title

代数構造の拡張 (3)対合付きモノイド


$M~$をモノイドとする。
このとき、$M~$上の単項演算$~x \mapsto x^*~$が \begin{align*} (1)&~{}^{\forall}x \in M, (x^*)^*=x \\ (2)&~{}^{\forall}x,y \in M, (xy)^*=y^*x^* \end{align*} を満たしているとき、これを$~M~$上の対合という。
また、対合の定まったモノイドを対合付きモノイドという。

$M,N~$をそれぞれ対合$~{}^{*},~{}^{\star}~$を持つ対合付きモノイドとする。
このとき、写像$~\varphi:M \to N~$が \begin{align*} (1)&~{}^{\forall}x,y \in M, \varphi(xy)=\varphi(x)\varphi(y) \\ (2)&~{}^{\forall}x \in M, \varphi(x)^{\star}=\varphi(x^*) \end{align*} を満たしているとき、$\varphi~$は対合付きモノイドの準同型であるという。

また、$x \in M~$が \[ xx^*=x^*x=e \] を満たしているとき、$x~$は$~{}^*$-単元であるという。
単位元$~e \in M~$に対しては、 \[ e^* = ee^* = (e^*)^*e^* = (ee^*)^* = (e^*)^* = e \] となる。

補題12
$M~$を可換モノイドとし、$M \times M~$上に次のように演算を定義する。 \begin{align*} &(x,y)(x',y')=(xx',yy') \\ &(x,y)^*=(y,x) \end{align*} このとき、これらの演算によって$~M \times M~$は可換な対合付きモノイドになる。

$x_1,x_2,x_3,y_1,y_2,y_3 \in M~$を用いて、$(x_1,y_1),(x_2,y_2),(x_3,y_3) \in M \times M~$とする。
このとき \begin{align*} ((x_1,y_1)(x_2,y_2))(x_3,y_3) &= (x_1x_2,y_1y_2)(x_3,y_3) \\ &= ((x_1x_2)x_3,(y_1y_2)y_3) \\ &= (x_1(x_2x_3),y_1(y_2y_3)) \\ &= (x_1,y_1)(x_2x_3,y_2y_3) \\ &= (x_1,y_1)((x_2,y_2)(x_3,y_3)) \end{align*} \[ (x_1,y_1)(e,e) = (x_1,y_1) \] \[ (e,e)(x_1,y_1) = (x_1,y_1) \] \[ ((x_1,y_1)^*)^* = (y_1,x_1)^* = (x_1,y_1) \] \begin{align*} ((x_1,y_1)(x_2,y_2))^* &= (x_1x_2,y_1y_2)^* \\ &= (y_1y_2,x_1x_2) \\ &= (y_2,x_2)(y_1,x_1) \\ &= (x_2,y_2)^* (x_1,y_1)^* \end{align*} \begin{align*} (x_1,y_1)(x_2,y_2) &= (x_1x_2,y_1y_2) \\ &= (x_2x_1,y_2y_1) \\ &= (x_2,y_2)(x_1,y_1) \end{align*} が成り立つので、$M \times M~$は可換な対合付きモノイドである。
$$\square$$

(1)半群から群
(2)可換環の局所化
(3)対合付きモノイド