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体論 (3)代数的拡大


 $K,L~$を体、$L/K~$を体の拡大とする。
$x\in L~$がある$~f(X)\in K[X]\setminus\{0\}~$の根となっているとき、$x~$は$~K$上代数的であるという。
そうでないとき、$x~$は$~K$上超越的であるという。
また、$L~$のすべての元が$~K$上代数的であるとき、$L/K~$は代数的拡大であるという。
そうでないとき、$L/K~$は超越的拡大であるという。

補題6
$L/K~$を体の拡大、$x\in L\setminus\{0\}~$とする。
このとき、$x~$が$~K$上代数的であることと、$\{1,x,\dots,x^n\}~$が$~K$上線形従属となる$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$が存在することは同値である。

$x~$は$~K$上代数的であるとする。
このとき、$f(x)=0~$となる$~f(X)\in K[X]\setminus\{0\}~$が存在する。
$a_0,\dots,a_n\in K,a_n\neq0~$を用いて \[ f(X) = a_0+\dots+a_nX^n \] と表すことができる。
$n=0~$なら$~f(x)=a_0\neq0~$なのでこれは矛盾である。
よって、$n\gt0~$である。
$a_n\neq0~$なので、$\{1,\dots,x^n\}~$は線形従属である。

$\{1,\dots,x^n\}~$が線形従属となる$~n\in\mathbb{Z}_{\gt}~$が存在するとする。
このとき、 \[ a_0+\cdots+a_nx^n = 0 ~かつ~ \lnot(a_0=\cdots=a_n=0) \] となる$~a_0,\dots,a_n\in K~$がある。
$f(X)=a_0+\cdots+a_nX^n~$とすれば$~f(X)\in K[X]~$であり、$f(x)=0~$となる。
また、$a_0=\cdots=a_n=0~$でないので$~f(X)=0~$でない。
$$\square$$


命題7
体の拡大$~L/K~$が有限次拡大であるとき、$L/K~$は代数的拡大である。

$L/K~$を体の有限次拡大とし、$n=[L:K]~$とおく。
任意に$~x\in L~$をとり、これが$~K$上代数的であることを示す。
環上の加群.補題31より、$n+1~$個の元からなる$~\{1,x,\dots,x^n\}~$は線形従属である。
よって、$x~$は$~K$上代数的となる。
$$\square$$


定理8
$L/K~$を体の拡大、$\alpha\in L~$とする。
このとき、次はすべて同値である。 \begin{align} (1)~& K(\alpha)/K:有限次拡大\\ (2)~& K(\alpha)/K:代数的拡大\\ (3)~& \alpha:K上代数的 \end{align}

$(1)\Rightarrow(2)$は命題7で示した。
$(2)\Rightarrow(3)$は$~\alpha\in K(\alpha)~$と定義から明らか。
あとは$(3)\Rightarrow(1)$を示す。
$\alpha~$が$~K$上代数的とする。
$\alpha=0~$なら$~K(\alpha)=K~$となるので$~[K(\alpha):K]=1~$である。
$\alpha\neq0~$とする。
\[ a_0+\cdots+a_n\alpha^n=0 ~かつ~ \lnot(a_0=\cdots=a_n=0) \] となる$~a_0,\dots,a_n\in K~$がある。
また、うまくとれば$~a_n\neq0~$とできる。
$\beta=(a_0\alpha^n)^{-1}~$とおけば、任意の$~x\in K(\alpha)~$に対して \begin{align} x &= x\cdot1\\ &= x\beta(a_n\alpha^n)\\ &= x\beta(-a_0-\cdots-a_{n-1}\alpha^{n-1})\\ &= (-x\beta a_0)+\cdots+(-x\beta a_{n-1})\alpha^{n-1} \end{align} となるので、$x\in\langle1,\dots,\alpha^{n-1}\rangle~$である。
$K(\alpha)\subset\langle1,\dots,\alpha^{n-1}\rangle~$なので、拡大次数$~[K(\alpha),K]~$は高々$~n~$である。
$$\square$$


