集合の濃度 (1)集合の対等関係
集合$~A,B~$について、$A~$から$~B~$への全単射があるとき、$A~$と$~B~$は対等であるといい、記号で$~A\sim B~$と表す。
$(1)~$ 写像$~f:\mathbb{Z}\to\mathbb{N}~$を次で定義する。 $$ f(n):=\left\{ \begin{array}{ll} 2n & (n\ge0)\\ -(2n+1) & (n\lt0) \end{array} \right. $$ この$~f~$は全単射である。
$(2)~$ 写像$~f:\mathbb{N}^2\to\mathbb{N}~$を次で定める。 $$ f((m,n))=2^m(2n+1) $$ この$~f~$は全単射である。
$(3)~$
$f:\mathbb{N}\to\mathbb{R}~$を任意の写像とする。
ここで、実数$~f(n)~$を10進小数展開する。
\begin{align}
&f(n)=a_{n,0}+\sum_{i=1}^{\infty}\cfrac{a_{n,i}}{10^i}\\
&(a_{n,0}\in\mathbb{Z},a_{n,i}\in\{0,1,2,3,4,5,6,7,8,9\}(i\ge1))
\end{align}
このとき、$b_n\in\{0,1\}~$を
$$
b_n:=\left\{
\begin{array}{ll}
0 & (a_{n,n}\neq0)\\
1 & (a_{n,n}=0)
\end{array}
\right.
$$
で与え、実数
$$
b:=\sum_{i=1}^{\infty}\cfrac{b_i}{10^i}
$$
を考える。
すべての$~n\in\mathbb{N}~$について、$f(n)~$と$~b~$は小数点以下第$~n~$位が異なるので$~f(n)\neq b~$である。
よって、$b~$は$~f~$の値域に属さないので、$f:\mathbb{N}\to\mathbb{R}~$は全射でない。
実数の開区間や閉区間、半直線についても次のような対等関係が成り立っている。
$(1)~$
写像$~f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}~;~x\mapsto\cfrac{d-c}{b-a}x+\cfrac{bc-ad}{b-a}~$を考える。
この$~f~$を$~(a,b),[a,b],(a,b],[a,b)~$で制限すれば、
それぞれ$~(c,d),[c,d],(c,d],[c,d)~$への全単射となっている。
$(2)~$ $f:(0,1]\to[0,1)~;~x\mapsto1-x~$とすると、これは全単射である。
$(3)~$
写像$~f:[0,1]\to[0,1)~$を
\[
f(x):=\left\{
\begin{array}{ll}
\cfrac{1}{n+1} & ({}^{\exists}n\in\mathbb{Z}_{\gt}~\mathrm{s.t.}~x=\cfrac{1}{n})\\
x & (\mathrm{otherwise})
\end{array}
\right.
\]
で定義すると、これは全単射になっている。
また、これを$~(0,1]~$で制限すれば$~(0,1)~$への全単射となっている。
$(4)~$ $f:(-1,1)\to\mathbb{R}~$を $$ f(x):=\frac{1}{1-x}-\frac{1}{1+x} $$ で定義すると、これは全単射である。
$(5)~$ \begin{align} f&:\mathbb{R}\longrightarrow(0,\infty)~;~x\longmapsto2^x\\ f'&:\mathbb{R}\longrightarrow(-\infty,0)~;~x\longmapsto-2^x \end{align} はどちらも全単射である。
$h:A\times C\to B\times D~$を次のように定義する。 $$ h((a,c)):=(f(a),g(c)) $$ $(a,c),(a',c')\in A\times C~$を任意にとり、$h((a,c))=h((a',c'))~$とする。
このとき、$(f(a),g(c))=(f(a'),g(c'))~$となるので、$f(a)=f(a')~$かつ$~g(c)=g(c')~$である。
$f,g~$は単射なので、$a=a'~$かつ$~c=c'~$となり$~(a,c)=(a',c')~$である。
よって、$h~$は単射である。
$(b,d)\in B\times D~$を任意にとる。
$b\in B,d\in D~$であり$~f,g~$が全射なので、$b=f(a),d=g(c)~$となる$~a\in A,c\in C~$がある。
よって、$h((a,c))=(f(a),g(c))=(b,d)~$となるので$~h~$は全射である。
$X~$から$~Y~$への単射と$~Y~$から$~X~$への単射があるとき、$X\sim Y~$である。
任意の部分集合$~A\subset X~$に対して、$X~$の部分集合$~A^*~$を $$ A^*=X\setminus g(Y\setminus f(A)) $$ によって定める。
このとき、任意の部分集合$~A,B\subset X~$に対して \begin{equation*} \begin{split} A\subset B&\Longrightarrow f(A)\subset f(B)\\ &\Longrightarrow Y\setminus f(A)\supset Y\setminus f(B)\\ &\Longrightarrow g(Y\setminus f(A))\supset g(Y\setminus f(B))\\ &\Longrightarrow X\setminus g(Y\setminus f(A))\subset X\setminus g(Y\setminus f(B))\\ &\Longrightarrow A^*\subset B^*\\ \end{split} \end{equation*} となる。 ここで、$X~$の部分集合族$~\mathcal{D}:=\{A\subset X\mid A\subset A^*\}~$を考える。
