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自然数 (2)自然数の加法


命題3
任意の$~n\in\mathbb{N}~$に対して、次を満たす写像$~\sigma_n:\mathbb{N}\to\mathbb{N}~$がただ1つ存在する。 \begin{align} (1)&~\sigma_n(0)=n\\ (2)&~\sigma_n\circ \sigma=\sigma\circ\sigma_n \end{align}

定理1において、$X,x_*,\varphi~$として$~\mathbb{N},n,\sigma~$を当てはめると、条件を満たす写像$~\sigma_n:\mathbb{N}\to\mathbb{N}~$を一意的に構成できる。
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この写像$~\sigma_n~$によって演算 \[ \mathbb{N}\times\mathbb{N}\to\mathbb{N};(m,n)\mapsto\sigma_n(m) \] が作れる。
この$~\sigma_n(m)~$を$~m,n~$のといい、$m+n~$と表す。
また、この演算を(自然数の)加法という。

補題4
\begin{align} (1)&~\sigma_0=\mathrm{id}_{\mathbb{N}}\\ (2)&~\sigma_1=\sigma\\ (3)&~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},\sigma_{\sigma(n)}=\sigma\circ\sigma_n \end{align}

$(1)~$ $\mathrm{id}_{\mathbb{N}}(0)=0~,~\mathrm{id}_{\mathbb{N}}\circ\sigma=\sigma\circ\mathrm{id}_{\mathbb{N}}~$を満たすので、命題3の一意性より$~\sigma_0=\mathrm{id}_{\mathbb{N}}~$である。

$(2)~$ $\sigma(0)=1~,~\sigma\circ\sigma=\sigma\circ\sigma~$を満たすので、命題3の一意性より$~\sigma_1=\sigma~$である。

$(3)~$ $n\in\mathbb{N}~$とすると、 \begin{align} &(\sigma\circ\sigma_n)(0)=\sigma(n)\\ &(\sigma\circ\sigma_n)\circ\sigma=\sigma\circ(\sigma\circ\sigma_n) \end{align} を満たすので、命題3の一意性より$~\sigma_{\sigma(n)}=\sigma\circ\sigma_n~$である。

$$\square$$


定理5
任意の自然数$~n\in\mathbb{N}~$についての命題$~P(n)~$があり、次が成り立つとする。 \begin{align} (1)&~P(0)~は正しい\\ (2)&~P(n)~が正しいなら~P(n+1)~も正しい \end{align} このとき、すべての自然数$~n~$について$~P(n)~$は正しい。

$P(n)~$が正しい自然数$~n~$全体の集合を$~S~$とする。 $(1)$より$~0\in S~$である。
$k\in S~$とすると$~P(k)~$は正しくて、$(2)$より$~P(k+1)~$も正しいので、$k+1\in S~$となる。
$\sigma(k)=k+1~$なので、$\sigma(S)\subset S~$となり$~S=\mathbb{N}~$である。
よって、すべての自然数$~n~$について$~P(n)~$は正しい。
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この定理を利用した証明の方法を(数学的)帰納法という。

定理6
任意の$~m,n,k\in\mathbb{N}~$について、次が成り立つ。 \begin{align} (1)&~n+0=0+n=n\\ (2)&~m+n=n+m\\ (3)&~(m+n)+k=m+(n+k)\\ (4)&~m+k=n+k\Longrightarrow m=n \end{align}

$(1)~$ 和の定義より$~0+n=\sigma_n(0)=n~$となる。
また、補題4$(1)$より、$n+0=\sigma_0(n)=\mathrm{id}_{\mathbb{N}}(n)=n~$となる。

$(2)~$ $n\in\mathbb{N}~$を任意にとる。
$(1)$より$~m=0~$のとき、$0+n=n+0~$は成り立つ。
$l\in\mathbb{N}~$について$~l+n=n+l~$が成り立っていたとすると、 \begin{align} (l+1)+n&=\sigma(l)+n\\ &=\sigma_n(\sigma(l))\\ &=\sigma(\sigma_n(l))\\ &=\sigma(l+n)\\ &=\sigma(n+l)\\ &=\sigma(\sigma_l(n))\\ &=\sigma_{\sigma(l)}(n)\\ &=n+\sigma(l)\\ &=n+(l+1) \end{align} となるので、$~(l+1)+n=n+(l+1)~$も成り立つ。
よって、帰納法によりすべての自然数$~m~$について$~m+n=n+m~$である。

