体論 (1)体の拡大
$K,L~$を体とする。
$K\subset L~$となるとき、$K~$は$~L~$の部分体、$L~$は$~K~$の拡大体という。
また、この包含関係$~K\subset L~$自体を体の拡大といい、$L/K~$とも表す。
さらに、$K\subset M\subset L~$となる体$~M~$を$~L/K~$の中間体という。
$L/K~$を体の拡大とする。
このとき、環上の加群.系28より$~L~$は$~K$ベクトル空間となる。
$L~$の$~K$ベクトル空間としての次元$~\mathrm{dim}_KL~$を$~L/K~$の拡大次数といい、$[L:K]~$と書く。
$[L:K]=n~(\in\mathbb{Z}_{\gt})~$のとき、$L/K~$は$~n$次拡大または、単に有限次拡大であるという。
$[L:K]=\infty~$のときは、$L/K~$は無限次拡大であるという。
また、$K\subset L~$なので$~[L:K]\gt0~$であることに注意すべきである。
($\because~$$[L:K]=0~$なら$~L=\{0\}~$となるが零環は体として認めてない。)
このとき、$L/K~$も有限次拡大であり、$[L:K]=[L:M][M:K]~$である。
$S=\{x_iy_j\mid i\in\{1,\dots,n\},j\in\{1,\dots,m\}\}~$を考える。
(簡単のために$~I=\{1,\dots,n\}\times\{1,\dots,m\}~$とする。)
各$~(i,j)\in I~$に対し、$a_{i,j}\in K~$をとり \[ \sum_{(i,j)\in I}a_{i,j}x_iy_j=0 \] とする。
このとき、 \[ \sum_{j=1}^m\left(\sum_{i=1}^na_{i,j}x_i\right)y_j=\sum_{(i,j)\in I}a_{i,j}x_iy_j=0 \] とでき、$\{y_1,\dots,y_m\}~$が1次独立なので、各$~j=1,\dots,m~$に対して \[ \sum_{i=1}^na_{i,j}x_i=0 \] となる。
また、$\{x_1,\dots,x_n\}~$も1次独立なので各$~i=1,\dots,n~$に対して$~a_{i,j}=0~$となる。
したがって、$S~$は1次独立である。
$v\in L~$を任意にとる。
このとき、 \[ v = b_1y_1+\cdots+b_my_m \] となる$~b_1,\dots,b_m\in M~$が存在する。
また、各$~j=1,\dots,m~$に対して$~b_j\in M~$なので \[ b_j = a_{1,j}x_1+\cdots+a_{n,j}x_n \] となる$~a_{1,j},\dots,a_{n,j}\in K~$がとれる。
よって \[ v = \sum_{(i,j)\in I}a_{i,j}x_iy_j \] となるので、$S~$は$~L~$の$~K$上の基底である。
したがって、$[L:K]=nm=[L:M][M:K]~$である。
$(1)~$ $[L:K]=1~\Longleftrightarrow K=L$
$(2)~$ $[L:K]~$が素数なら$~K\subsetneq M\subsetneq L~$となる中間体$~M~$は存在しない。
$(1)~$
$[L:K]=1~$とすると、$L=\langle x\rangle~$となる$~x\in L~$がとれる。
$1\in L~$より$~x'\in K~$があり$~1=x'x~$とできる。
逆元の一意性から$~x'=x^{-1}~$である。
また、$K~$は体なので$~x=(x^{-1})^{-1}\in K~$である。
よって、任意の$~a\in L~$に対して$~b\in K~$がとれ$~a=bx\in K~$とできる。
逆は明らかである。
$(2)~$
$[L:K]=p~$を素数とし、$M~$を$~L/K~$の中間体とする。
定理1より$~[L:M][M:K]=[L:K]=p~$となる。
$p~$は素数なので、$[L:M]=1~$または$~[M:K]=1~$である。
$(1)$から、$M=L~$または$~M=K~$となる。