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体論 (2)単純拡大


 $K,L~$を体、$L/K~$を体の拡大とする。
$\{\alpha_1,\dots,\alpha_n\}\subset L~$に対して、多項式環.命題9より$~K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$は$~L~$の部分環である。

命題3
$L/K~$を体の拡大、$\alpha_1,\dots,\alpha_n\in L~$とする。
このとき、$K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$は$~K~$と$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含む最小の環である。

$K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$が$~K~$や$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含む環であることは容易である。
$K'~$を$~K~$と$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含む環とする。
任意の$~x\in K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$は \[ x = \sum_{I\in\mathbb{N}^n}a_I\boldsymbol{\alpha}^I \] と書ける($a_I\in K~(I\in\mathbb{N}^n),\boldsymbol{\alpha}=(\alpha_1,\dots,\alpha_n)$)。
このとき、各$~I\in\mathbb{N}^n~$に対して、$a_I,\boldsymbol{\alpha}^I\in K'~$となるので$~x\in K'~$である。
したがって、$K'\in K[\boldsymbol{\alpha}]~$となる。
$$\square$$


$x\in K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$に対して、$x\neq0~$なら$~L~$が体であるので乗法逆元$~x^{-1}~$がとれる。
\[ K(\alpha_1,\dots,\alpha_n) = \{x^{-1}y\mid x,y\in K[\alpha_1,\dots,\alpha_n],x\neq0\} \] と定め、これを$~K~$に$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を添加した体という。
特に、$L=K(\alpha)~$となるとき、$L/K~$は単純拡大または単拡大であるという。

命題4
$L/K~$を体の拡大、$\alpha_1,\dots,\alpha_n\in L~$とする。
このとき、$K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$は$~K~$と$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含む最小の体である。

$0,1\in K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$は明らかである。
$x,y,x',y'\in K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$を任意にとり、$x\neq0,x'\neq0~$とする。
\begin{align} x^{-1}y+x'^{-1}y' &= (xx')^{-1}(x'y+xy')\in K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)\\ -(x^{-1}y) &= x^{-1}(-y)\in K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)\\ (x^{-1}y)(x'^{-1}y') &= (xx')^{-1}(yy')\in K(\alpha_1,\dots,\alpha_n) \end{align} となるので、$K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$は$~L~$の部分環である。
また、$x^{-1}y\neq0~$とすれば、$y\neq0~$である。
$L~$は体なので乗法逆元$~y^{-1}~$がとれる。
このとき、$y^{-1}x\in K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$が$~x^{-1}y~$の乗法逆元となっている。
したがって、$K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$は体である。
$K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$が$~K~$と$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含むことも自明である。

$K'~$を$~K~$と$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含む体とする。
$x,y\in K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$をとり、$x\neq0~$とする。
$K'~$は$~K~$と$~\alpha_1,\dots,\alpha_n~$を含む環でもあるので、$K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]\subset K'~$である。
よって、$x,y\in K'~$である。
また、$K'~$は体なので$~x^{-1}\in K'~$となる。
したがって、$x^{-1}y\in K'~$である。
よって、$K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)\subset K'~$となる。
$$\square$$


補題5
$L/K~$を体の有限次拡大とする。
このとき、$L=K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$となる$~\alpha_1,\dots,\alpha_n\in L~$がある。

$\{\alpha_1,\dots,\alpha_n\}\subset L~$を$~L~$の基底とする。
$K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]\subset L~$は明らかである。
任意に$~a\in L~$をとる。
このとき、 \[ a = a_1\alpha_1+\cdots+a_n\alpha_n \] となる$~a_1,\dots,a_n\in K~$がとれる。
$f(X_1,\dots,X_n)=a_1X_1+\cdots+a_nX_n~$とおけば、$f(X_1,\dots,X_n)\in K[X_1,\dots,X_n]~$であり \[ a = f(\alpha_1,\dots,\alpha_n) \in K[\alpha_1,\dots,\alpha_n] \] となる。
したがって、$L\subset K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]~$である。
また、$L~$は体なので$~K[\alpha_1,\dots,\alpha_n]=K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)~$となる。
$$\square$$

(1)体の拡大
(2)単純拡大