初等整数論 (4)互いに素
$A~$を可換環、$I_1,\dots,I_n~$を$~A~$のイデアルとする。
$I_1+\cdots+I_n=A~$となるとき、$I_1,\dots,I_n~$は互いに素であるという。
$m_1,\dots,m_n\in\mathbb{Z}~$に対して、$m_1\mathbb{Z},\dots,m_n\mathbb{Z}~$が互いに素であるとき、$m_1,\dots,m_n~$は互いに素であるという。
また、$m,n\in\mathbb{Z}~$が互いに素であることを記号で$~m\perp n~$と表す。
命題11
任意の$~m_1,\dots,m_n\in\mathbb{Z}~$に対して、$m_1=\cdots=m_n=0~$でないとき次は同値である。
\begin{align}
(1)&~m_1,\dots,m_nは互いに素\\
(2)&~\mathrm{gcd}(m_1,\dots,m_n)=1\\
(3)&~{}^{\exists}x_1,\dots,x_n\in\mathbb{Z}~\mathrm{s.t.}~m_1x_1+\cdots+m_nx_n=1
\end{align}
$(1)\Rightarrow(3)$
$1\in\mathbb{Z}=m_1\mathbb{Z}+\cdots+m_n\mathbb{Z}~$より、$m_1x_1+\cdots+m_nx_n=1~$となる$~x_1\dots,x_n\in\mathbb{Z}~$がある。
$(3)\Rightarrow(2)$
定理10より、$\mathrm{gcd}(m_1,\dots,m_n)\mid1~$となる。
よって、$\mathrm{gcd}(m_1,\dots,m_n)~$は正の単元なので$~\mathrm{gcd}(m_1,\dots,m_n)=1~$となる。
$(2)\Rightarrow(1)$
$\mathrm{gcd}(m_1,\dots,m_n)=1~$より$~m_1\mathbb{Z}+\cdots+m_n\mathbb{Z}=1\mathbb{Z}=\mathbb{Z}~$である。
命題12
$p,q\in\mathbb{Z}~$を相異なる素数とする。このとき、$p,q~$は互いに素である。
$d\in\mathbb{Z}~$を$~p,q~$の正の公約数とする。
$d\mid p~$と$~p~$が既約元であることから、$d\sim1~$または$~d\sim p~$である。
$d\sim p~$であると仮定して矛盾を導く。
$d\sim p~$より$~p\mid d~$であり、これと$~d\mid q~$より$~p\mid q~$である。
$q~$は既約元なので$~p\sim1~$または$~p\sim q~$となる。
$p~$は素数なので、$p\sim1~$とはならない。
したがって、$p\sim q~$となるが、$p,q~$はどちらも正なので$~p=q~$となる。
しかし、これは仮定に矛盾する。
よって、$d\sim1~$であり、$d~$は正なので$~d=1~$となる。
$$\square$$
$d\mid p~$と$~p~$が既約元であることから、$d\sim1~$または$~d\sim p~$である。
$d\sim p~$であると仮定して矛盾を導く。
$d\sim p~$より$~p\mid d~$であり、これと$~d\mid q~$より$~p\mid q~$である。
$q~$は既約元なので$~p\sim1~$または$~p\sim q~$となる。
$p~$は素数なので、$p\sim1~$とはならない。
したがって、$p\sim q~$となるが、$p,q~$はどちらも正なので$~p=q~$となる。
しかし、これは仮定に矛盾する。
よって、$d\sim1~$であり、$d~$は正なので$~d=1~$となる。
補題13
$a\in\mathbb{Z}~$とし、$p~$を素数とする。このとき、任意の正整数$~n~$に対して、$p\mid a^n~$なら$~p\mid a~$が成り立つ。。
$p\mid p^1~$なら$~p\mid a~$は明らかである。
任意に$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$をとり、$p\mid a^n~$なら$~p\mid a~$が成り立つと仮定する。
$p\mid a^{n+1}~$とする。
$p~$は素元なので$~p\mid a~$または$~p\mid a^n~$が成り立つ。
$p\mid a~$のときは明らかである。
$p\mid a^n~$のときは仮定から$~p\mid a~$となる。
$$\square$$
任意に$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$をとり、$p\mid a^n~$なら$~p\mid a~$が成り立つと仮定する。
$p\mid a^{n+1}~$とする。
$p~$は素元なので$~p\mid a~$または$~p\mid a^n~$が成り立つ。
$p\mid a~$のときは明らかである。
$p\mid a^n~$のときは仮定から$~p\mid a~$となる。
命題14
$a,b\in\mathbb{Z}~$を互いに素な整数とする。このとき、任意の正整数$~m,n~$に対して$~a^m\perp b^n~$となる。
$d~$を$~a^m,b^n~$の正の公約数とする。
$d\neq1~$であると仮定して矛盾を導く。
$d\gt1~$より$~d~$を割り切る素数$~p~$がある。
このとき、$p~$は$~a^m,b^n~$の公約数である。
$p\mid a^n,p\mid b^m~$と補題13より$~p\mid a,p\mid b~$である。
したがって、$p~$は$~a,b~$の公約数となる。
しかし、これは$~a,b~$が互いに素であることに矛盾する。
$$\square$$
$d\neq1~$であると仮定して矛盾を導く。
$d\gt1~$より$~d~$を割り切る素数$~p~$がある。
このとき、$p~$は$~a^m,b^n~$の公約数である。
$p\mid a^n,p\mid b^m~$と補題13より$~p\mid a,p\mid b~$である。
したがって、$p~$は$~a,b~$の公約数となる。
しかし、これは$~a,b~$が互いに素であることに矛盾する。