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well-defined性


 何か新しい数学的対象を定義するとき、必ず、その定義の正当性を確かめなくてはならない。 $A~$という対象から$~B~$という新しい対象を定義したいとき、直接的に定義できれば、さほど問題はない。 しかし、$A~$から直接的ではなく、$C~$という仲介を挟んで$~B~$を定義しようとしたとき、$C~$に複数の取り方が存在すれば、それらの複数の取り方によらず$~B~$がただ1つに定まらないといけない。

 簡単な例として、$2^{\sqrt{2}}~$の定義を見てみよう。 いま、有理数の冪は定義されているものと認める。 つまり、$a~$を正の実数、$q~$を有理数としたとき、$a^q~$は定義されているものとする。 $\{x_n\}_{n=0}^{\infty}\subset\mathbb{Q}~$を$~\sqrt{2}~$に収束する有理数列とする。 このとき、$2^{\sqrt{2}}~$を次のように定める。 \[ 2^{\sqrt{2}}:=\lim_{n\to\infty}2^{x_n} \] ここでは、有理数変数の指数演算から$~2^{\sqrt{2}}~$を定義しようとしている。 しかし、$\sqrt{2}~$に収束する$~\{x_n\}~$という有理数列を経由して定義している。 このとき、このような有理数列$~\{x_n\}~$は何通りも考えることができる。 この何通りもの$~\{x_n\}~$の取り方によらず、右辺の極限が1つの値に収束することが示せてはじめて、この定義は正当化されるのである。 その正当性自体は指数関数の頁で証明している(命題12,命題13)。

 他にも写像を定義する際、始域の元に対して終域の元に対応があり、さらに、その対応がただ1つでないと写像は定義されない。 例えば、群論の頁で、剰余群の演算を定義する際に剰余類の代表元を用いて定義している。 他にも、剰余類の集合からの写像を剰余類の代表元をとることを仲介して定義しているものが多くある。 このとき、剰余類の代表元の取り方には複数の取り方がある。 それらの取り方によらず定義式が一定の結果になることを確認しなくてはいけない。

 以上のようにある数学的対象を新たに定義するとき、その定義の正当性を検証しなくてはいけない。 定義の正当性が確認されたとき、その定義はwell-definedであるという。 すべての数学的対象はwell-definedに定義されているべきである。