title

初等整数論 (2)素数


 $\mathbb{Z}~$において、正の($0~$より大きい)既約元を素数という。
また、素数でない$~1~$より大きい整数を合成数という。

命題4
$\mathbb{Z}~$のすべての素元は、素数$~p~$を用いて$~p~$または$~-p~$で表される。

素元$~q\in\mathbb{Z}~$を任意にとる。
系3(3)より$~q~$は既約元である。
$q~$が正なら$~q~$自身が素数である。
$q~$は正でないとする。
このとき、$-q~$は正であり、素数となる。
よって、$q=-(-q)~$と表される。
$$\square$$


命題5
$\mathfrak{p}~$を$~\mathbb{Z}~$の$(0)$でない素イデアルとする。
このとき、$\mathfrak{p}=(p)~(=p\mathbb{Z})~$となる素数$~p~$がただ1つ存在する。

$\mathbb{Z}~$はPIDなので、$\mathfrak{p}=(q)~$となる$~q\in\mathbb{Z}~$が存在する。
$\mathfrak{p}~$は$(0)$でない素イデアルなので$~q~$は素元である。
命題4より、素数$~p~$があり$~q=p~$または$~q=-p~$となる。
$q=p~$のときは明らかである。
$q=-p~$のときは、$q\sim p~$より$~(p)=(q)=\mathfrak{p}~$となる。

また、2つの素数$~p,q~$に対して$~(p)=(q)~$となっているとする。
$p\sim q~$なので$~p=q~$または$~p=-q~$となる。
$p,q~$はどちらも正なので$~p=q~$である。
$$\square$$


定理6
$n~$を$~1~$より大きい整数とする。
このとき、$n~$は有限個の素数の積として表すことができる。
さらに、その表し方は積の順序を除いて一意である。

$n\in\mathbb{Z}~$を任意にとり、$1\lt n~$とする。
$\mathbb{Z}~$はUFDであるので、有限個の素元$~p_1,\dots,p_k~$があり \[ n=p_1\cdots p_k \] と(同伴と積の順序を除いて)一意的に表すことができる。
各$~i=1,\dots,k~$について、$|p_i|~$は正の素元である。
$n\gt0~$なので、$p'_i=|p_i|~$とすれば \[ n=p'_1\cdots p'_k \] と素数の積に表せられる。
また、これは積の順序を除いて一意的である。
$$\square$$

$1~$より大きい整数$~n~$を素数の積で表すことを素因数分解という。
また、$n~$の約数となる素数を$~n~$の素因数という。
特に、同じ素因数を指数でまとめることで、どの2つも相異なる素数$~p_1,\dots,p_k~$を用いて \[ n = {p_1}^{e_1}\cdots{p_k}^{e_k} \] と表すことができる。
$n\lt0~$のときは \[ n = -{p_1}^{e_1}\cdots{p_k}^{e_k} \] とすることで同様に素数の積に分解できる。

定理7
素数は無数に存在する。

$p_1,\dots,p_n~$を素数とする。
このとき、 $$ a=p_1\cdots p_n+1 $$ という数を考える。
定理6より、$a~$を割り切る素数$~p~$がとれる。
しかし、$p_1,\dots,p_n~$はどれも$~a~$を割り切らない。
よって、$p~$は$~p_1,\dots,p_n~$と異なる新たな素数である。
ここで、新たな素数$~p~$を加えて、$p_1,\dots,p_n,p~$を素数とすることで、同様の議論により新たな素数$~p'~$が作れる。
これを繰り返すことで素数を無数に作ることができる。
よって、素数は無数に存在する。
$$\square$$

(1)整数環
(2)素数