初等整数論 (5)合同式と剰余環
$A~$を可換環、$\mathfrak{a}~$を$~A~$のイデアルとする。
$a,b\in A~$に対して、$a-b\in\mathfrak{a}~$となるとき、$a,b~$は$~\mathfrak{a}~$を法として合同であるといい、$a\equiv b\mod{\mathfrak{a}}~$と書く。
$\mathfrak{a}~$を法として合同であるとは、剰余環$~A/\mathfrak{a}~$において$~a~$と$~b~$の剰余類が等しいことを意味する。
\[ a\equiv b\mod{\mathfrak{a}} ~\Longleftrightarrow~ a+\mathfrak{a}=b+\mathfrak{a} \] $A=\mathbb{Z}~$のときは、すべてのイデアルは単項イデアル$~(m)~$なので、$(m)~$を法として合同であることを$~m~$を法として合同であるといい、$a\equiv b\mod{m}~$と書く。
$a\in\mathbb{Z}~$の$~(m)=m\mathbb{Z}~$による剰余類$~a+m\mathbb{Z}~$は$~[a]_m~$とも書く。
特に、$m~$が明白であるときは単に$~\overline{a}~$と書く。
$(1)\Rightarrow(2)$
$a,b~$を$~m~$で割った商と剰余をそれぞれ$~q,r,q',r'\in\mathbb{Z}~$とする。
つまり、$0\le r,r'\lt|m|~$であり$~a=qm+r,b=q'm+r'~$となるする。
このとき、$m\mid(a-b)~$なので、$m\mid((q-q')m+(r-r'))~$となる。
明らかに$~m\mid(q-q')m~$なので$~m\mid(r-r')~$である。
よって、$r-r'=q''m~$とする$~q''\in\mathbb{Z}~$が存在する。
$r\neq r'~$と仮定すると(特に$~r\gt r'~$としても良い)、$r-r'\neq0~$なので$~q''\neq0~$である。
したがって、$|q''|\le1~$なので、$|r-r'|=|q''m|\ge|m|~$となる。
よって、$r\ge r-r'=|r-r'|\ge|m|~$となり、これは矛盾である。
以上より$~r=r'~$となる。
$(1)\Leftarrow(2)$
$a,b~$を$~m~$で割った商と剰余をそれぞれ$~q,r,q',r'\in\mathbb{Z}~$とする。
つまり、$0\le r,r'\lt|m|~$であり$~a=qm+r,b=q'm+r'~$となるする。
$r=r'~$とすると、$a-b=(q-q')m+(r-r')=(q-q')m~$となる。
明らかに$~m\mid(q-q')m~$なので$~m\mid(a-b)~$である。
よって、$|\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}|=m~$となる。
$\mathbb{Z}~$はPIDなので、$p\mathbb{Z}~$は極大イデアルとなる。
よって、極大イデアル$~p\mathbb{Z}~$による剰余環$~\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}~$は体である。
このとき、次が成り立つ。 \[ \mathbb{Z}/m\mathbb{Z} \simeq (\mathbb{Z}/m_1\mathbb{Z})\times\cdots\times(\mathbb{Z}/m_n\mathbb{Z}) \]
環論.定理25より、$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z} \simeq (\mathbb{Z}/m_1\mathbb{Z})\times\cdots\times(\mathbb{Z}/m_n\mathbb{Z})~$となる。