、$\alpha=\sup{A}~$より、すべての$~k\in\mathbb{N}~$について$~b_k=\alpha+\cfrac{1}{k+1}\notin A~$である。
よって、${b_k}^n\ge x~({}^{\forall}k\in\mathbb{N})~$である。
さらに、$\{b_k\}~$は$~\alpha~$に収束するので、$\{{b_k}^n\}~$は$~\alpha^n~$に収束する。
したがって、$\alpha^n\ge x~$となる。
$\alpha^n\le x~$かつ$~\alpha^n\ge x~$なので、$\alpha^n=x~$である。
$n=k~$のとき$~r^k\gt0~$と仮定する。
このとき、 \begin{align} &r^{k+1}=r^k\cdot r\\ &r^{k-1}=r^k\cdot\frac{1}{r} \end{align} となり、$r^k,r,\cfrac{1}{r}~$はすべて正なので、$r^{k+1},r^{k-1}\gt0~$である。
よって、$n=k+1,k-1~$のときも成り立つので、任意の$~n\in\mathbb{Z}~$について$~r^n\gt0~$となる。
$r\in\mathbb{R}_{\gt},m\in\mathbb{Z}~$に対して、補題7より$~r^m\gt0~$である。
よって、命題6より$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$について \[ s^n=r^m \] となる$~s\in\mathbb{R}_{\gt}~$がただ1つ存在する。
この$~s\in\mathbb{R}_{\gt}~$を$~r^{\frac{m}{n}}~$と定義する。
$n\lt0~$のときは、$s^{-n}=r^{-m}\gt0~$として$~s=r^{\frac{-m}{-n}}=r^{\frac{m}{n}}~$を考える。
また、$\cfrac{m}{n}=\cfrac{m'}{n'}~(m,m'\in\mathbb{Z},n,n'\in\mathbb{Z}^*)~$とすると、 \[ \left(r^{\frac{m}{n}}\right)^{nn'}=r^{mn'}=r^{m'n}=\left(r^{\frac{m'}{n'}}\right)^{nn'} \] となるので、$r^{\frac{m}{n}}=r^{\frac{m'}{n'}}~$となる。
よって、この定義は$~q\in\mathbb{Q}~$に対する分母分子の取り方によらず一意である。
これで、正当に$~q\in\mathbb{Q}~$に対する$~r^q~$が定義される。
定義から明らかに、任意の$~r\in\mathbb{R}_{\gt},q\in\mathbb{Q}~$に対して、$r^q\gt0~$である。
$(1)~$ 定義と定理3より、 \begin{split} \left(r^{\frac{m}{n}}\cdot r^{\frac{m'}{n'}}\right)^{nn'}&=\left(r^{\frac{m}{n}}\right)^{nn'}\cdot\left(r^{\frac{m'}{n'}}\right)^{nn'}\\ &=r^{mn'}\cdot r^{m'n}\\ &=r^{mn'+m'n} \end{split} となるので、 $$ r^{\frac{m}{n}}\cdot r^{\frac{m'}{n'}}=r^{\frac{mn'+m'n}{nn'}}=r^{\frac{m}{n}+\frac{m'}{n'}} $$ となる。
$(2)~$ 定義と定理3より、 \begin{split} \left(\left(r^{\frac{m}{n}}\right)^{\frac{m'}{n'}}\right)^{nn'}&=\left(r^{\frac{m}{n}}\right)^{m'n}\\ &=r^{mm'}\\ \end{split} となるので、 $$ \left(r^{\frac{m}{n}}\right)^{\frac{m'}{n'}}=r^{\frac{mm'}{nn'}}=r^{\frac{m}{n}\cdot\frac{m'}{n'}} $$ となる。
$(3)~$ 定義と定理3より、 \begin{split} \left(r^{\frac{m'}{n'}}\cdot s^{\frac{m'}{n'}}\right)^{n'}&=\left(r^{\frac{m'}{n'}}\right)^{n'}\cdot\left(s^{\frac{m'}{n'}}\right)^{n'}\\ &=r^{m'}\cdot s^{m'}\\ &=(r\cdot s)^{m'} \end{split} となるので、 $$ r^{\frac{m'}{n'}}\cdot s^{\frac{m'}{n'}}=(r\cdot s)^{\frac{m'}{n'}} $$ となる。