初等整数論 (6)既約剰余類群
$m\in\mathbb{Z}~$に対して、乗法群$~(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}~$を$~m~$を法とした既約剰余類群という。
命題18
$m\in\mathbb{Z}~$に対して、次が成り立つ。
\[
(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} = \left\{\overline{a}\in\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\mid a\perp m\right\}
\]
任意の$~a\in\mathbb{Z}~$に対して
\begin{align}
\overline{a}\in(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} ~
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~\overline{a}\overline{b}=\overline{1}\\
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~\overline{ab}=\overline{1}\\
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~ab\equiv1\mod{m}\\
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~ab-1\in m\mathbb{Z}\\
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b,q\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~ab-1=mq\\
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b,q\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~ab-mq=1\\
&\Longleftrightarrow~ {}^{\exists}b,q'\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~ab+mq'=1\\
&\Longleftrightarrow~ a\perp m
\end{align}
となるので、$(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} = \left\{\overline{a}\in\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\mid a\perp m\right\}~$である。
$$\square$$
つまり、$m\gt0~$なら既約剰余類群$~(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}~$の位数は「$~0~$以上$~m~$未満の$~m~$と互いに素な整数の個数」と一致する。
補題19
環$~A,B~$に対して、$A\simeq B~$なら$~A^{\times}\simeq B^{\times}~$である。
$A\simeq B~$より、環同型$~f:A\to B~$が存在する。
$a\in A^{\times}~$とすれば、$ax=xa=1~$となる$~x\in A~$がある。
このとき、 \[ f(a)f(x) = f(ax) = f(1) = 1 \] \[ f(x)f(a) = f(xa) = f(1) = 1 \] となるので、$f(a)\in B^{\times}~$である。
よって、$f:A^{\times}\to B^{\times}~$とみることができる。
また、$f:A^{\times}\to B^{\times}~$は明らかに群準同型である。
さらに、逆写像$~f^{-1}:B\to A~$についても同様に、群準同型$~f^{-1}:B^{\times}\to A^{\times}~$とみることができる。
これらは互いに逆写像となっているので、$f:A^{\times}\to B^{\times}~$は群同型である。
$$\square$$
$a\in A^{\times}~$とすれば、$ax=xa=1~$となる$~x\in A~$がある。
このとき、 \[ f(a)f(x) = f(ax) = f(1) = 1 \] \[ f(x)f(a) = f(xa) = f(1) = 1 \] となるので、$f(a)\in B^{\times}~$である。
よって、$f:A^{\times}\to B^{\times}~$とみることができる。
また、$f:A^{\times}\to B^{\times}~$は明らかに群準同型である。
さらに、逆写像$~f^{-1}:B\to A~$についても同様に、群準同型$~f^{-1}:B^{\times}\to A^{\times}~$とみることができる。
これらは互いに逆写像となっているので、$f:A^{\times}\to B^{\times}~$は群同型である。
定理20
$m_1,\dots,m_n\in\mathbb{Z}~$をどの2つも互いに素な整数とし、$m=m_1\cdots m_n~$とおく。このとき、次が成り立つ。 \[ (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} \simeq (\mathbb{Z}/m_1\mathbb{Z})^{\times}\times\cdots\times(\mathbb{Z}/m_n\mathbb{Z})^{\times} \]
$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z} \simeq (\mathbb{Z}/m_1\mathbb{Z})\times\cdots\times(\mathbb{Z}/m_n\mathbb{Z})~$と補題19より$~(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} \simeq (\mathbb{Z}/m_1\mathbb{Z})^{\times}\times\cdots\times(\mathbb{Z}/m_n\mathbb{Z})^{\times}~$である。
$$\square$$