$(3)~$ $m,n\in\mathbb{N}~$を任意にとる。
$k=0~$のときは、 $$ (m+n)+0=m+n=m+(n+0) $$ となるので成り立つ。
$l\in\mathbb{N}~$について$~(m+n)+l=m+(n+l)~$が成り立っていたとすると、 \begin{align} (m+n)+(l+1)&=(m+n)+\sigma(l)\\ &=\sigma_{\sigma(l)}(m+n)\\ &=\sigma(\sigma_l(m+n))\\ &=\sigma((m+n)+l)\\ &=\sigma(m+(n+l))\\ &=\sigma(\sigma_{n+l}(m))\\ &=\sigma_{\sigma(n+l)}(m)\\ &=m+\sigma(n+l)\\ &=m+\sigma(\sigma_l(n))\\ &=m+\sigma_{\sigma(l)}(n)\\ &=m+(n+\sigma(l))\\ &=m+(n+(l+1)) \end{align} となるので、$(m+n)+(l+1)=m+(n+(l+1))~$も成り立つ。
よって、すべての自然数$~k~$について$~(m+n)+k=m+(n+k)~$が成り立つ。

$(4)~$ $\sigma_0=\mathrm{id}_\mathbb{N}~$なので、$\sigma_0~$は単射である。
自然数$~l~$について$~\sigma_l~$が単射であるとすると、 $$ \sigma_{l+1}=\sigma_{\sigma(l)}=\sigma\circ\sigma_l $$ となるので、$\sigma_{l+1}~$も単射である。
よって、すべての自然数$~k~$について$~\sigma_k~$は単射である。
したがって、 $$ \sigma_k(m)=\sigma_k(n)\Longrightarrow m=n $$ となる。 これは$~m+k=n+k\Rightarrow m=n~$のことである。

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これらの性質$(2),(3),(4)$をそれぞれ、可換性結合性簡約性という。
$(1)~$は自然数の加法において$~0~$が単位元であることを意味する。
よって、自然数全体の集合$~\mathbb{N}~$は自然数の加法により簡約的で可換なモノイドであることがわかる。

補題7
\begin{align} (1)&~\sigma(\mathbb{N})=\mathbb{N}\setminus\{0\}\\ (2)&~{}^{\forall}n\in\mathbb{N},n\neq0\Longleftrightarrow{}^{\exists}k\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~n=k+1\\ (3)&~{}^{\forall}n,k\in\mathbb{N},n+k=n\Longrightarrow k=0\\ (4)&~{}^{\forall}m,n\in\mathbb{N},m+n=0\Longrightarrow m=n=0 \end{align}

$(1)~$ $S=\{0\}\cup\sigma(\mathbb{N})~$とおく。
$0\in S~$は明らかであり、 \[ m\in S\Longrightarrow \sigma(m)\in\sigma(\mathbb{N})\subset S \] となるので、$\sigma(S)\subset S~$であり$~S=\mathbb{N}~$となる。
またPeanoの公理$(\text{N}3)$より、$0\notin\sigma(\mathbb{N})~$なので$~\sigma(\mathbb{N})=S\setminus\{0\}~$である。
よって、$\sigma(\mathbb{N})=\mathbb{N}\setminus\{0\}~$である。

$(2)~$ $(1)$より \begin{align} n\neq0&\Longleftrightarrow n\in\mathbb{N}\setminus\{0\}\\ &\Longleftrightarrow n\in\sigma(\mathbb{N})\\ &\Longleftrightarrow{}^{\exists}k\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~n=\sigma(k)\\ &\Longleftrightarrow{}^{\exists}k\in\mathbb{N}~\mathrm{s.t.}~n=k+1 \end{align} が成り立つ。

$(3)~$ 加法の可換性、簡約性より \[ n+k=n\Longleftrightarrow k+n=0+n\Longrightarrow k=0 \] となる。

$(4)~$ $m\neq0~$と仮定すると、$(2)$より$~m=k+1~$となる$~k\in\mathbb{N}~$がある。
加法の可換性と結合性から$~m+n=(k+1)+n=(k+n)+1~$となり、$(2)$より$~m+n\neq0~$である。
よって、$m\neq0\Rightarrow m+n\neq0~$が成り立つので、この対偶 \[ m+n=0\Longrightarrow m=0 \] も成り立つ。
$m+n=0~$とすると$~m=0~$なので \[ n=0+n=m+n=0 \] となる。 よって、$m=n=0~$である。

$$\square$$

(1)自然数の公理
(2)自然数の加法