補題9
$L/M,M/K~$を体の拡大、$\alpha\in L~$とする。
このとき、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~ L/K:有限次拡大 \Longleftrightarrow L/M,M/K:有限次拡大\\ (2)&~ \alpha:K上代数的 \Longrightarrow \alpha:M上代数的 \end{align}

$(1)~$ $(\Leftarrow)$は定理1より明らかである。
$[L:K]=n~$とおく。
このとき、$L~$の$~K$上の基底$~\{x_1,\dots,x_n\}~$がとれる。
$K\subset M~$より明らかに$~\{x_1,\dots,x_n\}~$は$~M$上で$~L~$を生成する。
よって、$[L:M]\le n~$となる。
また、$M\subset L=\langle x_1,\dots,x_n\rangle_K~$より、$[M:K]\le n~$である。

$(2)~$ $K\subset M~$より、$K$上代数的なら明らかに$~M$上代数的でもある。

$$\square$$


命題10
体の拡大$~L/K~$に対して、 \[ \{x\in L\mid x:K上代数的\} \] は$~L/K~$の中間体である。

$M=\{x\in L\mid x:K上代数的\}~$とおく。
$0,1\in M~$は明らかである。
$x,y\in M~$を任意にとる。
定理8より$~K(x)/K~$は有限次拡大である。
また、補題9$(2)$より$~y~$は$~K(x)$上代数的となる。
よって、定理8より$~K(x,y)/K(x)~$も有限次拡大である。
補題9$(1)$より$~K(x,y)/K~$は有限次拡大となる。
命題7より$~K(x,y)/K~$は代数的拡大である。
$x+y,-x,xy\in K(x,y)~$なので、これらは$~K$上代数的である。
よって、$x+y,-x,xy\in M~$となる。
特に、$x\neq0~$なら$~x^{-1}\in K(x,y)\subset M~$となる。
つまり、$M~$は$~L~$の部分体となる。
$$\square$$


定理11
$L/K~$を体の拡大、$\alpha_1,\dots,\alpha_n\in L~$とする。
このとき、次はすべて同値である。 \begin{align} (1)~& K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)/K:有限次拡大\\ (2)~& K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)/K:代数的拡大\\ (3)~& \alpha_1,\dots,\alpha_n:K上代数的 \end{align}

$(1)\Rightarrow(2),(2)\Rightarrow(3)~$は定理8同様明らかである。
また、$\alpha_1,\dots,\alpha_n\in L~$がすべて$~K$上代数的であるとすれば、 \[ K \subset K(\alpha_1) \subset\cdots\subset K(\alpha_1,\dots,\alpha_n) \] は有限次拡大の有限列となる。
補題9$(1)$を繰り返し適用すれば$~K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$も有限次拡大となる。
$$\square$$


定理12
体の拡大$~L/M,M/K~$に対して、次が成り立つ。 \[ L/K:代数的拡大 \Longleftrightarrow L/M,M/K:代数的拡大 \]

$(\Longrightarrow)$
任意の$~x\in M~$は$~x\in L~$なので、$K$上代数的である。
よって、$M/K~$は代数的拡大となる。
任意の$~x\in L~$に対して、$x~$は$~K$上代数的なので補題9$(2)$より$~M$上代数的でもある。
したがって、$L/M~$は代数的拡大となる。

$(\Longleftarrow)$
$x\in L~$を任意にとる。
このとき、$L/M~$は代数的拡大なので \[ a_0+\cdots+a_nx^n=0 ~かつ~ \lnot(a_0=\cdots=a_n=0) \] となる$~a_0,\dots,a_n\in M~$がとれる。
$M/K~$が代数的拡大なので、$a_0,\dots,a_n~$はすべて$~K$上代数的である。
定理11より$~K(a_0,\dots,a_n)/K~$は有限次拡大となる。
$N=K(a_0,\dots,a_n)~$とおく。
$a_0,\dots,a_n\in N~$なので、$x~$は$~N$上代数的である。
よって、$N(x)/N~$は有限次拡大である。
したがって、$N(x)/K~$も有限次拡大であり、代数的拡大でもある。
つまり、$x\in N(x)~$は$~K$上代数的である。

$$\square$$

(1)体の拡大
(2)単純拡大
(3)代数的拡大