明らかに$~\emptyset\in\mathcal{D}~$なので$~\mathcal{D}~$は空でない。
$$ D:=\bigcup\mathcal{D} $$ とおく。 このとき、任意の$~A\in\mathcal{D}~$に対して、$A\subset D~$なので$~A\subset A^*\subset D^*~$となる。
任意の$~x\in D~$に対して$~x\in A~$となる$~A\in\mathcal{D}~$がとれ、$x\in A\subset D^*~$となるので、$D\subset D^*~$である。
したがって、$~D^*\subset(D^*)^*~$が成り立つ。
よって、$D^*\in\mathcal{D}~$となるので$~D^*\subset D~$となる。
$D\subset D^*~$かつ$~D^*\subset D~$なので、$D=D^*~$である。
$D=X\setminus g(Y\setminus f(D))~$が成り立つことから $$ X\setminus D=g(Y\setminus f(D)) $$ が成り立つ。
このとき、$g~$の定義域を$~Y\setminus f(D)~$に制限し、終域を$~X\setminus D~$とした写像 $$ g':Y\setminus f(D)\longrightarrow X\setminus D $$ を考えるとこれは全単射である。 よって、逆写像$~(g')^{-1}:X\setminus D\to Y\setminus f(D)~$を定義することができる。 ここで$~h:X\to Y~$を $$ h(x):=\left\{ \begin{array}{ll} (g')^{-1}(x) & (x\in X\setminus D)\\ f(x) & (x\in D) \end{array} \right. $$ で定義する。 この$~h~$は全単射である。
$(1)~$
$\mathbb{Z}_{\gt}\to\mathbb{N}~;~n\mapsto n-1~$は全単射なので$~\mathbb{Z}_{\gt}\sim\mathbb{N}~$である。
$\mathbb{Z}_{\gt}\sim\mathbb{N}~$かつ$~\mathbb{Z}\sim\mathbb{N}~$より$~\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}\sim\mathbb{N}^2~$なので、
全単射$~f:\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}\to\mathbb{N}^2~$がある。
また、$\mathbb{N}^2\sim\mathbb{N}~$より全単射$~g:\mathbb{N}^2\to\mathbb{N}~$がある。
$\mathbb{N}\subset\mathbb{Q}~$より包含写像$~\iota:\mathbb{N}\to\mathbb{Q}~;~n\mapsto n~$は単射である。
よって、$\iota\circ g\circ f:\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}\to\mathbb{Q}~$は単射である。
各有理数$~q\in\mathbb{Q}~$を既約分数表示する。
$$
q=\frac{n}{m}~~~~~(m\in\mathbb{Z}_{\gt},n\in\mathbb{Z},\gcd{(m,n)}=1)
$$
このとき、写像$~h:\mathbb{Q}\to\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}~$を
$$
h(q)=h\left(\frac{n}{m}\right):=(m,n)
$$
と定めるとこれは単射である。
よって、$\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}~$から$~\mathbb{Q}~$への単射と$~\mathbb{Q}~$から$~\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}~$への単射があるので、
$\mathbb{Z}_{\gt}\times\mathbb{Z}\sim\mathbb{Q}~$である。
$(2)~$
$E_0=\mathbb{Q}~$として、$n\in\mathbb{N}~$に対して$~E_n:=\{q+n\sqrt{2}\mid q\in\mathbb{Q}\}~$と定める。
$$
E:=\bigcup_{n=0}^{\infty}E_n
$$
として、写像$~f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}~$を
$$
f(x):=\left\{
\begin{array}{ll}
x+\sqrt{2} & (x\in E)\\
x & (x\notin E)
\end{array}
\right.
$$
で定義する。
これは全単射である。
$(3)~$
$\mathbb{R}\sim(-1,1)\sim(0,1)~$なので、$(0,1)^2\sim(0,1)~$を示せば十分である。
$x\mapsto\left(x,\dfrac{1}{2}\right)~$とするような写像$~(0,1)\to(0,1)^2~$は明らかに単射である。
あとは逆向きの単射$~(0,1)^2\to(0,1)~$を構成すればよい。
実数$~x,y\in(0,1)~$を10進小数展開して、
\begin{align}
x&=\sum_{i=1}^{\infty}\frac{a_i}{10^i}~~~~~(a_i\in\{0,1,\dots,9\})\\
y&=\sum_{i=1}^{\infty}\frac{b_i}{10^i}~~~~~(b_i\in\{0,1,\dots,9\})
\end{align}
となっているとする。
このとき、$f:(0,1)^2\to(0,1)~$を
$$
f((x,y)):=\sum_{i=1}^{\infty}\left(\frac{a_i}{10^{2i-1}}+\frac{b_i}{10^{2i}}\right)
$$
と定義する。
この$~f~$は単射となっている。